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ヒーローは求められたか――『エクゾスカル零 6』

今回はこの漫画を取り上げさせていただきます。『エクゾスカル零』の6巻です。
――と言っても、そもそも前巻までのストーリーをあまり詳しく語っていませんでしたが……。

エクゾスカル零(6) (チャンピオンREDコミックス)エクゾスカル零(6) (チャンピオンREDコミックス)
(2014/03/20)
山口貴由

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 (既刊の記事

本作の5巻では、ついにこの世界がディストピアと化した理由が語られます。
一切の悪を滅し、平和を達成した世界。しかしそれゆえに、完璧な平和ゆえに人々は正気を失い、人を襲って喰らう「到達者」となってしまったのでした。
エクゾスカル戦士・動地憐(どうち れん)は全ての人々を安息の眠りに就かせる「メデューサ計画」を推進しますが、主人公の葉隠覚悟は憐の誘いを拒絶し、憐を撃ちます。
覚悟は眠りに就く以前の記憶がないとのこと。周囲は彼のことを「死神」と呼びますが、実際、ヒーローであった時の記憶を失った覚悟は、もはやヒーローではなくただの暴力と化しているのか……
それでも、覚悟の行いは、憐の意志をメデューサ計画から覚悟への復讐へと動かすことで、少なくとも憐だけは救ったのかも知れない、とも言われるのですが……

いずれにせよここにあるのは、もはや悪も、ヒーローも、守るべき人々もいない世界を前にどうするかについて、相容れない態度を取る元ヒーロー2人の激突だけです。

というわけで、今巻はもっぱら覚悟と憐の対決です。
強化外骨格というSF兵器と超常の技を使うとは言え、格闘で体格差がモノを言う辺り、――少なくとも『覚悟のススメ』に比べると――アクションは現実的になった印象があります。
巨体と圧倒的パワーを武器とする憐に覚悟がどう挑むのかが見所。途中、覚悟のみが強化外骨格・零を着装し、憐は生身の状態での戦いも。

さて、山口氏の漫画は、登場人物たちは大真面目なのに笑える場面が随所に見られるのも特徴。
今回も健在で、たとえばヒロイン格のエクゾスカル戦士・六花(りっか)のイメージで現状を例えると……

エクゾスカル零6巻 1

エクゾスカル零6巻 2
 (山口貴由『エクゾスカル零 6』、秋田書店、2014、pp.64-65)

六花がこの状況の解決役に相応しいかどうかはともかく、言いたいことは分からないでもありませんが、このディストピアでの身命を賭した戦いを突然学園物に例えられた時点で笑わざるを得ません。
まあしかし、糞真面目が取り得のヒーローだった覚悟が感化院から来た不良に喩えられる辺り、状況が変わるとかくも扱いが変わるものかと……
他方で現実でも、憐は特攻服に覆面姿でバットを武器に覚悟を襲撃したりしています。
ヒーロー二人が不良になっている辺りが現状を表しているのでしょうか。

さて、この絶望的な世界にあって覚悟がなおもメデューサ計画に反対するのは、「人間は満ち足りることなく永眠する」という確信があるからです。
それは到達者であろうと変わることなく、死に顔に満ち足りたものなし。それこそが人間の証

エクゾスカル零6巻 3
 (同書、p.55)

さればこそ、正気を失い破滅するばかりの「到達者」であろうと、敵対すれば殺すこともあっても、それを「安らかな眠りに就かせる」ことこそ受け入れがたい――と。
しかしだからと言って、この世界の現状をそのままにすべしというのはあまりに頑なに思えるのも事実。

ただそんな中、覚悟たちエクゾスカル戦士だけは満足して「眠り」(冷凍冬眠)に就きました。
覚悟に言わせれば、「だから再び覚醒した」ということになります。
しかしなぜ、これ以上なくヒーローの活躍する余地のあるべくもない時代になって、元ヒーローたちは覚醒したのでしょうか。
憐によれば自分たちを目覚めさせたものがおり、それこそが――おそらくは憐がメデューサ計画を決断するに当たっても――「最も重要な真実」とのこと。

それは果たして、ヒーローを必要としたから目覚めさせた、ということなのか――
それとも、まさに決定的にヒーローを否定するような事情なのか――
核心に触れられるのは次巻でしょうか。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
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