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世代を超えた戦い、ストーリーとテーマの継承――『UQ HOLDER! 4』

今回取り上げる漫画はこちらです。赤松健氏の『UQ HOLDER!』4巻です。

UQ HOLDER!(4) (講談社コミックス)UQ HOLDER!(4) (講談社コミックス)
(2014/09/17)
赤松 健

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 (本作1巻についての記事

気が付けば、2巻3巻を取り上げずに先送りにしている内に4巻まで出てしまいましたが……

UQ HOLDER!(2) (講談社コミックス)UQ HOLDER!(2) (講談社コミックス)
(2014/03/17)
赤松 健

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UQ HOLDER!(3) (講談社コミックス)UQ HOLDER!(3) (講談社コミックス)
(2014/06/17)
赤松 健

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1巻の最後で存在が提示された不死者たちの組織「UQ(悠久)ホルダー」ですが、2巻でその本部に到着した刀太と九郎丸は、さっそく入隊試験として地下洞窟に落とされます。

UQ+HOLDER2巻3

UQ+HOLDER2巻2
 (赤松健『UQ HOLDER! 2』、講談社、2014、p.16, p.17)

8年以内に出て来られたら合格、魔物に食われると不死身でも消化されて出てくるまでに30年という時間スケールの無茶苦茶さが、不死者の物語らしいところです。学校のような縛りもないので、時間をかけることは自由です(実際には、いきなり作中で何年も経ちはしませんが)。
同時にこの入隊試験は修行編でもあります。重力剣という強力な武器も手に入れた刀太。

しかし、「不死者たちを集めてこの力を役立てよう」と主人公が言った途端「実はそんな組織はもうある」という話になる辺りが奮っています。1巻の終盤までは主人公が育ての親の雪姫とのんびり二人旅(途中で九郎丸を加えて三人)だったのが、ここから急激にキャラも増えて派手になっていきます。
もちろん、主人公が既成の組織に加入すること自体はオーソドックスな展開ですが、そこに持っていくまでの急激な流れは、その「既成の組織」の設立者であり主人公の祖父であるネギのことに追い追い触れていくことを前提としての展開という感がありました。

そして、無事「UQホルダー」に加入した刀太と九郎丸は、同組織の先輩である夏凜(かりん)と共に初仕事に向かいます。
仕事は、地上げ屋からスラムの教会と貧しい子供たちを守ること。

『ネギま!』キャラの子孫らしいのもちょくちょく登場したり。

UQ+HOLDER2巻4
 (同書、p.106)

3巻は全編、対不死者専門の傭兵「不死狩り」との決戦でした。
主要キャラは基本的に戦士タイプ揃いなので、前作のような大規模な魔法はなく、近接戦闘主体ですが、格闘描写は前作以上のクオリティになっていたかと思います。
不死身だけにバラバラになったりと激しい戦いぶりなのは当然ですが、途中でどちらかが一時撤退かと思わせる流れもありながら、結局最後まで死力を尽くして戦い、主人公の秘められた力の発動(覚醒?)イベントもあり、さらには終盤にはUQホルダーの上位メンバーが何人も参戦する激戦となりました。
主人公より格上のキャラたちの加勢という展開は、ここというところで圧倒的な力を見せてくれると燃えるものですが、『ネギま!』では6巻にして初めてであり、大人たちの参戦は36巻の山場のイベントでした。
その点で、ストーリー上の重要情報はなかなか出て来ないのに比して、戦闘面での展開は早い印象があります。

ついでに、スカートの女の子が戦ってもパンチラがないのは大きな作風の変化(裸はありましたけど)。

刀太は天才魔法使いネギの孫でありながら(しかも近衛姓から木乃香の血を引いているとすると、木乃香は魔力に関しては作中でも随一という設定だったのだから、なおさら魔法使いとしてはサラブレッドのはずです)、なぜか一般人の友人たちに比べても魔法習得の才能はなさそうだという描写がありました。
しかし、魔法以外の技能であれば、何でも見様見真似ですぐに習得してしまうその早さはやはり天才。さらに3巻では、ネギの特殊な技能を確かに受け継いでいるのも見られました。

ただ刀太自身は、何でもできても、それぞれの分野でスペシャリストだった友人たちには敵わないという思いがあるようです。

UQ+HOLDER2巻1
 (同書、p.62)

それは、「大事を成し遂げたい」という思いはあれど、まだ具体的な目標も定まっていないことと相俟って、「まだ自分を確立できていない、何者かになりたい」という思いに繋がっているように思われます。
その前向きで元気なキャラ共々、最初から「父親を追う」というはっきりした目標があり、それと真面目さゆえに視野が狭くなって暴走しがちだったネギとは対照的ですが、このくらいの方が少年らしいのかも知れません。
また、彼は友情に篤く、現在の漠然とした目標もまずは故郷の「ダチ」との約束に根ざしています。
これまた、美少女に囲まれたラブコメ主人公の立場から始まって、遅れて友達を見出し、やがて「男の世界」へと突っ走っていったネギとは対照的。
ということは、刀太は逆の道のりを経て、女の子を意識する日が来る……のかどうか。友情バカの如月弦太郎(『仮面ライダーフォーゼ』)だって「友達じゃ満足できない相手」に出会いましたが……

