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魔法少女大戦は魔法少女の何に切り込むか――『非公認魔法少女戦線 ほのかクリティカル』

先日の新年会で、例によって初対面の相手にこの「オタク文化の自己言及性について」等という話をしていました。
『涼宮ハルヒ』に代表されるような、現実のオタク文化のあり方をメタ的な設定として取り込んだ例について、ですね。
そこで、メタというのは必ずしもオタク文化の「外から」の視点とは限らず、たとえばライトノベルであれば「ど真ん中のライトノベルであること」と「メタ・ライトノベルであること」は矛盾しない、という私の論をも語ったのですが、そこで「自己言及そのものが飽和して、それで状況が変わってくることはありませんか」という質問を受けました。
あるでしょうね、と言うか、こと人気の題材に関しては、実際メタ作品そのものがすでに飽和するくらいにありふれていたりします。
もちろん、ありふれた題材であっても独自の切り口や、面白い調理法がなおもあり得ることを否定するわけではありませんが……

今回、この話を予想外に早く取り上げることになってしまいました。今回紹介するライトノベルに関わってくるのです。

 ~~~

というわけで、今回紹介するライトノベルはこちらです。

非公認魔法少女戦線 ほのかクリティカル (電撃文庫)非公認魔法少女戦線 ほのかクリティカル (電撃文庫)
(2014/01/10)
奇水

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ゲーマーズ購入特典は表紙絵にサイン入りの色紙。

非公認魔法少女戦線 特典色紙

作者は本作がデビュー作となる作家です。

今月はちょうど同じレーベルから『ロストウィッチ・ブライドマジカル』『魔女は月出ずるところに眠る』のそれぞれ2巻目も同時発売で、魔女・魔法少女揃い踏みという感じです。

魔女・魔法少女×3

ただし、私の読みによれば、『ロストウィッチ~』は魔法少女物ではあっても現実のオタク文化における「魔法少女」へのメタな問題意識からは切れており、『魔女は月出ずる~』はそもそも、『魔法少女まどか☆マギカ』という特定作品に通じる要素はあれど「魔法少女」と言える要素はあまりありませんでした。
それに対し、本作はタイトルに「魔法少女」を使っているところからしてメタ色の強い作品だろう、と私は予想しました。
まあ、その読みそのものは当たりでした。

ストーリーの説明に入りますと、主人公の牧瀬琢磨(まきせ たくま)は普通の男子高校生ですが、ある時、付き合っている彼女の美守(みもり)ほのかが魔法少女であることを知ります。
ほのかのかつてのパートナー、ミケルに言うには、魔法界で「バッドソウル」による汚染が進み、今や「公認」の魔法少女の多くはバッドソウルに汚染されて悪に堕ちた状態にある。そこで「非公認」の魔法少女たちによる討伐部隊が編成されることになって、ほのかにもお呼びがかかった、というのです。

「非公認」というとアウトローな響きがあます。ただ、その方向だと『魔法少女禁止法』という先例があるものの(残念ながら私は未読です)、本作の場合は少し事情が異なります。
まず、「公認」魔法少女の任期は限られていて、「非公認」魔法少女とは、公認の任期を終えて引退した魔法少女なのです。ただ、引退後も非公認魔法少女の互助組織からお金を貰って仕事を続けている魔法少女もおり、魔法界も表向きは非公認魔法少女を魔法少女とは認めずにいながら、利用してはいる、ということのようです。
それゆえ、非公認魔法少女は傭兵魔法少女とも言われ、中でもほのかは公認時代から伝説になり、傭兵としても10年間で数多くの仕事をこなしてきた、最強と謳われる魔法少女なのです。

「公認」の任期について、「三ヶ月」と書いて「ワンクール」とルビを振っているのを見れば、これはTV番組の放映期間の区切りを示す用語なのは明らかです(1年=4クール)。
つまり――別に作中世界では、実在する魔法少女をモデルにした番組が放送されているとかいうわけではありませんが――読者のメタ視点から見れば、「公認」魔法少女は「アニメ放送中の魔法少女」を暗示します。
ということは、引退した非公認魔法少女たちが集まってお互いに、あるいはバッドソウルに汚染された現役魔法少女と戦うという本作の構図は、要するにオールスター企画、スーパー魔法少女大戦です。
