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部活動で宇宙、そして大きな騒動へ――『銀河女子中学生ダイアリー 1 お姫様ひろいました。』

今回取り上げる小説はこちらです。

銀河女子中学生ダイアリー(1) お姫様ひろいました。 (ファミ通文庫)銀河女子中学生ダイアリー(1) お姫様ひろいました。 (ファミ通文庫)
(2014/07/30)
庄司卓

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作者は庄司卓氏。『それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ』等の作品があるベテラン作家で、実に3年ぶりの作品発表とのこと。

本作の舞台は西暦2087年、2020年代に地球人と接触した「宇宙商人(バータラー)(異星人)から手に入れた超光速恒星間宇宙船「エクゥイッド」が広く実用化されています。
ただしこのエクゥイッド、原理的に大型化は不可能で、原則的に二人乗り。それでも大人が乗ると窮屈なので、少年少女が作業員として使われるようになっており、そうした少年少女は「ロガーヘッド」と呼ばれています。
少年少女がパイロットとなる理由は『ロケットガール』(野尻抱介)でも同様な説明があったはずですが、まあひとまず理屈を通そうとしていることは分かります。

主役は女子中学生の射白(いしろ)トモエ奈多伐(なたぎり)サヤ
コンビでエクゥイッドに乗り、学校のロガーヘッド同好会として活動しています。大企業のお嬢様である同級生・打出(うちいで)マリカがスポンサーに付き、この度大会で実績を挙げて部に昇格を目指す予定。

普通の学校生活を送って、放課後の部活動として宇宙船に乗る――作者もまさにそうした、「日常生活と宇宙が繋がっている」「古典的なスペースオペラ」の世界を描きたかったのだと述べているところのものは、冒頭からしっかり印象付けられます。

しかし考えてみると、――宇宙に限らず――フィクションの存在が「当たり前の世界」を描こうとして、「日常のこんな場面に普通にこういうものが出てくる」というのを描くためには、「日常生活」は我々の知っている通りのものでなければなりません。「未来において常識がどれくらい変わったか」ということを扱いだすと、別の問題系になってしまいます。
そしてその馴染み深い日常がまず「部活」であるということに、なんとも特異な状況を感じもします。
こと本作の場合、学校の後援ではなく別にスポンサーも得ている活動で、大会も学校単位での参加を要件としているわけではないのに、なぜ部活でなければいけないのでしょうか。

答えは明らかに、現代日本の、それもライトノベルという文脈にあっては、「中高生の活動は学校を軸とする」という枠(先入観)がきわめて堅固であり、読者が共有していると仮定される「日常」としても使いやすいから、なのです。
その先入観や部活動の問題点を問い質すのは、この際無用と思われるからやりませんが。

思えば主人公の少女が学校のクラブ活動で宇宙船に乗っている、という設定はアニメ化もされた『ミニスカ宇宙海賊』(笹本祐一)と共通しており、連想する部分は多いだけに、いずれの作家も世界観の導入として採用する「部活」という枠組みの強さを感じるわけです。

さて本作の話に戻りますが、ビギナーズ大会に出場したトモエとサヤは、異星の小国シュリンゲンジーフ王国での政変により逃亡してきた元宰相の娘、コダチ・ユルゲンスと出会います。
彼女はシュリンゲンジーフ王国の王女フランツィスカ姫の護衛として逃げてきて、姫を助けるため地球の射白家を頼ってきたのこと。彼女がそんなに射白家を頼りにするのは、失踪中のトモエの父・一矢が関わっているようで……

というわけで、国単位で宇宙に移住した小国とはいえ、一国の命運も関わる大きな話――逃亡中のお姫様を保護して、というのも王道です――ですが、基本的なトーンとしては女子中学生の緩い日常の印象が強いですね。
おっとりマイペースながらエクゥイッド乗りとしては超優秀なトモエと、トモエに対し何かと「ばかなの?」を連呼するサヤはいいコンビで、こと周囲から度々夫婦だとか言われては顔を赤らめるサヤは百合をも少なからず感じさせます。
ついでに、コダチのフランツィスカ姫に対する心酔ぶりも、語りだすとほとんど惚気ですし……

そんな雰囲気と、壮大なスペースオペラらしい設定、それに日常とSFを繋ぐための最小限の筋、という点ではいずれもそれなりの質の作品だと思います。
他方、シュリンゲンジーフの政変に関わる大きな物語は序章も序章、タイトル通りに「お姫様を拾って」これからも巻き込まれていきそう、という状況になるところまでです。
クーデターの背景にある組織の狙いなど、謎も盛りだくさんですし。
その点に関しての評価は続き次第でしょう。

あとがきによれば、「スペースオペラ」「女主人公」共々売れ線でないことは作者も重々承知のようですが、さてどこまでやれるでしょうか。ひとまず楽しみに待ちましょう。


【追記】
ちょっと気になる宇宙戦でのアクションの距離感でしょうか。
ケーブルでエクゥイッド本体に繋がった「銛(ハープーン)を打ち込むとか、標的との距離せいぜい数十メートルでやっているような印象を与えます。
しかし、超光速飛行は星系外でしかできない設定なので普段はやっていないにしても、現実の宇宙戦でも秒速11km出る(=100mを約0.01秒)というのに、あまり短い距離で操作する時間があるのでしょうか……
まあ、そういうことを細かく考えず、カーアクションの延長上で考えられる宇宙戦アクションもまた、スペースオペラの醍醐味なのかも知れませんが。


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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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