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ネットゲーム的ダンジョン――『東京聖塔』

夕方に集中豪雨が降ったのですが、TVに映る甲子園球場は相変わらずの青空で、アナウンサーが「夏らしい甲子園」とか言っていました。
京都の我が家から西宮の距離を考え、本当に極地的な集中豪雨らしいな……と思ったり。

 ~~~

今回取り上げるライトノベルはこちら。
MF文庫Jで『詠う少女の創楽譜』(全7巻)という前作のある作家の先月発売された新作です。

東京聖塔 (MF文庫J)東京聖塔 (MF文庫J)
(2014/05/22)
雨野 智晴

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主人公の千畳敷一護(せんじょうじき いちご)には13歳の妹・一衣(いちえ)がいますが、石化病という奇病に罹っており、後2年の命と見なされています。
さて、この世界は基本現代日本風ですが、10年前に突如として東京に「東京聖塔(トウキョウジグラート)という50階建ての塔が出現しています。この塔の中はモンスターの出現するRPG的ダンジョンで、攻略した者は願いを叶えることができるとか。
そんなわけで、一護は妹を助けるべく、東京聖塔の攻略に挑みます。
「東京聖塔」の中は異世界で、攻略を目指す「塔覇士(ハンター)は外界にはない固有の能力や装備を持つよう作り変えられます。最初にどんな装備や能力を持つのか決めるところが「キャラメイク」と呼ばれ、パラメータが数値で表示されるなど、非常にゲーム的――多数のプレイヤーが存在するわけですからネットゲーム的――な世界観です。

そして、一護は並外れてパラメータが低いのですが、装備やスキル、あるいはパラメータのアップに自由に割り振ることのできる「タイカ」(「対価」なのでしょう)が並外れて多いという特異な存在でした。
しかし、この世界に東京聖塔が出現して10年、今までに通算1万人以上の塔覇士が挑みながら、未だに25階までしかクリアされていません。つまり、最強クラスの武器を手に入れ、塔覇士の中でちやほやされる存在になっても一衣の命がある内にクリアは難しいと聞かされた一護は、使い勝手は悪いものの限定的には最強になることができ、もしかしたらスピードクリアの可能性もあるというスキルを手に入れることを選びます。
かくして彼が選んだスタイルは、普段は段ボール装備の最弱、しかしスキルを発動すれば3分間だけは最強、ただしそのスキル発動は1日に1度で、しかも反動が大きいというハードなもの。

もちろん、これではたくさんのモンスターと戦わねばならないダンジョンを一人でクリアすることはできません。
つまり仲間が必要なのですが、仲間と言えどこのスキルの実態を知られては、利用するだけ利用されて後で寝首を掻かれる可能性も高くなります。かくして、能力を隠して最弱を装いつつ有力な塔覇士に取り入らねばならないのでした……。

この手のネットゲーム的な世界観と「最弱と見せて実は最強」の主人公は、最近のとりわけ Web小説発祥作品に流行りのものです(実は、私はその手の作品をそれほど読んだことはありませんが)。
しかし、本作をよく見ると、そもそも主人公以外のキャラクターのパラメータは出てきません。つまり、数値化は「強さ(弱さ)を分かりやすく見せる」役には立っていないのです。
この1巻では登場人物も少なめ――結論から言えば、仲間となるのは「剣聖」の称号を持つトップクラスの塔覇士にして一護の通う高校で生徒会長を務める美少女・祇王寺葉桜(ぎおうじ はざくら)だけです。結果、能力を隠して最弱を装う駆け引きも前半だけ。後半は彼を最弱だと思っているモブキャラそのものがほとんど登場しなくなります。

つまり、パラメータの数値化は実際にその数値が高いか低いかよりも、そもそも「ゲーム的世界観」を印象付ける意味が大きいと考えられます。
使い勝手の悪いスキルという設定も、一護と葉桜の関係を確立するための軸と見た方が良いかも知れません。ボス戦で圧倒的な戦力となるが普段は雑魚モンスターにも勝てない主人公と、普段から安定して強いヒロインが、ダンジョンを攻略する上でお互いを是非とも必要とするコンビとなることは確かですから。

さらに言えば、段ボール装備というショボさ、しかも脱ぐことで強くなるという主人公の特性、およびそれを巡る葉桜との掛け合いが本作の特徴でもあります。
美少女より男が脱ぐ仕様、シリアスに決めても裸なので台無し、果ては命懸けのボス戦の後に展開される変質者だ何だという掛け合い……この脱力感は確かに、最弱という設定であってこそです。

それでいて、真っ直ぐで他人を助けることに躊躇わない一護は良い主人公です。

妹の命が懸かっていても学校に通い、ダンジョン攻略は放課後限定というのも定番ですが、当の一衣を初めとする家族に悟られないようにせねばならない、という一応の説明も付いています。


ダンジョン攻略の様々な仕掛けは脇に置いて早々にボス戦というスピード感ある展開も悪くはないのですが、やはり登場人物も少なく物語がコンパクトであるのは気にかかる点でもあります。
まあ、次巻以降に関わってきそうなキャラクターも顔見せしているので、今後のことは分かりませんが。

後は、そもそも東京聖塔の成り立ちといった部分が今後触れられるのかどうかも気になるところ。
展開次第では、「ゲーム的世界観であること」そのものが積極的な意義を持ってくるかも知れません。
東京聖塔と石化病の間に関係がある可能性もありますし。

続きも楽しみにしておきましょう。


ちなみに、ゲーマーズ購入特典はメッセージペーパーで、妹・一衣が主役の1ページ程のショートストーリーを掲載していました。


詠う少女の創楽譜 (MF文庫J)詠う少女の創楽譜 (MF文庫J)
(2011/04/25)
雨野智晴

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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