スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

楽しい仲間、あるいはフォームチェンジ――『ヴァルキリーワークス 4』

今回取り上げるライトノベルはこちら、『ヴァルキリーワークス』の4巻です。
作者の逢空万太氏、今年は本作・『ベルテイン』・『ニャル子さん』を3ヶ月連続で刊行したこともあり、今年前半だけで4冊とハイペースで執筆しています。

ヴァルキリーワークス 4 (GA文庫)ヴァルキリーワークス 4 (GA文庫)
(2014/06/12)
逢空 万太

商品詳細を見る

 (前巻の記事

実は今回、ゲーマーズ、アニメイト、メロンブックスで購入特典としてそれぞれ別の短編小冊子が付くとのこと。さすがに全部で同じものを買うのは……

1巻では作中人物が『仮面ライダーW』らしき作品を鑑賞している場面もあり、合体という設定と相まって『W』へのオマージュの印象が強かった本作ですが、今回のあとがきでは作品コンセプトを『ライトノベルで読む日曜朝八時』(p.288)と語っていたりします。
実際、『ニャル子さん』のように一見シリアスな戦闘の流れや必殺技までパロディネタだったりするわけでもなく、(1巻頃はともかく)最近は戦闘時のコメディも控え目、きっちり盛り上げますし、毎回新フォーム(ヴァルキリーとの合体)が登場、さらに合体できる相手のヴァルキリーが増えてきた今回は、相手に応じて目まぐるしく合体を切り替える戦い方まで使って魅せてくれます。

今回は「大神理樹、オルトリンデフォーム」(p.260)なんて表現までしてくれますが――ただ、それぞれの合体形態は「理樹の」フォームチェンジであると同時に、合体相手のヴァルキリーは単独でも戦う能力を持っているのです。『仮面ライダー電王』でも良太郎に憑依するイマジンたちが独立して戦えるようになったのは終盤のことなのに。
ヴァルキリーたちは「主人公のフォームの素材」なのか、それとも「仲間(○号ヒーロー)」なのか……この関係性が本作の一つの特色でしょう。

とは言え、半分くらいはずっと日常コメディ、その後、敵が襲来して撃退、という単純な筋は相変わらずで、やはりコメディで読ませている比重が断然大きいのですが。(実はこのシナリオ形式は、主人公がたまたま敵や被害者と関わる、という偶然の要素を極力排し、戦闘以外では登場人物の――必ずしも戦闘と関係のない――問題にドラマの多くを割いていた『仮面ライダークウガ』に近いものがあります)
今回は敵と遭遇後、一時撤退→再戦という流れがなく、一塊の戦闘が後半に集中しているので、なおさら筋としては単純です。

ただ、これまた戦い以外が話の軸になっていても一話に一度はヒーローが変身して戦う場面を入れねばならないヒーロー番組のごとく、前半でも「絶対騎行圏(ヴィーグリーズ)を展開して神威(ケニング)を行使する場面がちゃんとあります。
それは理樹の特訓のため。

ヴァルキリーと合体すればその力を大幅に強化することができるものの、単体では常人よりひ弱な理樹ですが、せめて自分の身を守れる力だけでもあれば、との思いから。
一切欲望をセーブせずに女性陣に迫る「総食系男子」の理樹で、そんな彼の暴走と落とされ戸惑い嫉妬する女性陣の可愛さ、そうして展開されるコメディが本作の持ち味ですが、同時に理樹は、皆で楽しくやるためならば一切迷わず、どんな危険も痛みも恐れず、いつも通りにあっけらかんとして身体を張れる主人公であり、だからこそ物語を引っ張ることもできます。
そんな彼の強さと真摯さが、特訓という場面にも現れています。

とは言え、超常の力が特訓で何とかなるとは限りません。
フェルスズの剣「グラム」に関しては理樹単独でも励起させることができたのですが、前巻でヴァルトラウテの振るう神威・フロッティは、理樹の身体に触れた瞬間、秘石(ルーン)に戻ってしまいました。
今回、何度やってみても結果は同じ。理樹はフロッティを扱うことはできず、どうも彼の力は単純にヴァルキリーと同種かその上位互換というわけでもないようです。

この辺の謎は容易には明かされません。
元々、そもそもヴァルキリーではなかったフェルスズの正体を始めとして、主人公とヒロインの正体に関してははっきりとした謎がありましたが、今回ではさらに世界観に関する謎が深まっていきます。
まず、地上に派遣されたヴァルキリーの総数は8人ということが明らかに。

「分かるよね。神威は全世界に散ったはずなんだ」
「なのにこの人数は少なすぎる、ですか」
「それが不思議な事に、これでも何とかなってるんだよ。未だ、人間界に目立った影響はないんだ。実体化した神威による損害なし」
 (……)
まるで戦乙女の行動範囲内でしか神威が暴れないみたい
 (逢空万太『ヴァルキリーワークス 4』、ソフトバンククリエイティブ、2014、pp.161-162)


