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海の脅威、引率者の責任と判断――『絶深海のソラリス』

風邪はほぼ回復しました。
しかし、気が付けば一日の大半を寝てしまい……どうも症状があった時よりも寝ているような。

 ~~~

今回取り上げるライトノベルはこちら。MF文庫Jの新作です。

絶深海のソラリス (MF文庫J)絶深海のソラリス (MF文庫J)
(2014/03/22)
らきるち

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作品の舞台は西暦2145年「大海害」で日本列島が丸ごと沈没するなどの異変のあった後の世界です。
そして、生きた鉱物「ソラリス」が発見された世界です。
このソラリスとの適合により、女性なら1000人に一人、男性は1万人に一人の割合で、「水使い」と呼ばれるミュータントが生まれます。
水使いは深海でも酸素ボンベも無しに活動でき、さらに各自固有の異能が使えます。

主人公の山城ミナトは18歳で、水使いを要請するアカデミーの新任教官。
彼の幼馴染の星野ナツカは昨年まで彼と同じ学生でしたが、なかなか卒業できずにいる落ちこぼれ(アカデミーには学年やクラスはなく、必要科目の試験を全てパスするのが卒業要件です。ただし在籍年限あり)。
ミナトが担当することになった女子学生、クロエ・ナイトレイは並外れて優秀ですが、そのせいで自分は完成されていると思いこんでいる節があり。

ミナトはそんなクロエをやり込めたりして、組織のルールに従うことを教えつつ、また同時にクロエをナツカの指導役に就けたりと、指導者として色々工夫していきます。
そんな中で、高慢なクロエもなかなか面倒見がよく、ついでに命令されたがりのドMな面を見せるようになったり……

教師というのは何も能力的に優秀であるから教師であるわけではなく、また優秀な者は好き勝手をして良いわけでもない。
さらには、生徒同士の間での教えと学びの意義……これだけでも学園物として見所満載です。

しかし、平和な日常は前半だけ。ミナトと先輩教官のアイシュワリンで5人の女生徒を引率して遠征演習に出かけた先で彼らは事件に巻き込まれ……後半はモンスターパニック・アクションとなります。

事態は陰惨でハード、そして衝撃的です。

異能ありのモンスターパニック、という点では『俺が生きる意味』と共通するものがありますね。
本作は『俺が生きる意味』に比べると異能の存在が最初からはっきりしており、登場人物もそれを使いこなしていて、普通に戦えば主人公側は十分有利に運べます。つまり、ただ絶望的に怪物に追い回されるパニックホラーというわけではありません。
ただそれでも、小さなミスが命取りになるのもまた確か。

何より、主人公のミナトはデータ解析と判断に関わる能力を持ちながら、判断ミスで悲劇を招いてしまうというのが、何とも重いものがあります。
教官と言えどつねに正しいわけではなく、さらに組織の上に服する限りにおいてその権威と責任を担っていることは、ミナト自身が最初に述べていました。しかし非常事態で現場の判断を下すより他ない場面で、他人に責任を求めるわけにも行きません。この事態を、いかに背負うべきでしょうか?

いや実際、次巻以降が出れば教官として、組織人としての責任が間違いなく問題になると思われるのですが、そこからどう事態が展開していくものでしょうか。
主人公はひとまず生き延びたとは言え、怪物の脅威は拡大していきそうですし……

難を言えば、能力とアクションが海と水という設定にあまり関係ないことでしょうか。
人間は海中ではほとんど活動できず、水中は見通しも利きません。深海ではまだまだ未知の生物が見付かったりします。
それゆえ、船のような海の最中の生活の場は、閉鎖空間になります。だから船乗りはとりわけ内部反乱を恐れます。
そんな逃げ場のないところで海中から怪物が襲ってきたら……というのが一般的な海洋モンスターアクションの見所なのですが、本作の水使いたちは水中で自在に活動でき、視界も利くので、そうした制約は存在しません。

では水中活動の能力を活かして水中戦を行うのかというとそういうわけでもなく、各自の固有能力はあまり水に関係ありませんし、戦いもほとんどは空気のある施設内で展開されます。

ライトノベルで海を舞台にした作品があまり流行らないとしたら、それはその舞台を活かせたかどうかに関わっているのではないかと、私は思います。


ところで、海洋モンスターアクションSFと言えば私が思い出すのはこれ↓だったりします。

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愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
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