スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

全ての世界と国々の未来へ――『銀閃の戦乙女と封門の姫 6』

昨日は毎年恒例、宗教哲学会の手伝いに参加してきました。
私は風邪気味だったので、聴講だけならパスするところでしたが、仕事である以上休むわけにも行かず。
そしてアルバイト料の一環として懇親会費も無料ということなので、只飯を食べに行ってきました。
幸いにして、そこまで体調が悪いわけではなく熱もそれほどありません。ただ喉の痛みだけが酷く、のどスプレーの定期的な使用が必須の状態です。
そんな訳で二次会はパスして帰りましたが、ブログ更新は休養。
そして風邪は今日も続いています。

のどぬーるスプレー クリアミント 15mlのどぬーるスプレー クリアミント 15ml
(2008/02/25)
のどぬ~る

商品詳細を見る

 ~~~

しかし本日はライトノベルをのレビューを書きましょう。『銀閃の戦乙女と封門の姫』第6巻にして最終巻です。
あとがきでも述べられていますが、現時点で瀬尾つかさ氏の完結作品としては最長です(なおシリーズ刊行中の作品としては、『スカイ・ワールド』がすでに6巻を突破していますが)。

銀閃の戦乙女と封門の姫6 (一迅社文庫)銀閃の戦乙女と封門の姫6 (一迅社文庫)
(2014/03/20)
瀬尾 つかさ

商品詳細を見る

 (前巻の記事

ゲーマーズでの購入特典は、梨花の制服を着たフレイのブロマイド。

銀閃6巻 ブロマイド


前巻から三千世界を滅ぼした全世界の敵「ゼノ」との戦いに突入した本作、今回はひたすら決戦です。
敵の数は百万単位、味方はせいぜい2千。しかも敵は味方の固有スキルをコピーできるという絶望的な状況ですが、ただアリのような軍隊生物であるゼノは司令官を倒せば部下は全滅、そして全てのゼノの頂点である「始祖七柱(エルダーセブン)を倒せば全てのゼノが死ぬ、というところに光明があります。
当然、主人公は始祖七柱の討伐要員。
そして1~3巻に続き、今回も表紙を飾ったフレイは前巻のラストで攫われ、助けを待つヒロインに。

フレイも強力な固有スキル持ちなので、敵の手に落ちた際には石化させる処置が施されており、今回は石化状態で助けを待つことになります。
同時に、1対1の戦いで最強クラスである主人公カイトとソーニャが始祖七柱との決戦に乗り込み、多数の敵相手の面制圧に長けるフレイが最後に二人を補う活躍を見せるところもオーソドックスながら見事です。

と同時に、本作は『放課後ランダムダンジョン』『魔導書が暴れて困ってます。』シリーズと世界観を共有し、その集大成とも言うべきものになっています。
そもそも『放課後ランダムダンジョン』の、様々な異世界には異なる魔法の体系が存在するという設定自体が、異なるシステムのゲームから登場人物の集うスーパーヒーロー大戦を念頭において書かれたものでした。
今回は過去作品の登場人物にして異なる世界を代表する戦士たちが集い、全世界の命運を賭けた戦いに臨む、まさにスーパー瀬尾大戦に相応しい内容となっています。

とりわけ、『ランダムダンジョン』のヒロイン・あかりと『魔導書~』の登場人物の一人・マリー・レアソンは4巻辺りから結構登場していましたが、今回は始祖七柱との決戦における主要戦力の一人として活躍します。
他方、クァント=タンではマナが捻れており通常の魔法が使えないという設定上、魔術師系のキャラクターは決戦には参加しませんが、地球への避難民に潜んでいたゼノを迎え撃つ等の役割で登場します。
とりわけ、『ランダムダンジョン』の主人公・法鷹和馬(のりたか かずま)(現在あかりの夫)には、彼の背景を知っているとなかなか感慨深い場面もあります。

そして舞台としても、前作『魔導書~』の六道島がふたたび描かれるとか――

それから、本作のタイトルにある「封門の姫」は、カイトの義妹である梨花の母親・絵梨花のことです。
絵梨花は並外れた予言の能力の持ち主で、自らの身を捧げて強大なモンスターを封じていましたが、1巻の最後でその封印が用済みとなった後、幼女のエリカとして復活しました。
テレポートや異世界間を繋ぐ「妖精門」の作成など、余人には不可能なスキルを縦横に駆使していたエリカですが、元々その身はマナで編まれた特殊な存在。今回の決戦における酷使で、ついに限界を迎えます。
彼女の辿る運命は読んでのお楽しみですが、ただ言えるのは、結局母を継いだ梨花が全てを持って行きかねない活躍だった、ということです。

