スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

嫌われ者のいろいろ――『ゲッチョ先生のナメクジ探検記』

プリンタの紙詰まり……まではよくあることですが、いくら詰まった紙を取り除いても紙詰まりエラーの表示が解消されず。
こうなるともう、メーカーに修理を頼むしかないようで、例によって買い換えた方が安く付きそう……ということでプリンタを買い換えました。
他にも印刷がブレて二重になったり、インクの残量表示がおかしかったりと色々あったので、潮時だったということでしょうか。

 ~~~

さて、今回は久々に自然科学系の本を取り上げてみたいと思います。

ゲッチョ先生のナメクジ探検記ゲッチョ先生のナメクジ探検記
(2010/04)
盛口 満

商品詳細を見る

ヌルヌルしているし、貝殻コレクションにもならないしで嫌われるナメクジ。しかし注目してみると色々と面白いことがあるのです。
著者は沖縄のフリースクール「珊瑚舎スコーレ」で理科講師をしているという人物。彼はナメクジ好きの女子高生アズサの進路相談に乗ったことから、徐々に自らもナメクジにのめり込むことになります。
中でも主として扱われるのはイボイボナメクジ肉食(他の陸棲巻貝を食べる)という一風変わったナメクジで、まだその詳細な種類の区別について学術誌に正規報告はされていませんが、南西諸島にはかなりたくさんの種類がいるとか……
フィールドワークでの探し方、同定の仕方、生態……もっと細かくは琉球諸島のどの島にどんなナメクジ(とりわけイボイボナメクジ)がいるか、ナメクジは食べられるのか、毒か薬か、はたまたある地方にはナメクジの祭があるとか etc...

本文はイラストのみで写真はありませんが、巻末には「日本産のナメクジ類の概要」(外来種含む)も載っていて、主要な種類に関しては写真もあります。


さて、私がナメクジに行きついた理由は少し遡ります。
まずは以下の書がありました。

右利きのヘビ仮説―追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化 (フィールドの生物学)右利きのヘビ仮説―追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化 (フィールドの生物学)
(2012/02)
細 将貴

商品詳細を見る

巻貝の基本は右巻きです。
突然変異で逆巻きの個体が生まれる可能性はありますが、巻貝は殻の巻く向きに応じて内蔵の配置まで全て逆転するので、カタツムリの場合、殻の巻き向きが逆だと交尾できません。
つまり、逆巻き個体は繁殖できないのです。正確には、兄弟ならば同じ変異を共有している可能性がありますが、変異が出現した当初は同じ向きの個体に出会える可能性は低いはずです。
にもかかわらず、カタツムリの中でもいくつもの属で独立して、左巻きの種が見られます。
これは、右巻きのカタツムリを食べるのに特化した捕食者がいたから、左巻きは食べられにくくて生き残ったのではないか、そしてその捕食者とはカタツムリのみを食べるヘビ、セダカヘビではないか――というのが「右利きのヘビ仮説」です。

手のないヘビの何が右利きなのかと思いますが、顎の使い方が右利きなのです。詳しくは『右利きのヘビ仮説』をご一読あれ。

さて、この書の中で「カタツムリとは何か」についてもコラムが設けられていましたが、これが結構ややこしい。
狭義のカタツムリは巻貝(軟体動物腹足綱)の中の「有肺目」に属します。鰓呼吸ではなく肺があるから有肺目です。
しかし、有肺目の全てが陸棲というわけではなく、また完全に陸棲の巻貝は有肺類だけではなくて、アマオブネガイ類やヤマタニシ類にもいます。巻貝はいくつもの系統で独立して、陸上に上がる進化をしたのです。

さらにややこしいのがナメクジで、カタツムリが殻を失う進化は、カタツムリの中でも複数のグループで独立して生じています。中には海に棲んでいる祖先の段階で殻を失ってから上陸したものもいて、「ナメクジはカタツムリから進化した」とは必ずしも言えない。そんな殻を失ってから上陸したタイプのナメクジにアシヒダナメクジやイボイボナメクジがいる――
そんな話を読んで興味を持ち、調べてみたところ『ゲッチョ先生のナメクジ探検記』に行き着いたわけです。
海に棲むイボイボナメクジの近縁種のことなどもきっちり触れられていて、期待に応える一冊でした。


さて、カタツムリのナメクジの分類学上の地位について手短に触れましたが、まずナメクジが「軟体動物」、つまり貝やタコやイカの仲間であることからして、存外認知されていない事柄である模様。
そういう人々の認識についての調査結果も、『ゲッチョ先生のナメクジ探検記』には色々載っていて、これまた興味深いところ。

イボイボナメクジ以外の話も色々あって、たとえば現在日本で一番普通に見かけるナメクジは、外来種のチャコウラナメクジであるとか。背中に瘤があって、その中に小さくなった貝殻の名残りがあります。日本原産のフツウナメクジには瘤はありません。そう言われると確かに、今まで見てきたナメクジの多くには瘤があったような……


最後に、「ナメクジとは何か」という、上述の通りなかなか難しいことについて端的に語っていた箇所を引用しておきましょう。

(……)ナメクジというのは、貝殻を退化させた陸貝のことだった。つまり、ナメクジは「系統」を反映していない。ベッコウマイマイの仲間だろうが、本家のナメクジ科だろうが、貝殻が退化している陸貝なら、それはナメクジなのだ。ナメクジというのは、陸貝の中で、殻を無くす進化を選んだ貝たちの、ある「状態」をさす言葉をいってもいい。(……)
 (盛口満『ゲッチョ先生のナメクジ探検記』、木塊社、2010、p.107)



ナメクジ―おもしろ生態とかしこい防ぎ方ナメクジ―おもしろ生態とかしこい防ぎ方
(2010/06)
宇高 寛子、田中 寛 他

商品詳細を見る

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 大学生活 - ジャンル : 学校・教育

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。