むしろ恋愛を云々するなら、九郎丸の選択の方が問題かも知れません。
男だと自称しつつそうは見えないばかりか、肝心なところは見せないでいた彼(?)ですが、その真相は……色々と美味しい設定でした。
これだけ引っ張っておいて「実は女」だったら、性別を偽らねばならない理由がよほどのものでない限り、興醒めだった可能性が高いでしょうが、なるほどこういうファンタジーな事情ならば……
彼は刀太に対して選ぶのは友情か、それとも……これは楽しみです。

本作には、まずは自分の道を模索するモラトリアムな子供たちの物語という面も強く感じられます。

ただし、可能な道はすでに、状況によって制約されているのも事実。
普通には生きられない「不死者」という境遇がすでにしてそうですが、祖父の代からの因縁というのも軽くはないはずです。
3巻ではついに回想でネギと仲間たちの姿も描かれ、その辺の繋がりも徐々に見えてきました。

ネギパーティー
 (『UQ HOLDER! 3』、講談社、2014、p.114)

仲間たちも懐かしい顔ぶれが……回想と言っても『ネギま!』から60年後のことなので、長命そうなメンバーだけですが。
ネギは不老不死になったはずですが、青年の姿になっているということは、全く成長しないほどの「不老」ではなかった、ということでしょうか。子孫がいることから考えてもその可能性は高いでしょうが、年齢詐称薬もあるので確言はできません。

そして今回4巻では、スラムでの対「不死狩り」戦はひとまず冒頭で終幕。
平和な日々に戻ったところで、今度は軌道エレベーター「アメノミハシラ」に向かうことになります。刀太にとって「あの塔を上る」ことはひとまずの目標だったので、はしゃぎ方もひとしお。

4巻表紙の新キャラは「UQホルダー」ナンバー9(この組織の主要メンバーにはナンバーが割り当てられます)、桜雨(さくらめ)キリヱ
彼女の不死は……セーブ&リプレイ系

キリヱ
 (『UQ HOLDER! 4』、講談社、2014、p.56)

今回は身体を張って戦えというミッションではなかったのですが、もちろん一歩出れば色々と起こります。

何よりついに、『ネギま!』におけるネギの宿敵で、最後は友になったフェイト・アーウェルンクスが登場。

フェイト
 (同書、p.136)

彼も本来は少年の姿でしたが、魔法で外見年齢を変えるのは日常茶飯事なので。雪姫=エヴァンジェリンと同様、大人の姿での登場がメインになっているのは、刀太たちにとって「大物の年長者」ということを強調する意味もあるのでしょう。
思えば『ネギま!』でも、5巻で登場した彼が未知の敵組織の幹部であることは容易に見て取れましたが、その後30巻以上に渡って宿敵として君臨し続けるとは(登場していない時期も長かったとは言え)予想外でした。
彼がネギと手を取り合った時点で話が巻きに入ったのは、ある種当然だったのかも知れません。

しかし、ネギの盟友になったはずのフェイトですが、ネギの死後はまた情勢が変わったようで、今回はふたたび敵として登場することに……
とは言え、読者にとっての興味は「フェイトに何があってこうなったのか」であり、彼を倒すことよりも、彼の立場を今のようにした問題に取り組むことが期待されます。その意味でフェイトが真の敵ではないのは、予想できることでしょう。
前作とのストーリー上の繋がりが徐々にはっきりしてきている中、彼の口からネギの戦いと道程について語られることに期待しましょう。

ついでにさりげなくでしたが、エヴァンジェリン=雪姫に「今の私でも」、つまり今は全力ではないことを示唆した発言もありました。これもかつての戦いに関係した事情でしょうか。

エヴァ
 (同書、p.25)

そもそも、『ネギま!』のラストでは7年後に移り、父ナギを救出するというネギの目的も果たされていた(過程は省略されたものの)のですが、しかしそれは全ての問題解決を意味するとは限りません。
本作を見ると、「20年前」、つまり『ネギま!』から60年後にも、『ネギま!』での戦いをなおも引きずっている節があります。
そもそも終盤には、ワンタッチではなくきわめて長期的な政治経済的計画をもって世界を救うという話になっていましたし……
大河ドラマ級のタイムスケールになるとあれば、学園ラブコメ&バトルという枠で始まった物語を仕切り直すことになるのも頷けます。

前作に引きずられすぎてはならない、新作であるからには別物として読むべきというのはもちろん一理があり、作風の違いなどについてはむしろそれが正しいのでしょうが、本作の場合、キャラや設定だけでなく「テーマの続投」という要素も見逃してはならないと、私はひとまずその路線で読み続けています。


