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何度言ったか知れないけれど、持ち味は何か――『戦女神の異界決戦』

今日は京都府知事選挙がありました。
もっとも、候補者が現職と新人の二人ではこれといった見所もなく(こういう場合、基本的には現職が強い)。

 ~~~

さて、今回取り上げるライトノベルはこちらです。
――と言っても、本作について語ることはあまり多くないかも知れませんが、考えてみると著者の過去作品も取り上げていなかったことですし。

戦女神の異界決戦 (一迅社文庫)戦女神の異界決戦 (一迅社文庫)
(2014/03/20)
糸緒 思惟

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本作の設定は極めてオーソドックスな異世界召喚ハーレムバトル物という感じですね。
主人公の如月英志(きさらぎ えいじ)は突然異世界に召喚されます。その世界では「ムスッペル」という侵略者と戦っており、ムスッペルと戦うヴァルキリーを養成する「ヴァルハラ学園」が存在します。
英志はヴァルキリーを統べる「オーディン」としてこの世界に迎えられ、ヴァルハラ学園ただ一人の男子生徒となります。
そして美少女のヴァルキリーたちに囲まれて一緒に戦うことに。しかも、彼がオーディンとしての真価を発揮するためには彼女たちを積極的に愛する必要がある……とのこと。

私としては、本作の設定をこれ以上細かく説明する必要を感じません。実際、特筆するほどのものがないからです。
積極的にハーレムを推奨されているという設定が特色かも知れませんが、それも含めて設定としてはライトノベルにありふれたものです。
戦闘シーンも淡々として見所に乏しい印象。プロット的には、終盤に敵襲はあるものの、学園の試験で生徒同士の戦いが大きなウェイトを占めていたのも盛り上がりの弱い一因でしょう。

ただ、最大の問題は別のところ致にあります。
作者・糸緒氏の近作は、積極的にネットスラング等を交えた極めて軽い語り口を特徴としていました。「おや誰か来たようだ」等のネットネタを地の文で使用しますし、『JSが俺を取り合って大変なことになっています』の主人公に至っては明確に2ちゃんねらーで、1巻ではタイトルと同名のスレッドを2ちゃんねる(らしき掲示板)に立て、それが章間で描かれます(2巻以降このスレッドがなくなったのが残念)。

JSが俺を取り合って大変なことになっています 掲示板
 (糸緒思惟『JSが俺を取り合って大変なことになっています』、一迅社、2012、p.85)

作品のタイトルを検索してもまずは2ちゃんねるまとめブログがヒットする当今(最近、2ちゃんねるライトノベル板は転載禁止になったので、状況は変わってきそうですが)、これこそがアクチュアリティなのだと言うならば、何の異存がありましょうか。
しかし、本作『戦女神の異界決戦』のようにストーリー物だと、この語りは軽すぎる感があります。軽い文体で淡々と事実を物語っているので、どうも盛り上がりません。他方で筋がシリアスなので、ネタを楽しむコメディとしても弱くなります。

それから作者のもう一つの持ち味はその変態性ですね。
一迅社文庫での第一作『5年2組の吸血鬼』は、吸血鬼の松沢桃子に支配された小学校を舞台に、ひたすら女子小学生たちが全裸で水泳大会とか写生とか深夜の公園で裸マントで遊ぶとか、痴態を繰り広げるという代物でした。
イラストも圧倒的な全裸率で、はては女子小学生が3人で野外放尿を披露します。
『JSが俺を取り合って~』はまさにタイトル通りですし、前作『わたしのスライムになりなさい!』も、――今度は小学生ではなく高校生の美少女たちという違いはあれど――高度なヴァーチャルリアリティを使用したネットゲームが、もっぱらリアルで美少女たちと絡み合うためのツールとして使用されているという潔さ。
カラー口絵で「全員の膀胱が大ピンチ!」とか、イラストレーターが変わっても変態性はぶれません。

わたしのスライムになりなさい 口絵
 (糸緒思惟『わたしのスライムになりなさい!』、一迅社、2013、カラー口絵)

しかし、『戦女神の異界決戦』はストーリー要素が強まったせいかその辺も控え目。
相変わらず軽くおしっこ我慢シーンがあるのが片鱗を感じさせるくらいです。

――ところで、『5年2組~』は作者もあとがきで明言している通り、同人エロゲーを原作としています。ただし原作と違って、セックス本番はありません。
桃子が全校の先生・生徒を吸血鬼化して支配してしまうという展開もオリジナル。そんな中で主人公(小学5年生)だけは特殊能力によって、吸血鬼化されながらも正気を保っているのですが、それゆえに桃子の主催する痴態に参加させられ、ドキドキしながらも戸惑います。
その上、先生も生徒も吸血鬼化した小学校はどんどん頽廃していきます。

 教室内でさえ、昼間はみんななんだか動きが鈍く、頭を働かせるのも億劫だと感じるようになっている。自然と、授業もせず机の上に頭を乗せ、眠っている姿が多くなっていった。教師もそれを見て叱るどころか、生徒たちと同じように、職員室に籠り惰眠を貪る。
 また、桃子がことあるごとに生徒たちに吸血罰ゲームを設定したりしたせいか、給食中に互いの血を吸い合うという習慣も広まりつつあるようだった。俺のクラス、五年三組でも給食の班で机をくっつけると、向かいや隣のやつに血を吸わせてくれと懇願する者も目立つ。
 吸血鬼という生き方が明らかに通常の学校生活に支障をきたし始めたのだ。桃子の遊びも、どんどんタガが外れていている。
 非常に、マズい。このままでは近いうちに、みんなが人間だった頃の流離木小学校は、確実に、跡形もなく崩壊してしまうだろう。
 (糸緒思惟『5年2組の吸血鬼』、一迅社、2011、pp.109-110)


この「このままじゃまずい」という感覚が、性の背徳感とシンクロします。
かくして『5年2組~』は小学生の性とその戸惑いを描き、そこに読者にとってのロリコンの背徳感を重ねることにも成功していたように思われます。
それでいて、桃子は好き勝手に遊んでいるだけの女の子で、主人公としても憎めません。何しろ、性そのものは悪ではないのですから。

『JSが俺を取り合って~』では――この作品辺りから上述の軽い文体がスタイルとして前面に出てくるのですが――、高校生の主人公がロリコンという未知の世界に誘われ、「女子小学生っていいじゃん」と思うまでに至ってしまいます。
そこには女子小学生たちを彼にアプローチするよう仕向けた変態メイドの深籠が存在し、彼女がまた実にいい味を出していました。

こうした過去作品に比べて、『戦女神の異界決戦』は実際に異世界に召喚される話でありながら、むしろ冒険していないように思われるのは気のせいでしょうか。
それは一つには、ライトノベルにあっては異世界召喚のフォーマットの方が、ロリコン等の変態性よりもよほど見慣れた、日常的な事物だから、というのがあります。

作者のHJ文庫でのデビュー作はファンタジーでしたが、一迅社文庫では別方向で芸風を築いてきました。
今回の新作はデビュー作以来久々のファンタジーですが、作者を活かす起用だとは、私には思えないのです。


五年二組の吸血鬼 (一迅社文庫)五年二組の吸血鬼 (一迅社文庫)
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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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