ただしこの場合も、実際に彼女たちを主役にした作品があったわけではないのであって、『エクゾスカル零』の手法による、ですが。
このことは、ネーミングもデザインも違う番組の主役のように多様な魔法少女の集まるカラー口絵を見ても明らかです。

非公認魔法少女戦線 カラー口絵

設定も、〈星〉の魔法界とか〈剣の魔法界〉とか様々な魔法界があって、多様な魔法少女たちはそれぞれ違う世界から力を与えられているということですし。
もっとも、異なる作品を横断する視点というのは要するに読者のメタ視点なわけで(それが全く作品の「外」のとどまることができるかどうかは別にして)、そもそもメタとスーパーヒーロー大戦の形式は結び付きやすいものなのですが。


そこまではいいのですが、問題は、そのようなメタ視点から「魔法少女」をいかなるものとして描こうとしているか、です。
ここで冒頭の話になりますが、魔法少女をメタに扱った作品そのものが今や珍しくもないのですから。

まず本作の筋は、バッドソウルに汚染された魔法界を浄化して取り戻すための戦いという、そこだけ見ればそれこそプリキュアの筋だと言っても通りそうな、オーソドックスな「魔法少女物の」筋です。
ストーリーも基本的にシリアス。マジカル二天一流とかマジカル捕縛術とかマジカル八陣といった笑えるネタもところどころにありますが、そうしたネタの頻度は低く、それが売りとも思えません。しかも、そういう魔法界の珍妙な設定に琢磨がツッコミを入れるシーンがあっても、そのツッコミが素通りされてシリアスなまま話が進んでいるので何だか虚しいのですね。
(ついでに言うと、何でも「マジカル」を付けるというネーミングセンスは、別の番組から出演してきたかのような魔法少女たちに妙な統一感を与えてしまうという懸念もあります)
魔法少女物の筋を根本から問うたりパロディ化したりする作品ではないようです。

「非公認」魔法少女が主役である理由は何でしょうか。
バッドソウルを浄化できるのは公認魔法少女だけ、という設定はあるのですが、それも仲間内に一人公認魔法少女がいることによってクリア。せいぜい戦闘において使える切り札としての浄化魔法を制限するのに役立っているだけで、「魔法少女」のアイデンティティを問い質したりするには至っていないように思われます。

ポイントは、公認魔法少女は報酬なしで、ただ使命のために戦っているのに対し、非公認魔法少女は「傭兵」であって、生活のため、金のために戦っているということです。
ほのか自身、そのことをあまり良くは思っていませんし、非公認魔法少女の存在を認めないにも関わらず、汚れ仕事のために利用する魔法界にもかなりの疑問を抱いています。

さらに、冒頭で「魔法少女の恋は叶わない」というテーゼが登場。ほのかも、琢磨を巻き込まないためには別れた方がいいと真剣に考えたりしています。
本作における琢磨の役割は結局、(基本的には男性向けのライトノベルにあって、女性主人公は流行らないがゆえの)読者に近い立場の視点人物であって、本当にそれだけ、ストーリー上は必ずしも必要ないという印象が強いです(ラストバトルでは多少の役割を担いますが、むしろ彼に役割を与えるために無理矢理この設定にした感が強いですね)。
そんな中で彼の存在に多少なりともストーリー上の意味があるとすれば、それはやはり、恋人を持つという「普通の女の子としての幸せ」を象徴する存在として、なのでしょう。

「魔法少女の正体は隠さないといけない、恋は叶わない――そんな、古い方程式に、君が囚われる必要なんてない。君は幸せにならなくちゃいけないし、そして幸せになるためには、恋人が必要だ……魔法のパートナーなんかじゃ、なくてね……」
 (奇水『非公認魔法少女戦線 ほのかクリティカル』、アスキー・メディアワークス、2014、p.115)


ただ問題は、そもそも「汚れ仕事」というのがどう汚れているのか説明がなく、それゆえにほのかがなぜそれにかくも負い目を感じているのかもよく分からない、ということです。となると「恋は叶わない」の方はいっそう理由不明です。
勝つためには手段を選ばず、味方を傷付けることも厭わないという彼女自身のやり方も関係しているのでしょうが(一緒にいれば傷付ける、という)、この世界がどこまでハードなのか今ひとつピンと来ない(一つには、倒された魔法少女のその後がほとんど描かれないせいでしょう――斬っても峰打ち扱いで致命傷は負わないという話もさらっと出てきましたが)ので、どうも実感が湧きません。生活のためお金目当てというのは「魔法少女」という夢の世界には相応しくない、という感情ももしかしたらあるのかも知れませんが、10年近くやってきた仕事に対する感情としてはナイーブすぎるような……


