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女主人とメイドの日常風景――『シャーリー 2』

今回取り上げる漫画はこちらです。

シャーリー 2巻 (ビームコミックス)シャーリー 2巻 (ビームコミックス)
(2014/09/13)
森薫

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作者の森薫氏は『コミックビーム』誌上にて、ヴィクトリア時代のイギリスを舞台にしたメイド恋愛漫画『エマ』でデビューした漫画家、今ではビームの姉妹誌である『ハルタ』(元は『Fellows!』)で『乙嫁語り』を執筆しています。
新人賞を経たわけではなく、おそらく編集者のスカウトによる同人誌からの発掘で、いきなりの連載開始(最終的には全10巻という長編になりました)、しかも相当なクオリティで、なかなか印象的なデビューだったことを今でもよく覚えています。
一世を風靡した作品となり、ビーム編集部の眼力の高さを見せつけられた一件でもありました。

さて、本作『シャーリー』は元は作者の同人時代、つまりデビュー以前の作品で、他の短編も併録して単行本化されていました。

シャーリー (ビームコミックス(ハルタ))シャーリー (ビームコミックス(ハルタ))
(2014/02/14)
森 薫

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しかし、その後もちょくちょく同シリーズの新作エピソードを(今度は商業誌『Fellows!』『ハルタ』で)描いてはいたようで、この度、実に11年ぶりに2巻が出ました。

本作の舞台は20世紀初頭のイギリス。カフェを営む一人暮らしの女性ベネット・クランリー(28)が新聞にメイドの求人を出したところ、やって来たのは13歳の少女シャーリー・メディスン――他は年齢制限があったけれど、ベネットが年齢制限を書き忘れたという理由で。
なぜシャーリーが家族も家もなく仕事を探しているのかは不明ですが、とにかくメイドとしての仕事はできるので、ベネットは彼女を住み込みで雇うことになります。

そんな二人の生活が、これといって大きなストーリーもなく綴られるシリーズです。

本作の魅力として、メイドのシャーリーの可愛さはもちろんのことですが、それを伝える上でも欠かせない要素として、生活風景の緻密な描写、とりわけシャーリーの仕事風景を初めとした人々の動き回る場面の描写があります。

シャーリー2 二人
 (森薫『シャーリー 2』、KADOKAWA、2014、p.53)

シャーリーが駆け回る描写が多いのも、その年齢や体格の小ささを感じさせます。

シャーリー2 洗濯物
 (同書、p.28)

ベネットの仕事風景も。

シャーリー2 カフェ
 (同書、pp.110-111、クリックで画像拡大されます)

作中で頻出するこうした、ほとんどサイレントに近い描写は、そこで展開されている「出来事」や「雰囲気」に読者の意識を集中させます。
しかも、初期(商業デビュー以前)の絵はまだ粗いものでしたが、2巻では画力も圧倒的に向上、細密な描き込みを見せており、これがまた当時のイギリス中流階級の生活空間の雰囲気をよく伝えます。
もちろん小道具や服飾に関する考証も綿密なものです。

もう一つの本作のポイントは、あくまで「女主人に仕えるメイド」というものを描いていること。
これが大きなお屋敷であれば、メイドたちを束ねるのはちょうどロッテンマイヤーさんのような「家政婦のおばさん」ということになるのでしょうが、女主人―女使用人のヒエラルキーは、旦那様―男の使用人のヒエラルキーとは別の、まさに女の世界を形作っているわけです。
本作の二人はその極小版とでもいいましょうか。

とは言え、ベネットとシャーリーはそれに留まらず、時には一緒に踊ってしまうような、家族のような親密さも築いています。
そこにはベネットが「奥様」でなく、28歳の妙齢女性だということもあるでしょう。二人の年齢差は15歳、年の離れた姉妹のような、ともすれば親子ということもあり得るような、絶妙の差です。
しかし、であれば、ベネットは「結婚しないのか」といった話は当然あります。

ベネットが結婚すればこの家の状況も大きく変わるわけで、メイドの仕事も今まで通り必要とされるかどうか……

シャーリー2巻
 (同書、p.134)

といったエピソードもあったり。

自立して生きる(ことになってしまっている)女性としてのベネット、可愛くカッコ良く、それでいて随所で抜けている姿に注目しても色々と楽しめます。

生活を細やかに描いた、平和で暖かいお話。
大きな話の流れなどはないので久しぶりでも気にせず読めて、実に良い作品でした。


森薫拾遺集 (ビームコミックス)森薫拾遺集 (ビームコミックス)
(2012/02/15)
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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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