少人数しかいないヒーローの行動範囲内でしか敵が暴れない、とはヒーロー物では定番のことですが、『ニャル子さん』ならメタ的に「聞いてはいけないことらしい」とか言って誤魔化すところが、本作では神界の不穏な動きに繋がるストーリー上の大きな謎になっています。
そういうメタ的問いを真剣に扱ってストーリーに組み込み「ヒーロー物」を描こうとしている作者の姿勢がお分かりでしょう。

ついでに言うと、ヴァルキリーは通例9人で、本作におけるヴァルキリーの名前が依拠しているワーグナー『ニーベルングの指輪』も当然そうです。
ですから、本作でもそうであって、ヴァルキリーの員外であるフェルスズを含めて10人かと思いきや――イラストレーターの蔓木鋼音氏もそう思っているらしく、カバー折り返しのコメントで「このまま10巻まで行くとワルキューレの騎行の9人が全員揃うのでしょうか?」と書いています――、8人(つまりフェルスズを入れて9人)しかいないようです。
ヴァルキリーに欠員が出ていて、それがフェルスズの正体に繋がっている伏線でしょうか。

そもそも、本作の世界観には一つの謎があります。
地上に散らばった「神威」は、「旧世界」の神々や怪物、道具の力なのです。その名はもちろん、北欧神話に登場する名前です。
確かに北欧神話では最後に神々と巨人族が相討ちになり全て滅びてしまうのですが、『ヴァルキリーワークス』世界では神界が今も存在し、ヴァルキリーたちは現役の存在なのです。
一体「旧世界」と現在の神界の関係はどうなっているのか――この謎はおそらく、今巻最後の今までになくシリアスな引きで言われる「戦乙女の再創造」なるフレーズとも無関係ではありますまい。

他方で、どんな真相が待ち受けていようと理樹ならきっと迷いなく「今を楽しく生きることが第一です」と言い切ってくれる、そう思えるからこそ、安心して読めます。

筋は単純だが決して雑ではなく、魅せ所をきっちり押さえていて、世界観も然り、それでいてキャラの可愛さやコメディを気楽に楽しめる――それが本作の魅力でしょう。

キャラに関しては、少なくとも前巻までのネタバレを多数、今巻に関しても少々含むので追記にて。


今巻の表紙は戦乙女オルトリンデ――実は、理樹のクラスメイトである鋒山科乃(ほこやま しなの)の正体です。
実は「鋒山科乃」という名前も「オルトリンデ」という本名に基づいていることを明かしたのは、この設定は当初からというアピールでしょうか。

戦えば強い戦乙女(戦闘能力に関しては決して駄ルキリーではない)、それでいて一般人の女子高生になりすませる常識人、糸目と巨乳におっとりした喋りで面倒見のいいキャラながら意外にヤキモチ焼きで、しかも――他の女性陣は理樹に振り回されっぱなしのが多い中――関節技で理樹に制裁も下せる彼女は実に美味しいポジションになりました。

もっとも、フェルスズが学校に転入する展開こそないものの、学内に潜入させるところまではやっていて、今巻は学内の日常シーンでもフェルスズが参加しているので、学校の同級生でもあるという地位はそこまで際立ちませんが、それでも理樹、フェルスズ双方との絡みで安定した味を出しています。

あらすじにも登場する、理樹のことを「少年君」と呼ぶ鷹揚なお姉さん風の新ヴァルキリー、彼女に関しては名前も不明のままでした。

ヴァルキリーワークス 4巻口絵
 (カラー口絵)

ただ、兜を被った外見と防御系の能力からして、やはり名は体を表しているなら、ブリュンヒルデ(甲冑)かヘルムヴィーゲ(兜)のいずれかでしょうか。
9人のヴァルキリーの内に欠員がいるとすれば、一番メジャーなブリュンヒルデの方のような気はしますが……

彼女が理樹に渡した神威・ミョルニルは今回使われず。
ただ、これは戦神トールの力を三分割したもので、残り二つ・メギンギョルズとヤールングレイプルは馬子さんことロスヴァイセが持っているので、とすれば近い内に馬子さんと合体することで三つを合わせた力が使えるようになるのかも知れません。あるいは最強の戦神の力となると、もっと紆余曲折あるのでしょうか。

前巻で敵として戦った相手・ヴァルトラウテは理樹により「勇子さん」というあだ名を付けられます。ワンパターンなネーミングは一つの芸としてまして……
今回も再戦を挑んできますが、ヒロインとして恋愛面でほぼ陥落。今回、理樹が新たな合体を披露する相手は彼女です。

そして最後に登場した新ヴァルキリー。武器が槍ということはゲールヒルデ……?


それから、自分の母親までハーレム要員に入れてしまうのが「総食系男子」たる理樹の凄いところですが、軽口でのネタかと思いきや進展しています。
サービスのお風呂シーンは毎巻のことですが、まさか母親ととは……
『電波女と青春男』の女々さん以来の「さすがにそれは大多数の読者が喜ばないだろう」という衝撃でした。

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 大学生活 - ジャンル : 学校・教育

コメント

No title

新ヴァルキリーの人は兜で声がくぐもってるってあったのでグリムゲルデ(仮面)の線もありそうです。
フェル子さんは理樹がジークフリートっぽいし、ヴァルキリーは8人(フェルスズいれて9人)なのでブリュンヒルデの可能性も高そうかなと。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。