スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

セカイ系から再びマクロな視点に――『魔法少女・オブ・ジ・エンド 6』

今回取り上げる漫画はこちらです。

魔法少女・オブ・ジ・エンド 6 (少年チャンピオン・コミックス)魔法少女・オブ・ジ・エンド 6 (少年チャンピオン・コミックス)
(2014/09/08)
佐藤 健太郎

商品詳細を見る

 (このシリーズについての記事

ただ、5巻についてはこのブログではまとまった形で触れないままで来てしまいましたが……
既巻の内容については思い切って語らせていただくことにしましょう。

3巻で過去へのタイムスリップが登場、しかも主人公・貴衣の幼馴染の少女・福本つくねが「魔法少女」を生み出した源であることが発覚していました。
そして前巻では襲来した「魔法少女」たちが未来から来たことが判明、つまり「今」つくねを殺せば未来で「魔法少女」は生まれず、魔法少女パニックは起こらないという話に……
しかし貴衣は、陰から自分たちを見守っている謎の「味方」からのメッセージもあり、単に悲劇では終わらないと信じて、つくねに止めを指します。

かくして訪れたのは……「魔法少女」の襲来がなかった世界。

魔法少女・オブ・ジ・エンド6巻1
 (佐藤健太郎『魔法少女・オブ・ジ・エンド 6』、秋田書店、2014、pp.14-15)

前巻を読んだ時にはループかと思いましたが、日付は戻ることなく5月23日(「魔法少女」の襲来があったのは5月20日)です。
そして主要登場人物たちは改変前の、つまり魔法少女パニックがあった世界の記憶、さらには証拠となるアイテムまで保持しているようで……

この世界では、つくねは先ほど事故死したことになっています。
しかも、つくねの遺体が消えるなど新たなに不穏な動きが……

魔法少女・オブ・ジ・エンド6巻4
 (同書、pp.48-49)

黒幕らしき連中も健在、これで全て平和に、というわけにも行かないようです。

そして、タイムスリップという設定を活かして意外な形で再登場したキャラも……

魔法少女・オブ・ジ・エンド6巻2
 (同書、p.101)

その正体は読んでのお楽しみといたしまして。

ここから物語は、つくねの正体とその力を巡る攻防へと展開していきます。
確かに襲来した「魔法少女」たちを生み出した源はつくねでしたが、その力にはさらなる背景があり、それにまつわる陰謀が動いている、あの襲撃はその一幕に過ぎなかった、というわけです。

大規模な事件も全ては主人公とヒロインの周りを回っている「セカイ系」の物語だと3巻で判明したかと思うと、今度はヒロインが物語の中心になる理由を客観視点で解明する方向へのシフト。
喩えるならば、『涼宮ハルヒ』でハルヒの能力の正体をマクロな視点から(キャラによって見解が違うというような事態にはならない形で)解明する方に話が進んだ感じでしょうか。
意外と言えば意外であり、ここからどちらに話が転ぶのかは全く読めませんが、普通の話になったと言えばそうも言えます。

――で、問題は、魔法少女に関する設定なのです。
今回、実は今まで暴れ回っていたゾンビのような怪物たちは本来の「魔法少女」ではなく、魔法少女を元にして生み出された存在だ、ということが明らかになります。
そもそもこれまで作中で「魔法少女」の語が出たのは、ラジオで「我々は魔法少女の攻撃を受けている」という報道があったからですが、実はその舞台裏が4巻巻末で描かれていて、これはラジオのアナウンサーが何者かに操られて言わされた発言でした。
つまり、そもそもなぜあの怪物たちは「魔法少女」なのかと言えば、アナウンサーを操った何かの意図によるのであり、またその人物が――正式名称は長いからとかいう程度の理由であれ何であれ――正確な表現をしていなかったとしても、まあ話は通ります。布石はありました。