以下少しばかり、本作および『ネギま!』のより深いネタバレに関わる話を。





3巻で刀太は、ネギの技能であった「闇の魔法(マギア・エレベア)を発動します。
これは元々、エヴァンジェリンが吸血鬼としての自らの肉体を利用して編み出した技。
エヴァンジェリンを吸血鬼に変えたのが「始まりの魔法使い」あるいは「造物主(ライフメーカー)と呼ばれる存在であるがゆえに、「闇の魔法」は元々「始まりの魔法使い」の力に近いものでした。そしてネギがその「始まりの魔法使い」の血を引いていたことによって、「闇の魔法」の暴走により魂を侵食されて死にかけたネギは、吸血鬼にも似た不老不死の存在となって復活することになりました。
ネギの血を引き、エヴァンジェリンによって吸血鬼化された刀太が「闇の魔法」を得たのは、理解できる流れです。
『ジョジョの奇妙な冒険』第2部で、ジョセフ・ジョースター(第1部の主人公ジョナサンの孫)が生まれながらに波紋を使えたことをちょっと思い出しましたが。

ただ、闇というだけあってこれは危険な術式であり、刀太も正気を失います。
人間をやめる以前は、ネギもこの暴走に苦しめられてきました。

まあ、「強大だが制御できない力に苦しめられ、それと戦う主人公」というのも、その力が「悪」や「闇」等に結び付いているのも、今となっては定番ではあります。
ただ、往々にしてそうした力の暴走は、力はあっても理性を失い、技も駆け引きもなく力任せにぶつかっていく状態として描かれることが多いものです(必ずとは言いませんが)。この場合、力の暴走とは動物的な凶暴性に近いものです。

ネギの場合も、初期(8巻など)で魔力が暴走したケースではそういうことがあって、「力だけあってもあれじゃダメだ」と窘められたりしていましたが、終盤での「闇の魔法」の暴走の場合、敵味方の見境はなくなっても、クレバーに多用な戦闘技術を使いこなす戦いぶりは変わらないままでした。

元々、幼少時に村を滅ぼされるという辛い体験を出発点としており、真面目で思い悩む性格のネギは「闇と相性がいい」ということは、言われていました。
しかしそうした性格や、深いトラウマゆえの必死さが、魔法使いとしての並外れた優秀さ(それも力任せではなく、極めて技術に長けた)に繋がっていたのであって、その意味でネギの「闇」は決して理性に対立する獣性ではなく、むしろ理性の内に根を下ろしていました。
そこに彼の闇の根深さがあります。

思えば暴走していなくても、彼は1対1の戦いでは色々と持てる技を工夫して健闘を見せる反面、「自分が何とかしなくては」という思いが強すぎて、周りが見えなくなるタイプでした(この点、ケンカ好きな分タイマンでは熱くなりやすく、あまり1対1で勝ったことがない一方、戦いでは周囲のフォローが上手い小太郎とは対照的でした)。

しかしすると……と思うのですが、刀太はネギとは正反対の性格です。戦闘でも彼の才能はむしろ直感力にあります。
そんな彼が暴走しても、動物的な暴走の方に見えます。ネギに比べると今ひとつ、面白みや重みを欠いているというか……

そもそも性格が真逆ならば、ネギと違って闇との相性は良くないのでは、という気もします。
闇の魔法の暴走を「これは自分の力じゃない」といって止めたのは、そのことを示唆しているようにも思われます。
とにかく、ストーリー的にあまりそのままな焼き増しはしないだろうとか色々な理由はありますが、ネギの場合ほど内なる「闇の魔法」との戦いが大きな要素になるとは思えない、ここでもこれは、むしろネギとの繋がりを示唆するギミックという面が大きいのでは、という気がしてならなのです。


それから、20年前(『ネギま!』から60年後)でも、「始まりの魔法使い」との戦いが続いていたとの描写も……
『ネギま!』本編からさらに20年前の戦いにおいて、ネギの父ナギは「始まりの魔法使い」を倒したと思われたが、不滅の存在(他人の身体を乗っ取って復活を繰り返す)である「始まりの魔法使い」は生きており、それから10年後(『ネギま!』本編の10年前)にナギは自らの身体を乗っ取られながら、自分ごと封印することに成功した……という話でした。
『ネギま!』本編から7年後のエピローグ、ナギが復活していた以上、当然「始まりの魔法使い」は倒されたと思ったのですが、どうもやはり完全に滅びてはいなかった模様。

それから60年経っても戦いは続いており、そして現在、不死者になったはずのネギは死亡扱い……
よもやまた相討ちになったのか、と考えてしまいます。
世代を超えて同じような戦いを繰り返しているとか……ただ、フェイトたちがはっきりネギを「死んだ」と言っている以上、ネギがナギと同じような形で生きている可能性は低そうですが。
その辺の真相も語られる日が来るのを待ちましょう。

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プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

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