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見えないがゆえに大切なもの――『なにかのご縁 2 ゆかりくん、碧い瞳と縁を追う』

今回取り上げる小説はこちらです。野崎まど氏には珍しくどんでん返しも衝撃の展開もない長編作品であり、さらには同じシリーズタイトルを関した2巻が出るのは初でもあります。

なにかのご縁 (2) ゆかりくん、碧い瞳と縁を追う (メディアワークス文庫)なにかのご縁 (2) ゆかりくん、碧い瞳と縁を追う (メディアワークス文庫)
(2014/09/25)
野崎まど

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 (前巻の記事

本作の主人公は波多野縁(はたの ゆかり)。縁結びの神のような存在である、人語を解する白うさぎと出会い、縁の紐が見えるようになった青年です。
この2巻は新年度の4月から始まります。大学に新入生がやって来て、新たな出会いのある季節です。
そのためゆかり君は、縁が結ばれる可能性のある人たちをストーカーのごとくつけ回して、縁結びの手伝いをすることをうさぎさんに強要されています。そんな彼が出会う様々な人たちの合縁奇縁を描いた全4話の物語。

そして今回は、第1話の最後で、やはり縁結びのうさぎを連れた少年――フランスからの留学生ローランが登場します。
彼が連れているのは、モフモフした長毛うさぎの縁結びユリシーズ

なにかのご縁2巻
 (扉絵より)

何でも彼らはローランの縁結び修行のために日本にやって来たということで、ゆかり君たちに「縁結び勝負」を挑んでくるのですが……

基本は暖かくいい話ですが、中には切らねばならぬ縁、切れることの定まった縁を巡る、いささかの切なさや苦さも含んだ話もあります。
縁を見る能力に関しては実はまだまだのローランですが、常に他者の縁のためを思って行動し、縁結びのためにひたむきに駆け回っており、それが事態を動かすのも実に良い話になっています。
泣かせる演出もあり、「いい話」としての完成度は高いと言っていいでしょう。

そして今巻の特色として、人間以外の縁も登場する、それどころかむしろそれがメインになっているということがあります。
前巻でも「死者の縁」というものは登場していましたが、今回はさらに元々人間以外のもの、人格のないもの、さらには形のないものを結ぶ縁ですら登場します。
とりわけ形のないものを結ぶ縁は難しく、ゆかりたちにも見えません。
しかし見えないものであればこそ、それはいっそう精妙で、重く、人の一生を左右します(そもそも縁自体がそうですが)。

他方で今回、縁が結ばれたり切れたりすることと、人の行動のような目に見える現象との繋がりは割と見えやすくなっている印象もありました。
1巻で最初に、当人たちが好きであるといった気持ちと縁は別物であると明言されており、だから縁が結ばれたからといって恋人になれるかというとそうではない、という設定でした。
太い縁で結ばれているからといって、遠方に帰る友達と離ればなれにならずにられるわけでもありませんでした(縁があるなら、遠くに行っても付き合いの続く可能性が高そうではありますが)。

今回も縁の結ばれた人たちのその後が描かれないという点で、そういう漠然とした部分は残ってはいるのですが、他方で――縁と気持ちとは別物とはいえ――人の気持ちが縁に影響するとも言われています。
何より、見えないものとの縁に関しては、縁の帰結はかなりはっきりと見える形で描かれています。
まあ見えないものとの縁であればこそ、見える部分で明瞭に描いておかないと何も伝わらない、というのはあるのでしょうが。
お陰で1巻以上に事態はクリアカットになり、「なにかの」ご縁という漠然とした部分は若干引っ込んだかな、という印象はありました。

もっとも、うさぎさんたちと言えど、兆しのえない縁を結んだり強固な縁を切ったりすることはできないのであって、その意味で彼らが「縁」を通して物事を操れるわけではない、なるようにしかならないという点は、変わらないのですが。

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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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