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変化の理由と意義はつねに両義的――『引きこもりたちに俺の青春が翻弄されている 2』

今回取り上げるライトノベルはこちらです。
一迅社文庫の新人作品で2巻が出る日が来ようとは……新たな流れを齎すことを期待しましょう。

引きこもりたちに俺の青春が翻弄されている2 (一迅社文庫)引きこもりたちに俺の青春が翻弄されている2 (一迅社文庫)
(2014/03/20)
棺 悠介

商品詳細を見る

 (前巻の記事

ゲーマーズ購入得点はブロマイド。裏面は「引きこもりラジオ」ということで、主人公の春哉とヒロインの紫羽がラジオで繰り広げる会話を描いたショートストーリーになっています。

引きこもり2巻 特典ブロマイド

本作は基本的には、引きこもりだったり中二病だったりと、今や定着したカテゴライズで言えば「残念な」ヒロインたち――作中で語の幅広い解釈により「引きこもり」と総称されていますが――をイケメンでハイスペックな主人公が更正させ、惹き付けていく物語です。
と言っても、一朝一夕に更正のなるはずもなく、ヒロインたちは教室に出て来ないことも多いまま、彼らは「引きこもり対策部」の部室でダラダラと過ごしていることが大半なのですが。
大部分はそうした日常系コメディをやりつつ、終盤にシリアスなストーリーが来る構成は2巻でも変わっていません。
ただ、この2巻のストーリーは1巻ほど重いものではなく、またページ数的にもウェイトは少なめで、ギャグが強めになっています。

今まで引きこもっていたので携帯電話を必要としなかったためか、「でも凄いわ。最近のケータイってネットも見れるのね」(p.68)と言い出したりするヒロインたちのボケ、奇行、さらには作中世界に存在するアニメ「牛タンくん」についてのトークで10ページ近くを費やしたり(第2章のタイトルまで「みんな大好き!牛タンくん」になっています)……

「はい、土曜の深夜三時から放送中のアニメです。今まで人間に切り落とされ食されてきた牛タンの怨念の集合体である牛タンくんが、デス阿修羅くんや殺戮魔剣士くん、黒人スーパーモデルのズベタビッチちゃんと繰り広げるほのぼのコメディです」
 田中が待ってましたとばかりにすらすらと補足する。
 聞いた瞬間に頭痛がするほどツッコミどころが満載だった。
 (棺悠介『引きこもりたちに俺の青春が翻弄されている 2』、一迅社、2014、p.75)


パロディネタというか、アニメ・漫画・映画等に作中人物が言及するネタも豊富。
ただ本作の場合、作品名やキャラ名を改変したり伏せたりすることなく実在するものの名前を明言することが多いのと、最近の流行りはほとんどなくレトロなネタ一本であることに特徴があります。
ミニ四駆、キン消し、ブタミントンと懐かしのおもちゃを連発してみたり、さらには稲川淳二とか……それから、ホラー映画ネタが多いですね。
この具体名の出し方にまだ少し説明過剰を感じるところもありますし、(ネタだとすら気付かなくても読み進められるようになっていないので)元ネタを知っているか否かに面白さ大きく左右される感もありますが、ただ、1巻よりこなれてきていて笑えた印象は確かにあります。

さて、今回ストーリーの方は、1巻中盤で登場していた「中二病」少女・田中和美(たなか かずみ)がメインです。
コスチュームから世界設定まで作り込んで、自分の考えたヒーロー「ハリエット・ミューカス」を日々演じている彼女ですが、妹の秋穂(あきほ)が登場、彼女の過去と背景が描かれます。

ただ、これが「彼女が中二病になったわけ」という話だとすると、やはり人格形成というものを単純な、外から見て分かりやすい因果関係に還元している感は否めません。
とは言え、必ずしもその限りではないでしょう。

「……お姉ちゃんは私を正しい道へと導いてくれました。でも、お姉ちゃん自身は道を踏み外した……いえ、違いますね。普通の人は決して通らない、変な小道に迷い込んでしまったんです」
 (同書、p.229)


一つの外的なきっかけは指摘できるとしても、ある事情を経験したからといって、誰もが同じ道に進むわけではありません。そこにはやはり、本人の資質もあります。
やはり本人の一部であるそれを否定して、ただ「元に戻そう」「正しい道に戻そう」としても上手く行きません。
紫羽の時と同様、人が変わる理由はつねに内外の両面があります。そして、変わることの持つ意味も――
彼女の中二病は、ただのマイナスに過ぎず、治ったら良かったねという類のものなのか――それがちゃんと問われます。

本作、主人公はずっと紫羽を追い駆けてきたという設定なので、ラブコメとしては二人が両想いでほぼ成立しています。もちろん春哉はモテますし、紫羽としてはそれが面白くないという場面もありますが、基本は揺るぎません。
しかも紫羽の問題は1巻で基本的には解決しています。今回も紫羽をクラスに馴染ませるべく期末テストの打ち上げに誘ったりという展開はあって、クラスメイトたちがまた実にいい奴らで微笑ましい内容でしたが、ストーリーへの絡み具合は弱め。総じて残念さを見せ付ける役回りです。
それでも、終盤のシリアス展開ではその圧倒的な強さで活躍します。内容そのものがギャグとシリアスの間でちゃんとメリハリを付けているので、紫羽の活躍も痛快さが光ります。

問題は、新キャラの一人・「真紅の魔女」こと塔崎深玖(とうさき しんく)先輩のこと。
独特のテンポでボケを連発、関わった人間の神経を消耗させる彼女は、ギャグ要員としては面白いのですが、ストーリーにどう絡むのかと思いきや最後までほぼ絡みませんでした。しかし、豹変とか魔術(?)とか、いくつかの謎を残しています。
まあ、1巻での和美も実はストーリー上それほど重要ではなく、2巻で掘り下げられることになったので、深玖も次巻で扱う予定なのかも知れませんが。ただ、「次巻以降でスポットを浴びるキャラの顔見せ」にしてはページを割きすぎている感があるのもまた事実。こういうプロットの問題は、一迅社文庫の作品にはありがちなことですが……

そんな彼女の言動ですが具体的には――

「ところで、さっきから何読んでるんですか?」
「これ? これは亀の飼い方の本よ」
 田中以上に魔道書とか似合いそうな雰囲気なのに、答えは意外過ぎるものだった。
「え、か、亀? ええと、亀、飼ってるんですか?」
「いいえ。ペットは何も飼っていないわ」
 その外見から使い魔的な何かを従えてそうな雰囲気ではあるが。
「そ、そうなんですか。じゃあ亀好きなんですか?」
「全然。だって、亀って硬いじゃない」
 硬いって、生き物を嫌う理由として斬新過ぎる。
「……じゃあ、なんで読んでるんですか?」
 そう問いかけると塔崎先輩はきょとんとした顔をし、視線を俺と本に二回ほど交互に向けた。
「難しい問題ね。明日までに結論を出しておくわ」
 どうやら何も考えてなかったらしい。行動が謎過ぎる。
 (同書、pp.153-154)


面白くはありますが、摑めなくもあります。
ここには何か裏があるのか、どうか。裏があったとして、今までの流れからしても単に「引きこもり」の原因を解明して取り除けばいいというわけでもないでしょうし、どう出るのでしょうか。

次巻は夏休みで海で(おそらく)水着回のようですし、楽しみに待ちましょう。

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愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
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