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漫画出版の光明と暗雲――『ナナのリテラシー 1』

そう言えば、この漫画は連載開始時に取り上げて以降は触れてきませんでした。
発売から1ヶ月ほど経ってしまいましたが、単行本1巻を改めて取り上げてみましょうか。
鈴木みそ氏の『ナナのリテラシー』です。

ナナのリテラシー 1 (ビームコミックス)ナナのリテラシー 1 (ビームコミックス)
(2014/01/25)
鈴木みそ

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電子書籍版↓は出版社を経ず、KDP(キンドル・ダイレクト・パブリッシング)という形になっています。それはまさしく、本作中で語られるような事情のゆえ、なのでしょう。

ナナのリテラシー1ナナのリテラシー1
(2014/01/23)
鈴木みそ

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連載開始時にも言いましたが、本作は高校の職業体験でコンサルティング会社にやって来た女子高生・許斐七海(このみ ななみ)を主人公に各業界を描くルポ漫画で、1巻は丸1冊かけて出版業界、とりわけ漫画と電子書籍を扱っています。
どう見ても作者をモデルにした漫画家・鈴木みそ吉が登場し、彼が自作『地獄極楽温泉』の電子書籍版を出版社を介さずにダイレクト・パブリッシングで出したところ想像以上の成功……という実話ベースの話で締めとなります。

少なくとも作者・鈴木みそ氏が前作『限界集落温泉』をKDPで刊行、大きな売上を記録したというのは作品外でも公言している事実です。
しかし、当然のことながら作品には虚実が入り混じっています。
出版社と交渉の上で電子書籍版のダイレクト・パブリッシングに踏み切ったのはコンサルタントの勧めによる、となるともうフィクションの気配がしてきます。
さらには、コンサルタントの仁五郎が仲間を総動員してステマ(※)をかける場面もありますが、果たしてこれは実話なのか? 電子書籍版の成功はステマのお陰なのか? 真相は知る由もありません。

※ ステルスマーケティングの略。この場合、関係者を動員して購入しAMAZONランキングを上げるなど。

もう一つ、本作中で仁五郎は鈴木みそ吉再生計画と、出版社の人間を相手にしたコンサルティング業を並行して行います。
そして、出版社に対しては「電子書籍は出版業界の救世主にはならない」と断言する一方で、漫画家のみそ吉には電子書籍での生き残りを勧めるのです。

もちろん七海も思う通り、言っていることがまったく違います。
しかし、矛盾しているとも言い切れません。両者は立場が違うからです。
出版業界全体にとって電子書籍の伸びは微々たるものであり、救世主とはならないとしても、一人の作家――とりわけ先駆けることに成功した作家――が電子書籍で大きな収穫を得られることはあり得ますし、実際そうなっているからです。

さらに、出版社に対する仁五郎の提案は出版社と編集者のあり方の大幅な再編ですが、その意味するところは結局のところリストラと大差ない切り捨てで、しかもぬるくて中途半端な面すらあります。
これは、そもそもコンサルタントとは何をする仕事か、ということに関わってきます。

ナナのリテラシー 1巻
 (鈴木みそ『ナナのリテラシー 1』、エンターブレイン、2014、p.133、クリックで画像拡大されます)

巧手や悪手かでいえば悪手だとしても――

事実と虚構、作家と出版社、希望と暗雲、いくつもの二重性を孕んだ巧みなルポ漫画で、出版業界や漫画編集の実情を鋭く語っている、大変興味深い作品です。


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(2013/01/05)
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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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