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魔法は何のために与えられたか――『魔法少女サイト』

今回はこの漫画を取り上げさせていただきます。

魔法少女サイト(1) (少年チャンピオン・コミックス)魔法少女サイト(1) (少年チャンピオン・コミックス)
(2014/03/07)
佐藤健太郎

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作者は『魔法少女オブ・ジ・エンド』の佐藤健太郎氏。
今回も(名称の上では)同じく「魔法少女」をモチーフにしていますが、趣向はまったく異なります。

主人公は学校で酷いいじめを受け、家でも兄に虐待されている中学2年生の少女・朝霧彩(あさぎり あや)
ある日、彼女のパソコンが一瞬だけ「魔法少女サイト」なる奇妙なウェブサイトに繋がり、「不幸なキミに魔法の力を与えよー」と呼びかけられます。
そして彼女のもとに届けられたのは、拳銃の形をした「魔法のステッキ」
しかしそれはただの銃ではなく、もちろんおもちゃでもなく、いじめ――と言うか犯罪行為を行ってくる相手に向けて引き金を引くと、確かに魔法の効果を発揮します。

ここまでは何だか都市伝説のような話運びですが、ここから、バトルや謎の解明のあるストーリーが展開されていきます。
、同じく魔法少女サイトから「ステッキ」を受け取った他の「魔法少女」(実はクラスメイト)との出会い、他の魔法少女を殺してステッキを奪い集める「魔法少女狩り」との戦い。
そして何より、魔法少女サイトの正体の目的。このサイトの隠しENTERをクリックすると、近々「テンペスト」が来ることを予言しているのですが、その正体は不明。
しかしなにやら恐ろしいことらしいのは確かで、このサイトが不幸な少女たちにステッキを与えているのも、それと関係があるようですが……謎は未だ解明されぬまま、次巻に続いています。

ゾンビホラーである『魔法少女オブ・ジ・エンド』と違って、本作は――少なくとも今のところ――人間の悪意が主体。
いじめにも家庭内暴力にも、これといった理由はありません。
ただ、表向き優等生の兄は裏でストレス解消のため彩を殴っており――

魔法少女サイト1
 (佐藤健太郎『魔法少女サイト 1』、秋田書店、2014、p.7)

学校のいじめも机の落書きからトイレに呼び出しての暴力まで盛りだくさんですが、大した理由のなさそうなところがかえって生々しく、胸糞悪くなります。その辺は見事。

それでも、気弱な彩は手に入れたステッキの力に呑まれるどころか、むしろ自分のなしたことに怯えるのですが……

他方で魔法少女仲間である奴村露乃(やつむら つゆの)との友情といった見所もあります。


ただやはり気になるのは、なぜこれが「魔法少女」と呼ばれるのか、です。

ゾンビに少女の姿を与えただけだった『オブ・ジ・エンド』に比べれば、普通の(本作の場合「不幸な」という条件がありますが)少女が魔法を行使するためのアイテムを与えられる、という構図はある程度の「魔法少女らしさ」があります。
しかしその魔法の力が、不幸な少女の復讐のために与えられたとしたら……という意味で、確かに本作には伝統的な魔法少女物の反転という面は感じられます。

後は、魔法を使うと瞳にハートとか月とか特定の模様が浮き上がり、髪の色が変化して若干伸びたりする描写もありますが、これはあまり目立ちませんし、軽い追加要素くらいのように思われます。

魔法少女サイト2
 (同書、p.38)

ただ、それぞれの「ステッキ」がその形状に応じて、銃なら相手を撃つ、カメラなら撮影するといった使い方をする、完全に固有の魔法を使うためのアイテムで、しかも他人のステッキを奪っても使えるという辺り、ドラえもんの道具か何かに近い印象もあります。
与えられるのが少女に絞られているから「魔法少女」かというと、さてどうなのか……

結局(これも何度言ったやらですが)、本作も「魔法少女」でなくても筋も魅せ場も成立するのではないかと思われる話なのです。

「テンペスト」に関する大きな話の流れが「魔法少女」という要素にどう関わるかは、今のところまだ不明ですが。
ただ、話そのものはある意味でオーソドックスで、「魔法少女」固有の要素に関わる部分は少ないのでは、と現段階では予想させていただきます。

『オブ・ジ・エンド』に引き続き「魔法少女」をモチーフとする辺り、「魔法少女」の裏返しやパロディ的なイメージを描こうという意志は作者に一貫しているのかも知れませんが、では「魔法少女を魔法少女たらしめるものは何か」という点についてどこまで問われ考察された上で描かれているのかというと、疑問は大いにあります。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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