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まさに最高の相性――『ファナティック・ブレイクスルー』

私はしばしば思うのですけれど、能力を活かすためにまず必要なのは、才能に頼るのをやめることではないか、と。
才能というのは、そのままでは世の中で求められる形に彫琢されていないので、放っておけばあらぬ方向に向かいます。だから、才能の行くままにさせないことをまず学ぶ必要があるのです。

――自分の今後の方針を考える中でそんなことをも考えます。
こう言うと自分に才能があるようで自慢めいてきますが、ある種の才能に関しては今更私が自分で否定しようとしても許されないでしょう。しかし、それが現状で上手く働いているかどうかは別問題なのです。

 ~~~

そんなことはともかくとして、今回取り上げるライトノベルはこちらです。
気が付けば発売から一月半くらい経ってしまいましたが、去年末に一迅社文庫から発売された作品です。
『SFマガジン』2014年3月号でも紹介されていました。

ファナティック・ブレイクスルー (一迅社文庫)ファナティック・ブレイクスルー (一迅社文庫)
(2013/12/20)
真慈 真雄

商品詳細を見る

本作の舞台はほぼ現代日本ですが、ストレスによって「E.X.I.T」(Energy-X Identity Trouble)と呼ばれる超能力に覚醒する人間が出現しています。そして輝凛(きりん)高校は、「E.X.I.T」持ちの生徒を積極的に受け入れている学校です。
主人公の穂村陽(ほむら よう)は加熱能力、ヒロインの氷上静音(ひかみ しずね)は冷却能力の持ち主。基本的にはこの幼馴染の二人を中心にしたラブコメですね。

二人が籍を置いている料理部に生徒会査察部の水戸仁美(みと ひとみ)がやって来て予算の使い方や部活動の内容をチェックし始めたことから色々と波乱が起こります。
彼らが「E.X.I.T」持ちだと知って「あなたたちは危険なのよ」と言い、講習を行う仁美、その扱いに憤激する静音、やがて料理部に親身になって関わるようになる仁美、嫉妬というか役立たずの自分は居場所を奪われたような思いから暴走する静音――

能力の制御が苦手な静音が暴走し、彼女が凍らせたもの(時には彼女自身まで)を陽が溶かしてフォローして回るというのが二人の日常茶飯事。小学生時代の二人の出会いまでそれだったというのですから、二人の相性の良さ(能力的にも、カップルとしても)を感じてしまいます。

自分の能力の厄介さは今までの経験で知らないことでなし、それを知識だけ持っている立場から「危険だ」などとことさらに言われても差別的なものを感じるのは当然です。しかも、静音には能力覚醒によって親にも捨てられたという過去がありますし……
そうした偏見の問題を扱いつつ、静音が怒るのはまず陽のことで、という点で二人の絆をもしっかり示します。能力の覚醒原因がストレスであるという設定が、人間関係による登場人物の心情の揺らぎをそのまま能力暴走による騒動に繋げることができる――と、この辺は悪くありません。

ただ気にかかるのは、肝心なところで登場人物の心情を自分の口で説明させていることですね。
たとえ傍から見れば分かりやすくとも、自分ではうまく説明できないような想いこそがストレスになり、ドラマの源にもなるのではないでしょうか。
この辺はもう少し上手い演出をして欲しかったところです。


そしてもう一つ、本作の大きな特徴は、料理部という普通の部活を舞台にして、割と本格的に部活動をやっていることです。
陽たちと仲の良いグループの一人である飯綱真菜(いづな まな)は口にしなくても物の味を知ることのできる「E.X.I.T」の持ち主という、そのための設定までありますし……
さらにあとがきの以下の記述です。

 今回は料理部が舞台なので、綿密な取材をモットーとする私は、なるべく自分で作ってみました。いえ、決して現実逃避などでは……。
 なお、真菜の料理に関するコメントも、私が実際に作ってみた体験が元になっています。
 (真慈真雄『ファナティック・ブレイクスルー』、一迅社、2013、pp.267-268)


しかしこうなると、むしろ作者の熱意はこちらに向いてはいないか、という気もしてきます。
加熱能力を上手くコントロールして使えば調理器具を使うよりも精妙な火加減が可能とか、彼らの能力を料理に活かしている場面も多いですし。この方向をもっと活かす道はなかったのでしょうか。
もっともその方向を追求する場合、料理の「味」「美味さ」に関する描写はあまりないのがネックになるかも知れません。

それから、主人公グループの4人目、真菜の従兄弟である飯綱忍(いづな しのぶ)の「E.X.I.T」はステルス能力ですが、これ、毎回彼の存在に周りが気付かなくて「いたのか」と言われるネタにしか使われていないんですよね……
彼が男の娘であるという設定と合わせて、無くても構わない感は否めません。

というように、個々の要素は色々と面白く描きがいのありそうなネタですが総じて淡白な印象ではありました。

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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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