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そう簡単には二人きりになれない――『人生 第7章』

今回取り上げるライトノベルはこちらです。
ちょうど今月からコミカライズも連載開始、さらに7月にはアニメも放送開始予定の『人生』の、前巻から3ヶ月と比較的早めの刊行となった新巻です。

人生 第7章 (ガガガ文庫 か 5-15)人生 第7章 (ガガガ文庫 か 5-15)
(2014/02/18)
川岸 殴魚

商品詳細を見る

 (前巻の記事

作中時間は主人公が入学した4月に始まったこの物語、前巻でクリスマスを経て、今回は冬休み明けとなります。
主人公の赤松は彩香部長に遊園地のチケットを2枚貰い、誰かを誘って行ってこいと言われますが……
当然、誘う相手は理系相談員の梨乃。彼女との間が「少しずついい感じになってきている」という、読者の誰もが思っていることに(鈍感になることもなく)ちゃんと気付いた上でそう判断しますが、その上で「誘って断られたらいままでの関係が崩れるのではないか」と心配する辺りも、彼は非常に常識的な男子高校生らしい少年です。
もっとも、赤松がいざという時には大胆に行動し、無自覚の内にカッコいいところを見せられる男であることも、もうよく分かっているのですが。ただそれも、普段の平凡さがあればこそいっそう引き立つことかも知れません。

 ふたりで喫茶店でお茶なら「別にデートとか、そんなのじゃないし」との弁解の余地がある。映画もまだ「そんなのじゃないし。映画の趣味が似ているだけだし」などと弁明することが可能だろう……。
 しかし遊園地は間違いなく「そんなの」だ! そして「そんなの」とはデートだ! 混じりっ気なしの、純度百パーセントの! デートを判定する審判員がいたら、主審も副審判もいっせいに「デートあり」のフラッグを掲げるだろう。デートかそれともヒヨコかを仕分ける職人さんがいたら、一秒かからずにデートの箱に振り分けるだろう。
 (川岸殴魚『人生 第7章』、小学館、2014、p.14)


珍しく地の文でボケるくらいに動揺しています。

そこで偽名で自らお悩み相談コーナーに相談してみたり。誘う当の相手の意見を聞けるのでちょうどいい……と思うと、まあそうは行きません。他人のことと思って回答しているのと自分が当事者になるのとでは違います。
しかも、体育会系相談員のいくみに見抜かれてしまい……。毎度のことながら、アホなようでいてこういう時のいくみの妙な鋭さは並外れています。

いくら同じコーナーを運営している仲間だからといって、プライヴェートで二人だけで遊びに行くのは自由なはず。……はずですが、置いてけぼりにされた他のメンバーの感情はそれだけでは済みません。まあいくみの場合は恋愛面での嫉妬ではなく、ただ遊園地に行って遊びたいのですが。
結局、お悩み相談コーナーの皆で遊園地に行くことになる、いつもの展開です。

今回、生徒会長の香織は登場せず、生徒会との対決の要素もなし、その代わりラブコメ面での進展が強めとなりました。
もっとも会長の代わりに、前巻でネガティブキングとして活躍した矢野くんが新たな難関になりそうな展開もありましたが……。
開き直ってネガティブを極め、リア充を憎む彼にとって、皆で楽しいイベントをこなすとか恋愛が進展するだなんていうのは看過しがたいことでしょうから。これこそ、金と権力を振りかざす分かりやすい悪役の香織などよりずっと、お悩み相談コーナーの存在意義をかけて対処すべき問題なのかも知れません。

そもそも二人きりでのデートにならず、他のメンバーを連れて行かねばならなくなったことと言い、矢野くんの恨みと言い、「これは内輪の話」と言おうとしても、周りはそう見なしてくれないということはあるのです。

後は、なぜ初代校長の埋蔵金を探すことになる中で、理系・文系・芸術系の知識がちゃんと活かされる展開があったのも良かったところでしょうか。
いくみだけはやたらとハイスペックなのに対して、梨乃も優秀な設定ではあるもののそれを見せる機会は少なく比較的まとも、ふみは文系というよりもボケ担当のような感もあるので、各系統の代表たるところを見せられると設定が生きたのを感じます。
まあ、そうやって活躍した甲斐があるかどうかは別の話ですが。

他方でギャグは――相変わらず登場人物の掛け合いは楽しいのですが、相談に対する各相談員の一行回答のパンチは、どうも弱かった気がします。そう言えば、今回はふみの歴史ネタをあまり見なかったような……
私としては、文章を異なる文脈に挿入してまったく異なる意味を持たせるギャグ(文言のデペイズマン)が作者の大きな持ち味だと思っているので、できればもっと見たいところです。今巻も一回はありましたが…。

まあ、これ以上細々と説明するような話でもないので、これくらいにしておきましょう。

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