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ゾンビホラーからセカイ系へ――『魔法少女オブ・ジ・エンド』

今回取り上げるのはこの漫画です。現在4巻まで刊行されています。

魔法少女・オブ・ジ・エンド 1 (少年チャンピオン・コミックス)魔法少女・オブ・ジ・エンド 1 (少年チャンピオン・コミックス)
(2013/01/08)
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最初に言っておきましょう。魔法少女と銘打っていますが、本作はパニックホラーです。
突然現れた謎の存在「魔法少女」が人間を殺戮して回ります。
まず学校が襲撃を受け、生き延びた主人公は他の生き残りと共に逃げ出しますが、外の街も今や魔法少女の攻撃によって壊滅的になっており……

魔法少女オブ・ジ・エンド1巻1
 (佐藤健太郎『魔法少女オブ・ジ・エンド 1』、2013、秋田書店、p.38)

魔法少女は(ある一体を除いて)「まじかるー」と言うだけでコニュケーションは不可能です。ただ殺戮を繰り広げるだけです。
しかも、魔法少女の魔法によって殺された人間はゴスロリ衣装になって生き返り、人を襲うようになります。どう見てもゾンビそのものです。

魔法少女オブ・ジ・エンド1巻2
 (同書、p.81)

ゾンビに襲われてショッピングモールに逃げ込んだり、この混乱に乗じて法や倫理に反した暴挙に及ぶ人間が登場するのも定番です。

最近のパニックホラーというと『ハカイジュウ』を思い出しますね。こちらがゾンビなのに対してあちらはモンスターパニック、という違いもあります。
そう言えば、『ハカイジュウ』は『月刊少年チャンピオン』、こちらは『別冊少年チャンピオン』と一応掲載誌は異なりますが、どちらもチャンピオン系列でした。チャンピオンで流行ってでもいるのでしょうか。
ついでに、「この混乱に乗じて暴挙に及ぶ」危険人物がモンスターや魔法少女との戦いではそのヤバさゆえに活躍し、やたらとしぶとく生き残って主人公にも勝る存在感を発揮するところも共通しています。
もっとも、本作『魔法少女オブ・ジ・エンド』の場合、その問題人物である警官・芥倫太郎(あくた りんたろう)最初から下半身丸出しで女性を犯し殺して登場と、大変分かりやすいヤバさで、しかも最初はあっさりやられるので、かえって緊張感はなくギャグ色が強いのですが。でもあまりのしぶとさにだんだん愛着が湧いてきます。

魔法少女オブ・ジ・エンド2巻
 (佐藤健太郎『魔法少女オブ・ジ・エンド 2』、2013、秋田書店、pp.8-9)

これに限らず本作は総じて、極限状態にあって「こいつは信用できるのか?」と人間同士腹を探り合うような緊迫感は薄めです。

魔法少女がゾンビの役割で襲ってくるというモチーフに加えてこのように言うとギャグっぽく聞こえるかも知れませんが、本作そのものはギャグ作品とは言えません。
ゾンビホラーの絶望的な展開を普通にやっているので、あまり笑いどころがないのです。

そもそも、本作は一体何なのでしょうか。
ゾンビホラーとしての筋はあまりにも普通です。ゾンビに少女の姿を与えて「魔法少女」と呼称したからといって、それだけではゾンビホラーとしても魔法少女物としてもパロディとすら言えません。
パロディや風刺として「ゾンビ物」や「魔法少女物」に切り込むためには、魔法少女やゾンビの核心を衝いたり、「こんなところで魔法少女とゾンビは通じるのか」と唸らせるような展開が望まれるところですが、本作はその域には達していません。「可愛い」や「正義」といった魔法少女のイメージを裏返して怪物化するだけでは今日日あまりにも安直ですし、ゾンビが「まじかるー」と言ってステッキで魔法を使っているから何だと言うのでしょうか。

本作ならではの特色はと言えば、通常ゾンビは知性もなく動きも鈍いのに対して、魔法少女はハイスペックで再生能力まであり、その上に固有の魔法を使う圧倒的な絶望感でしょうか。
しかしこれも、そうでなくても絶望的な状況のハードルを無闇に上げるだけでは物足りません。

……というのが本作の2巻までの評価でした。
転機は3巻にありました。

ここで主人公達は、ある魔法少女の魔法にとって10年前にタイムスリップします。
そこで見えてくる真相――それは、主人公と幼馴染の少女・福本つくね、そしてつくねをいじめていた少女・楓たちの間にある因縁が――とりわけ、つくねという一人の少女が――、今回の魔法少女襲撃の原因にある、ということでした。
なぜ敵が魔法少女なのか、また単に「可愛くない」というだけに留まらない魔法少女の造形の歪み(中には頭が上下逆さまの奴までいました)といった事柄にまでちゃんと説明が付きました。

魔法少女オブ・ジ・エンド3巻1

魔法少女オブ・ジ・エンド3巻2
 (佐藤健太郎『魔法少女オブ・ジ・エンド 3』、2013、秋田書店、pp.90-91)

基本的にはパニックホラーにおいて、主人公は巻き込まれる人間です。
広範囲の人間が殺し尽くされるような壊滅的状況にあって、主人公たちが生き残り、活躍できるのかなぜか――というのは一つのポイントとなるでしょう。それだけの力があったからなのか、偶然か、そもそも主人公が活躍などしないのか――これが作品の個性の見せ所でもあります。
本作の場合、主人公とその周辺の個人的な事情が全ての起源にあった、という「セカイ系」の展開に一挙に持って行きます。
同時に、黒幕的な人物が単に魔法少女の殺戮を推進させるのとは少し異なる思惑を持っているらしいと見せることにより、魔法少女の強力さによる絶望感をも緩和しています。

パニックホラーとセカイ系という組み合わせも、探せば他にもあるかも知れませんが、この急展開での接合にはそれなりに感心しました。

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愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
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