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学校への囚われとそこからの卒業――『僕が七不思議になったわけ』

母校の卒業・修了作品展を見るつもりで実家に帰ってきたら、感想を書く予定の本を忘れていたかな……なんてこともあります。

そんなことがあっても、小説の紹介はさせていただきます。今回はこちらです。第20回電撃小説対象の金賞受賞作品です。

僕が七不思議になったわけ (メディアワークス文庫)僕が七不思議になったわけ (メディアワークス文庫)
(2014/02/25)
小川晴央

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主人公の中崎夕也は、高校2年生の年の卒業式の晩、教室に忘れた携帯電話を取りに学校に戻ったところ、学校の七不思議の主だという少女テンコと出会い、学校七不思議の一つにされてしまいます。
七不思議に欠員が出たので補充する必要があったとの話ですが、彼は何の変哲もない人間。
ただ、他の七不思議の力を使えるようになります。

他の七不思議というのは、確かに霊の類ではありますが、霊であれ何であれ、何ができるのかはっきり分かった上で行使するならば、使う側にとっては別に不思議ではありません。
たとえば、謎のメールが送られてくるという「呪いのメール」は、他人の携帯電話を覗いたりそこにメールを送信したりできるというだけです。

夕也はこの七不思議の力を使って、ストーカーや窃盗という学内の犯罪を解決し、その過程で気になる同級生の女の子・朝倉さんとも思いがけず接近することになります。

さて、本作は第一章(春の章)が中崎視点、第二章(夏の章)が朝倉視点、第三章(秋の章)がまた中崎視点……という構成になっています。
ここに仕掛けがあることは、予想および期待しないではありませんでした。選考委員の時雨沢恵一氏の推薦文も「読んだあなたは騙される」とありましたし、この手の物語を少なからず見てきたせいもあります。
と言っても詳細までは読めませんでしたが……まあ、この手の作品は当てることではなく騙されるのが楽しみなわけですし、ネタバレはしますまい。


終盤で構成も全てに意味があったことが判明、と同時にタイトルの「七不思議になったわけ」の二重の意味も、明らかになります。
そして、夕也がひどく心配性で、不安に囚われ続けていたことのテーマ的意味もはっきりしてきます。

真相が判明した後に展開されるのは、漠然とした不安に駆られたまま、生きる気力を見失い、まさに七不思議として学校に囚われていた少年がふたたび歩き出す、ほろ苦い青春物語です。

霊的現象の力を異能の類として行使するのも、それで学内の事件を解決するのも珍しくない話ですが、それが後半、学校というモラトリアムとそこからの卒業というテーマに繋がってくる辺りが、ライトノベルと一般文芸の中間としてのメディアワークス文庫らしい内容と言うべきでしょうか。
構成力も物語もなかなか良いものでした。

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テーマ : 大学生活 - ジャンル : 学校・教育

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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