ただ、では作中本来の「魔法少女」とは何なのか、と言うと――
作中人物に対して語られるのは6巻後半ですけれど、この6巻の冒頭でナレーションによる説明があるので言ってしまいますが、悪魔と人間の間に生まれた子が「魔女」、そして魔女と人間の間の子が「魔法少女」なのです。

魔法少女・オブ・ジ・エンド6巻3
 (同書、p.186)

しかしこの設定だと、なぜ「歴代の魔女」ではいけないのでしょうか。
なぜ魔女と人間の間の子は2世代目以降の魔女ではなく「魔法少女」と差別化される(そして、大人になっても「魔法少女」である)のに対し、後はいくら世代を重ねても「魔法少女」と呼ばれ続けるのでしょうか。
魔女が迫害されたという話は西洋の魔女狩りを念頭に置いているようでもあり、そうした西洋の古典的「魔女」と「魔法少女」は全くの別物ではなく、系譜関係があるというところまではまあ、いいでしょう。
しかし、これではとても系譜学的考察としては納得できません。

「なぜ魔法少女なのか」という問いを、これ以上本作に期待すべきではないのかも知れませんが……

 ~~~

なお、今月は同作者の『魔法少女サイト』の2巻も同時発売です。

魔法少女サイト 2 (少年チャンピオン・コミックス)魔法少女サイト 2 (少年チャンピオン・コミックス)
(2014/09/08)
佐藤 健太郎

商品詳細を見る

 (1巻についての記事

今回登場する新たな魔法少女は、国民的アイドルグループ「いぬあそび。」のメンバー、「にじみん」こと穴沢虹海(あなざわ にじみ)

穴沢虹海
 (佐藤健太郎『魔法少女サイト 2』、秋田書店、2014、p.10)

彩と露乃が接触すると、悪意なく相手にしてくれる虹海。
しかし彼女の魔法は凶悪で、本人の性格もひとたび悪意を抱くとかなりサイコなところを見せます。

そして他方で、学校で彩をいじめていたグループの中心人物で、入院中であった雫芽(しずくめ)さりなも、ひょんなことから魔法少女の存在を知ってしまい、「魔法少女サイト」の管理人から接触を受けます。
悪辣ないじめっ子に魔法で反撃、というところまでは爽快でしたが、いじめっ子の方もやられっぱなしではいないようで……この先が恐ろしいことです。

加えて明らかになるのは、魔法少女を殺してステッキを奪っていた「魔法少女狩り」と魔法少女サイトの繋がり。
結局、魔法を与えるのも奪うのも魔法少女サイトであり、少女たちはサイト管理人の目的のために翻弄されているだけなのか……
サイト管理人にとっては、来るべき「テンペスト」のため、という目的があるようですが……

ついでに、「いぬあそび。」に入れ上げて身を持ち崩した救いがたいアイドルオタクの男が、単に虹海の紹介で登場しただけかと思うと彩の兄(彩を虐待していた)と接触してしまったりとする場面もあり。
いずれにおいても、ほとんど同情の余地はないのですが、些細なことから大きく歪んでいく人間の姿に何とも言えぬ生々しさがあります。

アイドルオタクの男
 (同書、p.19)

朝霧要
 (同書、pp.158-159、クリックで画像拡大されます)

『オブ・ジ・エンド』の方にも変態警官・芥倫太郎という素晴らしい外道がいましたが、彼は一切の自己正当化をせず、ただ自分の恣(ほしいまま)にするために暴虐を尽くすという、人間にはなかなか到達できぬ境地まで突き抜けていました。
それに比べると『魔法少女サイト』に登場するクズや外道たちは、現実にもままある悪意や駄目さの延長のような身近さがあり、そこが迫真性があって不気味です。
こちらの方がまだ魔法少女らしくもありますし、この雰囲気の違いを描き分けられるのは、なかなかのものだとは思うのですが……

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 大学生活 - ジャンル : 学校・教育

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。