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テキスト読解法

以前も少し触れた『女ことばと日本語』(中村桃子)では、翻訳文学の女性人物はことさら顕著な「女ことば」(「~わよ」口調)を使うことが指摘されていました。
同書中では、そもそも女ことばというものが登場したのもまずは翻訳小説の中であり、従来のどんな日本語も西洋娘の喋り方に馴染まないことから、あのような言葉遣いが編み出された旨も語られていたかと思います。

さて、それに慣れすぎたせいか――気が付けば、海外小説を原書で読んでも、女性登場人物の台詞が女ことばで再生されるのに気付きます。
もちろん、読むだけならば一文一文をいちいち詳細に訳出するわけではありませんが、それでも不完全ながら日本語を思い浮かべているわけです。完全に外国語で考えられるほど器用ではありませんし。
外国語を学ぶに当たって母語に引き摺られることを母語干渉と言いますが、これも一種の母語干渉かも知れません。
他方で、既成の翻訳を読んでも「~わ」は自然と受け入れますが、「~てよ」はやりすぎだと思ったり。

 ―――

あまり本も読み進まない中、しょうもない話題で引っ張っている感はありますが、ものはついで、目線が外国語学習者になっている私はどんなテキストの読み方をしているか、ちょっと語ってみようかと思います。
題材は先日取り上げたライトノベル『パンツではじまる世界革命』です。

 しかし、こんなときだというのに、懐に抱く女子高生のスカートがめぐれあがったことに目を奪われている自分が笑えた。
 純白のパンティだ。
 なんて美しいのだろう……。
 (綾野陽一『パンツではじまる世界革命』、p.15)


気になってしまうのは、タイトルを筆頭に「パンツ」を連呼している作品の中で、この箇所は「パンティ」と表記していることです(確か、作中にはもう一箇所くらい「パンティ」表記があったと記憶していますが、今回そこには触れません)。
日本語の語感としては、「パンティ」という表記は官能小説のイメージが強いためか過度にいやらしく、避けられるということを井上章一氏が指摘していましたし、概ねそれに異存はありません。
しかし私が考えるのは、そうした語感の機微に疎い外国人の日本語学習者の視点で読んだ場合、この小説のテキストから「パンツ」と「パンティ」の間にいかなる差異を読み取るか、なのです。

着目されるのは、引用箇所の5ページ前に「この子はどんなパンツを穿いているのか」と気にする場面があることです。
そこからは、“「パンティ」は「パンツ」の一部であり、より限定された範囲を指す”という可能性が考えられます。

 Q: どんなパンツか → A: 純白のパンティだ

「純白」が「どんな」に対する答え、すなわち何らかの限定であることは疑いありません。しかし「パンティ」の方も限定かも知れないでしょう。
そしてこれは、あながち間違ってはいないかも知れません。
「パンツ」と言えば男物のトランクスや、ズボンの「ショートパンツ」等も含みますが、「パンティ」は女物に限定されると考えられるからです。そして実際、「パンツではじまる~」の中で主人公が作ろうとするパンツはまずは女物のパンツですが、テキスト上はそうした広義の「パンツ」の用例も見出されるからです。

言葉を学ぶというのは、こうして実際の用例からニュアンスを学び取ることです。

そしてまた、母語のテキストを読むに当たっても、そこまで考えると、なるほど作者は主題たるパンツついては、表現も相応にこだわっているのかも知れない、と分かるわけです。

たしかにこの事例は大変くだらないのですが、さほど労力を無駄遣いしているとは思いません。私にとって、こういう読み方はほとんど当然のものになっていますから。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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