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暗殺者と標的の絆――『暗殺教室 10』

今回取り上げる漫画はこちら。コンスタントな刊行でついに巻数も二桁に突入、『暗殺教室』の10巻です。

暗殺教室 10 (ジャンプコミックス)暗殺教室 10 (ジャンプコミックス)
(2014/07/04)
松井 優征

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 (前巻の記事

今回は久し振りに一話完結のエピソードから始まります。
まずは渚と仲の良い女子・茅野(かやの)カエデが主役を張る回。
普段は後方支援型で目立った活躍の少ない彼女ですが、今回は巨大プリンを使った暗殺を発案、並々ならぬ熱意と(プリンの特性についての)研究ぶりで陣頭指揮を取って活躍します。

暗殺教室10巻 1
 (松井優征『暗殺教室 10』、集英社、2014、p.14)

暗殺教室10巻 2
 (同書、p.15)

主人公の渚からして、自分の才能に未だ気付いていない様子ですし、人間の才能や可能性というものはそう簡単には分からない、一緒に過ごした仲間も気付いていなかったものがまだまだあるということを見せてくれました。

続いて、烏間先生によるフリーランニングの訓練があり、殺せんせーがそれを活かしたケイドロ対決を提案します。
「泥棒」は生徒全員、それを追う警官役は烏間先生と殺せんせー(ただし殺せんせーはラスト1分まで待機)、そして舞台は森に川にと自然の地形豊富な裏山。

烏間先生は暗殺の標的である殺せんせーにいいように振り回されることをよく思ってはいませんけれど、この二人はそれぞれの仕方で名教師であり、教育に当たっては名コンビなところも見せます(まあ他方で、殺せんせーが精神的な弱点を衝かれて足を引っ張っている――あるいは教育的効果を考えて生徒に与している?――場面も見られましたが)。

暗殺教室10巻 6

暗殺教室10巻 7
 (同書、p.40)

暗殺教室10巻 3

「目の前に生徒がいたら伸ばしたくなる それが教師みんなの本能ですから」
 (同書、p.67)


こうした、暗殺者と標的の間の世にも奇妙な絆は、まさに「暗殺教室」を構成しているものです。
殺せんせーは自ら標的となりつつ、先生として生徒たちを伸ばすために全力を尽くしていますし、生徒たちも殺せんせーを先生として慕いつつ、日々暗殺に精を出しています。

それは殺せんせーと同じ触手を持つ少年・イトナが登場する話では、いっそう顕著に表れてきます。
イトナは「転校生」としてE組にやって来ましたが、「保護者」――つまり彼に触手を与えた人物であり、恐らくは殺せんせーの正体をも知る存在――たるシロの命と作戦に従って時々殺せんせーを暗殺しにやって来るだけで、いわば外部から来る暗殺者といって立場でした。
そんな外部の敵に先生が討たれそうになれば、生徒たちは戦います。
確かに生徒を人質に取るという手は有効であって、その意味で「生徒」は殺せんせー最大の弱点ですが、同時に暗殺者として育てられた生徒たちは、敵の策謀を狂わすほどの力でもあるのです。

そして今回は、イトナ3度目にして最後の襲来。

暗殺教室10巻 4
 (同書、p.87)

シロの作戦は見事。
けれども、先生も学習し成長します。

暗殺教室10巻 5

「先生が日々成長せずして…そうして生徒に教える事ができるでしょうか」
 (同書、p.98)


むしろ、教えることで学ぶことが大きいのかも知れません。

そして、ようやくイトナもきちんとクラスの一員に。

イトナは過去の経験から、いくら勉強を積み立ててももっと強大な力の前には無力だと思い、力への妄執に取り憑かれていました。
けれども、「いつか勝つ」べく、「いつか役に立つかもしれない」勉強を重ねることは無駄ではないのだと、殺せんせーの暗殺という困難な課題に失敗しながら挑み続けている生徒たちは知っています。

暗殺教室10巻 8
 (同書、p.161)

戦とは百敗しても、最後の一勝をすれば勝ちと言ったのは『史記』だったか――

そこで、それまでを一緒に過ごし、知恵と力を出し合う仲間たちの大切さも、改めて見えてきます。
『少年ジャンプ』の三綱領といえば「努力・友情・勝利」ですが、それらが一体のものとして、しかも学校の勉強というあまり好かれないものをモチーフに、ちゃんと描かれています。
もっとも、「勝利」が最終回付近まで持ち越されるのは、ある種究極の構造ですが。しかも苦さを伴った「勝利」になりそうなので……

ここ最近、毎巻のように美味しい役回りを担っている寺坂にも注目。

暗殺のためのラジコン戦車から始まって、女子のスカートの中を盗撮するために一致団結し始める男子たちの姿も、男子中学生の友情らしくて非常に楽しいものでした。

他方で外道なシロは次なる陰謀を巡らせており、また前巻で姿を見せた最強の殺し屋「死神」の件もあって、外部勢力の動きという方面も非常に楽しみです。


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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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