元々、メインキャラクターの内で梨花だけは地球育ちの一般人であり、当初は世界観を説明する相手という役回りでしたが、見る間に異世界の政治事情の裏まで読む聡明さを発揮、クァント=タン第四王女シャーロッテと共に「腹黒姉妹」の名を戴くに至りました。
しかしこの最終巻に至って、仲間の身と命が懸かった場面ではシャーロッテが弱さを見せる中、梨花はそれ以上の冷静さを見せ、戦う力も得て主力の一人となります。
そして、戦後の政治においてもおそらく……

恋愛面では、一夫多妻がありの世界にあってカイトのハーレム、中でも一番親密なのはやはりフレイ(ソーニャは王族という立場上、あまり大っぴらに特定の男性と関係を持てない状況にあり)なのですが、義妹の尻に敷かれそうな……


さて、本作『銀閃~』は同レーベルにおける同作者の前作『魔導書~』シリーズと、世界観はもちろん、イラストレーターも、そしておっぱい好きでそればかり連呼する主人公も、全て共通しています。
違いはというと、『魔導書~』は学園物で、記憶を封じられ自分の正体を知らずに生きてきた主人公は魔術師としては初心者だったのに対し、本作の舞台はもっぱら異世界で、しかも主人公は異世界で育ちすでに武人として活躍した人物である、ということです。それゆえ、戦いも1巻からその世界のトップレベルを扱うことができました。
さらにテーマ上の大きなポイントは、――毎回のように述べてきましたが――異世界ファンタジーにおける「国家」が問題になっていることでしょう。

今までにも話題になっていましたが、この最終巻のエピローグにふたたび出てきた一言「地球の主要国は、未だ複数の世界にまたがる国家というものの存在を認めていない」(p.294)という文言がキーです。
もし現代の地球上に異世界との間の門が開いたら、否応なしに異世界と何らかの交流は生じるでしょう。国交を開くことも可能かも知れません。しかし、異世界との関わりが地球上の国家の領土に影響するとなれば、穏やかではありません。
まして地球と異世界とにまたがる国家は、異世界による地球の土地の侵略とも受け取れます。簡単には認められないでしょう。
けれども同時に、異世界との交流拠点がどこにいかなる形で確保されるかは重大な問題です。

いずれにせよ本作の世界では、20数年前に幾つもの異世界へ通じる妖精門が開き、7年前の「ゲートブレイク現象」によって全ての門が閉じてしまいました。国際政治における異世界との関わりの扱いなど、十分に確立される間もなかったという面があるのではないでしょうか。
そして、クァント=タンは25年前に人工的に建設され、今でも存続している亜世界ですが、前王が愚物だったせいか、その内政のシステムは短い間にすっかり硬直してしまいました。
日本とクァント=タン、二つの祖国を持つカイトは、祖国をどちらかに絞って他方を捨てるのではなく、二つの世界にまたがる新たな国を築くことで、現状を変えようとしていました。
さすがに建国という長い時間のかかる大業までは描かれませんでしたが、将来像は描かれます。しかも――梨花は明言しませんが――それは単なる計画ではなく予知とも取れるわけで……ただ、やはり梨花の主導権が圧倒的ですが。
さらに、そうして開かれた新たな異世界間交流のあり方は、さらに発見された新たな異世界へと開かれていく可能性も示唆され――

個人が異世界に召喚されるだけならばまだしも、異世界との間を一定数の人と物資が行き来できるようになることは、国家のあり方すら問い質します。
しかし、そんな中でも人は祖国への帰属意識を持ち、時にはそこで悩み、そして誇れる「我が国」のあり方を摑み取るべく努力することでしょう。

そんなあり方をきちんと描いてくれた本作、堂々の完結に拍手です。

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 大学生活 - ジャンル : 学校・教育

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

あまりに多くを背負わされた子供たちに――『深き迷宮と蒼の勇者 -銀閃の戦乙女と封門の姫外伝』

今回取り上げるライトノベルはこちら……と言っても、これは復刊作品なので、今までも内容に触れてきたことのある作品です。 復刊なので発売日も一迅社文庫の通常の発売日(毎月20日頃)とは異なります。 深き迷宮と蒼の勇者 -銀閃の戦乙女と封門の姫外伝 (一迅社文庫)(2014/08/02)瀬尾 つかさ商品詳細を見る 本作は一迅社文庫から刊行された『放課後ランダムダンジョン』の改題および加筆...
プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。