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魔法ファンタジー+パワードスーツ+…――『銀翼の魔戦鎧』

相変わらず一日中眠たく、今ひとつ力の入らない状態ですが、今回取り上げるライトノベルはこちらです。

銀翼の魔戦鎧 (一迅社文庫)銀翼の魔戦鎧 (一迅社文庫)
(2014/03/20)
早矢塚 かつや

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とりあえず、本作は魔法ファンタジーです。
なおかつ、作中世界では「魔戦鎧」という魔法の力で動くパワードスーツのようなものが普及していて、兵器としてはもちろん、車を引くといった労働にも活躍しています。
主人公のアスト=オルドビスは何でも屋のような仕事をしている魔戦鎧装者。妹のピーチェは13歳にして魔戦鎧の技師をやっています。
アストはある日、「災厄の魔法使い」オリヴァーから新型の魔戦鎧5体を強奪するという仕事の依頼を受けます。ところが、人殺しはしないという彼の方針に反した依頼主のやり方やら、オリヴァーの孫娘ウィスティアリア=レイライン(通称アリア)の様子を前にして話を聞かずにはいられなかったことやらがあって、アリアに協力し、新型の魔戦鎧「ゼーラ」の一つアルテミスを装着しつつ、依頼主であったディアスから残るゼーラを取り戻す旅に出ることに。
諸事情によりターゲットと仲間になる、この展開そのものは定番ですね。もちろん恋愛あり、本番描写こそないもののそこそこ濃いラブシーンあり、さらにディアスは元々オリヴァーの弟子でアリアの義理の兄だったという事情による男女関係の縺れもあり。

加えて、この世界ではかつて、「天人戦争」という空中都市に住まう帝国軍と大陸に住まう共和国軍の戦争があり、その結果として空中都市は地上に墜落して、大陸の諸国家も全て滅んだという設定があります。オリヴァーが「災厄の魔法使い」と呼ばれるのは、この戦争において共和国側で人体実験を行い、人造兵士として亜人を作り出したからです。
オリヴァーはその罪滅ぼしとしてか、今は平和のために役立てようという目的を持ってゼーラを開発していたようですが……
さらに、戦争の後には魔獣の住む「森」が急激に地上に広がり始めています。国家は滅んだといってももちろん、小都市や村は健在なのですが、森によって生活圏が分断されているのが、国家を再建できぬ最大の原因となっている、とのこと。

――と、題材は色々詰め込まれているのですが、結局「売り」となるポイントは何なのか、ぼやけている印象は否めません。
あとがきにある以下のような記述はいかにも象徴的です。

 今回のテーマは『ファンタジー×パワードスーツ×戦後の荒野と化した大地×新型の強奪×おっぱい』です……どれか一つでもピンとくるものがありましたら、どうぞご購入をご検討ください。
 (早矢塚かつや『銀翼の魔戦鎧』、一迅社、2014、p.310)


これらを詰め合わせた設定を練っているのは分かりますし、筆力もそれなりにあります。だから、題材が相互に不整合を起こしているということはありません。
さらに、これらの題材の中にはストーリーと背景設定のように別の次元に属するものもあり、その場合にはいずれにせよ別々に設定せねばならないことではあります。
ですが、それにしても、数詰め込んで「どれか一つでも」当たれば、というのは芸がないのではないでしょうか。

ディアスとは戦わないままで明らかに続く構成ですし、さて一迅社で続巻が出る確率はいかほどか、という問題を度外視するならば、この荒廃した世界にあって何をするためにオリヴァーがゼーラを開発していたのか、というのは今後見えてくるのではないか、と思われます。その点が未だ不明瞭なのは、仕方ないとしましょう。
しかし、この1巻の山場は、ディアスに想いを寄せながら足手まといになっていることに苦しんでいた敵メンバーの一人・シェーラとの対決で、問題はディアスとアリア、アストの関係に絡んだ四角関係のようなもの。
私が疲れて注意力が下がっているせいかも知れませんが、どうも世界観と大きなストーリーの流れと、今回の山場との繋がりがあまり見えません。

恋愛面に関しても、アストとアリアの関係がそれほど描かれないまま、サブヒロインとして踊り子のルッカが登場。何だかアリアはアストへの好意を見せるより先に嫉妬する場面が目立ってしまった感があります。
ライバルに取られそうになって初めて自分の気持ちを意識する、というのもありかも知れませんが、やはり少しバランスが悪いような。
ちなみに、こんな厳しい世の中、次があるかどうか分からないから、可能な内に可能な限りのアプローチをして、得られるものは得ておきたい、というルッカの態度は非常にはっきりしています。
しかし、かくも恋愛観に世界観が反映しているなら、今度は奥手なヒロインと鈍感主人公によるメインのカップルは普通すぎるのが気になるところ(考え方には個人差があるとは言え)。この辺にも、恋愛を巡る山場と世界観とを結び付けて一つの山場に収束させようという意欲の弱さを感じてしまうのです。

同作者の一迅社文庫での作品を振り返ると、『閃弾の天魔穹』は魔法ファンタジー世界をベースに、かつて科学文明も存在した世界が舞台。『閃烈の神なる御手』は現代日本と異世界の狭間で戦う話でした。
今作も天上の帝国と地上の共和国が存在した世界ですし、異質な文明が交じり合うような世界観が好みなのかも知れません。ただ、それをどう活かすのか、もう少し考えた方が良いのではありますまいか。

そもそも、――これは邪推かも知れませんが――『閃烈』を見た際、今度は異世界召喚物で行くのか、現代日本から出発した方が読者に馴染みやすいという判断から? と思ったものでした。
今回はまた純異世界ファンタジーですし、あまり関係ないのかも知れませんが、やはり作品の狙いを定めきれないまま、ああでもないこうでもないと世界観をいじっている印象を受けてしまいます。

得手不得手というものは当然あって、ギャグが得意な作家も、あまり笑えない作家もいますし、シリアスが映える人もそうでない人もいます。しかし、一つ一つの題材はそれなりに書けるものの狙いを絞りきれないというのは、また別種ながら大きな問題です。

もっとも、物事には良い面と悪い面があります。
ここが書きたい、という売りや魅せ場を絞って、そこから逆算して作ったような作品は、逆にその魅せ場以外に粗さが目立つことが多いのも事実。
しかし、そういう作品の方が、読む気にさせてくれる力を感じることが多いようにも思うのです。


【追記】
同時発売であった『引きこもりたちに俺の青春が翻弄されている』2巻もやはり「どれか一つの要素でも気に入っていただけたら」という旨のことがあとがきにありました。
それでも『引きこもり~』の方が遥かに魅力的な作品に仕上がっている理由は、おそらく以下のことが考えられます。

・一つ一つの要素が独自の味を持って魅力的に描かれている。
・前半はギャグ、終盤でシリアスとメリハリを付けており、いずれにせよ焦点が分かりやすい。
・いずれにおいても活躍(あらゆるネタにツッコみ、シリアスな展開でも活躍)できる主人公の汎用性の高さ。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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