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ヒーローの不可能性の果て――『エクゾスカル零 7』

今回はこちらの漫画を取り上げさせていただきます。

エクゾスカル零 7 (チャンピオンREDコミックス)エクゾスカル零 7 (チャンピオンREDコミックス)
(2014/08/20)
山口 貴由

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 (前巻の記事

今回はいよいよ、葉隠覚悟と動地憐の戦いが決着し、そして覚悟を主人公として描いてきた「地獄編」もひとまずの完結を見ます。
そんな中で、エクゾスカル「雷電」を纏う戦士・黒須京馬(くろす きょうま)も登場。

エクゾスカル零7巻 黒須京馬
 (山口貴由『エクゾスカル零 7』、秋田書店、2014、p.20)

元々、強化外骨格「雷電」を纏う戦士・黒須京馬は、フルカラーの掌編「覚悟のススメVOLTEX」(『新装版 覚悟のススメ』5巻収録)で2号ヒーロー風に登場した謎のキャラクターでした。
雷電の活躍はスピンオフ作品『開花のススメ』(作画・苺野しずく、全3巻)で描かれましたが、こちらの主人公は京馬の妹・巴恵(ともえ)で、京馬は第1話にして死んで英霊となってしまったりします。
本作の京馬はそれとはまたパラレルなようですが(そもそも『エクゾスカル零』自体がパラレルという色彩が強いです)、医者という設定などは共通しています(黒白染め分けの髪もブラック・ジャック風ですし)。

さて、今巻でいよいよエクゾスカル戦士たちを目覚めさせた存在も明らかになります。
それは特定の誰かではなく、残存人類の叫びそのものでした。

この世界では全ての人間が、いずれ人の心を無くし、人間を貪り食らう「到達者」となる宿命です。
「牙なき者の牙」たるはずのヒーローたちが目覚めた世界は、明確な悪が存在しないばかりか、「牙なき者」たちが怪物に変じ、人々は自分もそうなることに恐れ戦いて暮らす世界でした。

動地憐の「メデューサ計画」はそんな人類を安楽死させ、それによって「人類の火」を守ろうとしました。
しかし覚悟はそれに反対します。

覚悟の到達した結論については、作者があとがきでかなり明瞭に語っていますが、つまるところ過酷な宿命に慄きながらであろうと、現状を生きるということなのです。
元より「到達者」となる宿命を覆せない以上、ヒーローにできることは限られてきます。
本作は7巻かけて、ほとんどヒーローの不可能性を突き詰めたと言ってもいいでしょう。

はなはだ消極的で絶望的に見える覚悟の立場は、それでもまったく否定的なものでも単に悲観的なものでもないのかも知れませんが、皆が納得する最終結論というわけでもなさそうです。
覚悟の兄・(はらら)も遠くから見ているという状況で未だ大きな動きを見せていませんし、このスーパーヒーロー大戦がどちらに転ぶのか、まだ予断を許しません。

そして今巻では、新たなエクゾスカル戦士・御菩薩木紡(みぞろぎ つむぐ)を主人公に「煉獄編」が始まります。

エクゾスカル零7巻 御菩薩木紡
 (同書、p.98)

思えば「地獄編」はずっと雪の舞う冷たい地が舞台で、画面もスクリーントーンの比率が高く暗い感じでしたが、「煉獄編」では乾いた荒野に舞台を移し、絵柄もいくぶん昔っぽくなっています。
そして何より、「牙なき者」たち、つまり普通の人たちが登場します。

しかし、救いのない世界観は変わりません。
人間が到達者になるという宿命は変わらず、それゆえに人々は到達者となる可能性のある他者を恐れ、差別し、憎悪します。「病原体」だ何だという表現は、まさに差別が生まれる現場を見る思いです。
結果として、まぎれもない「いい人」たちが、到達者にならずとも、悪へと導かれるのです。

はっきりとヒーローたる志を持っていた明るい主人公の視点で、守られるべき「牙なき者」たちが悪に、ヒーローが「正義失格者」に転ずる様を描くのですから、これまた「地獄編」とは別の意味でハードです。
煉獄とは本来、罪人が罪を浄めて天国で行く準備をするところですが、これではまるで「地獄編」の世界への準備のような……

京馬の存在が「地獄編」と「煉獄編」をつなぐ役割も果たしており、時系列的な関係もある程度示唆されているので、いずれ合流してくる可能性が高そうですが、さてどこへ向かうのか……


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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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