まあ、ここで一つ言っておくならば、上述のテーマ――異なる番組から出演してきたかのような多様な魔法少女の共演、搾取される魔法少女、あるいは有給なら有給でそれに縛られる専業魔法少女の悲哀、それによって犠牲になる普通の人間としての暮らしetc.――の中で、『魔法少女育成計画』シリーズで描かれていないものはほとんどありません。
『育成計画』はその上で、そうした魔法の国のシステムの歪みに淵源する数々の悲劇と、それに対する戦い(その戦いがまた新たな問題を生むのですが)、そして「魔法少女とは何か」という問いを様々な位相から描き、今もそれを続けています。
本作がそれと比べて見劣りしてしまうのはやむを得ません。
登場人物の数も比較的近いのですが、本作ではあまりキャラ立てもなく、やられるシーンすらまともに描かれずに消えていく魔法少女も多くて、この点でも差を感じます。何より、『育成計画』においてはたとえ退場シーンが省略されようが「死」という結果が重くのしかかったのですが、本作の場合、やられた魔法少女はどうなっているのやら……

『育成計画』にはあまり存在しない本作の特徴と言えば、(魔法少女にとっての、男の子との)恋愛があります。本作の売りたり得るのかそこでしょう。
しかしこれも上述のように、「それがどれだけ重大な問題なのか」を描く手腕に甘さが見られます。
これはやはり、この役目がただの視点人物として用意された琢磨に二次的にを割り振られたものでしかないから、ではないでしょうか。だから、彼は(精神的にも肉体的にも)痛い目に遭って、愛の力でそれに耐えるくらいしか、魅せ場がないのです。

琢磨の存在理由については先月の『電撃文庫MAGAZINE』におけるインタビューで作者が述べていましたが、

奇水:主人公というか、視点人物になる琢磨ですが、これは担当編集からの要望で入れてみました。物語に疑問を覚える部外者がいた方が自然と世界観の解説もできますし、読者の立場を反映した人物がいた方がいいのではないか、とのことでした。あとやはり男の子は入れた方がよいだろうと。(……)
 (『電撃文庫MAGAZINE Vol.35』、アスキー・メディアワークス、2013、p.542)


この常識、どこまで有効でしょうか。
確かにそのような視点人物の存在は定石ではありますが、ただいるだけでは…。しかも、後半からは琢磨のいない場面でも地の文が読者向けに説明しているので、作中世界の設定に対して無知な「解説される役」としての必要性すら疑われます。

ここで思い出すのが、『育成計画』の作者・遠藤浅蜊氏のデビュー作『美少女が嫌いなこれだけの理由』です。『美少女が嫌いな~』は男子高校生の主人公による一人称語りでしたが、この主人公は終始ほとんどカメラとしての役割しか持ちませんでした。
注目すべきこととして、『美少女が嫌いな~』から『育成計画』に受け継がれている題材も少なからずあるのですが、デビュー作の「中身がおっさんや爺さんの美少女」は後退し、『育成計画』シリーズの主要キャラの多くは若者だということです。
つまり、「主役は中高年ではなく若者」という点は『育成計画』の方がオーソドックスなのですが、「男子中高生の主人公」というライトノベルの常識的な備えは『美少女が嫌いな~』にあって『育成計画』では消えているのです。そして、それが成功でした。

そう言えば、読者層に合わせて主人公は男が望ましい、という判断の例として、『舞-乙Hime』のコミカライズ版ではマシロ姫(原作に当たるアニメではれっきとした女の子)が影武者の女装少年になった事例がありました。
そのくらいぶっ飛んだ処置ならば面白いんですけどね。漫画版のマシロ君は女装少年系統では名主人公の一人ですし。
もっとも今日日「男の魔法少女」ももうありふれていますが……

パロディ化するにせよ真面目に「魔法少女」を問うにせよ、いささか中途半端な印象は否めませんでした。

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プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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