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本当にあるようなご都合主義なようなお話――『ナナのリテラシー 2』

今回取り上げる漫画はこちら、1巻に続きキンドルダイレクトパブリッシングによる電子書籍版も同時発売の鈴木みそ『ナナのリテラシー』2巻です。

ナナのリテラシー 2 (ビームコミックス)ナナのリテラシー 2 (ビームコミックス)
(2014/09/24)
鈴木 みそ

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電子書籍版↓
ナナのリテラシー2ナナのリテラシー2
(2014/09/22)
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 (前巻の記事

明らかに作者をモデルにした漫画家・鈴木みそ吉の電子書籍化を巡る話は1巻で綺麗に一段落し、さて1巻の最後で登場した次なる依頼人はゲーム会社「BOMB」の社長・黒川内大五郎(くろこうち だいごろう)
彼の依頼は「天才を殺す」こと……?

ナナのリテラシー 黒川内1
 (鈴木みそ『ナナのリテラシー 2』、KADOKAWA、2014、p.178)

ファミコン草創期からのクリエイターである黒川内社長は昔ながらのゲーム観を持ち、課金で稼ぐソーシャルゲーム――とりわけガチャのようにコンプリートするために大量のリアルマネーをユーザーに注ぎ込ませるものは認めません。

ナナのリテラシー 黒川内2

ナナのリテラシー 黒川内3
 (鈴木みそ『ナナのリテラシー 2』、KADOKAWA、2014、pp.48-49)

社長の理屈はもっともで、考えさせられることも多いものです(※)。
しかし、今や携帯電話のアプリゲーム全盛という時代の流れはいかんともしがたく、おまけに「BOMB」にはアプリゲーム開発の天才がいて、それを忌々しく思う黒川内社長はその天才を社会的に抹殺したいと思っているらしいのですが……

※ ただ考え方を変えてみると、多くの場合、ゲームのクリアに努力してもゲームの外では何にもならないわけで、お金を費やすより時間と労力を費やす方がいいとは限らないかも知れませんが。ゲームプレイヤーの倫理とゲーム外の倫理は別物です。しかしまあ、これはまた別の問題系でしょう。

主人公のナナは女子高生アルバイトとして「BOMB」に潜入、件の天才こと「デンカ」について調査するのですが……

しかしもちろん、問題に「なるのは単に社長の希望や私怨ではなく、ゲーム業界そのものの状況です。
今や固定ゲーム機のゲームはどんどん金のかかるプロジェクトになり、一部の大手しかやっていけない状況になっています。
そんな中、課金で稼ぐ携帯電話のアプリゲームが成功を収めてきたのですが、スマートフォンの登場で事態はまた変わりつつあります。
前巻の漫画業界以上に、一部の大ヒットコンテンツとそれ以外の落差が激しく、しかも先の見えない業界……
そんな中で零細企業が生き延びるためにはどうしたらいいのか?
ナナは社長の依頼に留まらず、会社を動かすために奔走することになります。


そして同時に問われるのは、クリエイターの立ち返るべき原点です。

ナナのリテラシー 黒川内4

「作品ってのは学校のようにみんなで仲良く作るものじゃないんだよ
エゴイスティックなまでの個人の絶対的な思い込みで作るんだ」
 (同書、p.124)


ナナのリテラシー 黒川内5

「面白いと思ったものを人に届ける それがもの作りの根源だ
売れるかどうかはその後についてくる」
 (同書、p.163)



自分の好みなど関係ない、売れるものを計算して作るのだと嘯いたところで、移り変わりの早い時代には次に何が売れるのか分からず、それで皆苦労しているのではないでしょうか。
「こういうのが売れ線」という計算は先例に基づく経験的なもの、それだけで現状を一新するような創造いはなかなか繋がりません。
自分の面白いと思うものが必ず売れるとは限らない、でも時代を切り開くような冒険をするためにも、立ち返るべきところはそこです。

そういうことを踏まえた上で、最後に現実的なコンサルタントの仁五郎が「ゲームは愛で出来てる」のだから、深いものがあります。

今巻で開発が問題になるゲームは『艦隊これくしょん』(略称『艦これ』)を連想させるもので、作者のあとがきで「今回は決まったモデルはいません」と言いつつ、現実の時系列における作者(あるいは鈴木みそ吉)の電子書籍化と『艦これ』リリースの時系列的な並びを説明するなど、ほとんど現実と作中の出来事が一体となった解説を展開しており、連想を推奨していることは確かです。

確かに全体としては厳しい業界。しかし突然に予想外のヒットが出るのも事実であって、だからご都合主義なような話が不思議と現実味を感じさせます。
体験とルポに基づく虚実を織り交ぜた内容も、そんな世界を描くのに奏功しています。

今回も話は1巻に綺麗に区切りが付いて、次巻は再び鈴木みそ吉の電子書籍を巡る話になる模様。また楽しみです。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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