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この世に二人だけ、竜の遺伝子を継ぐ者――『絶滅危惧種の左眼竜王』

そろそろ今年の『このライトノベルがすごい!』投票も締め切り(期日は10月6日)なので、投票する意志のある方はお忘れ無く。

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しかし、コメントは20~30字だと断片的な一言に留まりますね(コメント欄そのものは「200字以内」なのに「20~30文字程度のコメントをご記入ください」とある不思議)。どうせ、それだけの短い一言しか掲載されないから、ということかも知れませんが。

 ~~~

今回取り上げるライトノベルはこちら、第8回HJ文庫大賞銀賞受賞作品です。

絶滅危惧種の左眼竜王<レッドデータ・ドラゴンロード> (HJ文庫)絶滅危惧種の左眼竜王<レッドデータ・ドラゴンロード> (HJ文庫)
(2014/09/29)
千月 さかき

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この手の「漢字にカタカナ語のルビ」をタイトルに使用する場合、たとえば『とある魔術の禁書目録』(「禁書目録」に「インデックス」とルビ)のように、漢字の熟語部分のみにカタカナルビを振ることが多いのですが、本作は「絶滅危惧種の左眼竜王」全体で「レッドデータ・ドラゴンロード」と読みます。

本作の舞台は比較的現実の現代社会に近い世界ですが、ただ竜を初めとする「神獣」と人間の「魔法使い」が存在し、そして魔法使いが神獣を危険視した挙げ句、戦って絶滅させた世界です。
主人公の葛木晴空(かつらぎ はるあき)は、最後の竜であったエリシア=アースドラグの最期を看取り、「竜眼」を貰い受けて「竜眼使い」となった少年です。
そんな晴空のもとに、彼を「兄さま」と呼ぶ少女・竜胆茉莉花(りんどう まつりか)が現れます。彼女は竜エリシアと人間の間に生まれた娘であり、したがってエリシアの眼を宿した晴空とは遺伝子を共有する兄妹である、というのです。
それも竜が絶滅した今となっては、この世に二人だけの同胞――「絶滅危惧種」というタイトルの意味はそういうことです。

しかし、魔法使いは竜を敵視しています。しかも、最近になって竜の爪で魔法使いが殺される事件があったということで、魔法使いの世界のトップである名家から刺客が送られます。
晴空の手にある戦う力は魔力を見ることができる「竜眼」の力に、竜が開発したという魔法破壊の銃「アッシュ」、それに茉莉花の竜の力――

独断的に竜を断罪しようとする魔法使いに対し、身近で大切な人を守るために立ち向かう少年少女の姿勢といい、安心かと思ったところで絶望的な状況に転じ、そこから反撃する展開といい、なかなか熱い作品なのは確かです。
絶滅させられる生物と絶滅させる人間という構図上、魔法使いが全般的に悪いという印象は強いのですが、魔法使いの中にも、晴空の住む魔法使い「特区」を支配する天伎(あまき)家の娘にして晴空の幼馴染である愛菜(あいな)という主人公側の味方がいて、バランスを取っています。

ただ、設定に甘さを感じる箇所は多々あります。
たとえば、晴空の両親は死亡しており、彼は一人暮らしです。しかし、天伎家の庇護があり、(天伎家による魔法関連の依頼を含めた)アルバイトで収入を得ているという記述はありますが、そもそも親権者もいない高校生の一人暮らしとは法的にどうなっているのか。現実とは違う世界、それも「特区」という特別な場所とは言え、現代に近い世界観である以上、この点の説明を全く飛ばすのは不満が残ります。
確かに「両親の死」は晴空の人格形成に影響していることが後に判明する設定ではあるのですが、「突然やって来た女の子を同居させ、危険な事態に駆け回るには両親はいない方が良い」というライトノベルの定番設定を深く詰めずに採用している感は否めません。
それから、晴空のその他の能力はともかく、射撃の腕はどこで身に付けたのか謎です。こういう点は戦闘描写における具体的なイメージの不足にも繋がっていて、「距離をとって撃つ」と言ったって、まず距離を取ること自体が簡単ではない状況ですし、ましてなぜそう易々と遠距離射撃を成功させられるのか――
他にも強力な魔法が放たれたかと思いきや、生身で受けた人間が五体満足で生きていたりと、どうもどのくらいの威力が行使されているのか伝わりにくいところがあります。

ですが、それ以上に気になるのは、登場人物の行動原理です。
晴空がエリシアの眼を受け取って「竜眼使い」となった時のことは冒頭で描かれますが、そこでなぜ彼がそんなに強く「魔法使いとは別のものになりたい」と切望していたのかは分かりません。それは後半になって説明されます。
主人公に関しても読者に伝えていないことがあって、追い追い分かってくる、という展開自体はいいでしょう。しかし、彼が何やらやけに一所懸命なことだけは分かったものの「なぜそんなに」という疑問を残したまま、宙ぶらりんにされている時期が長い感はあります。
さらに、真相が分かったら分かったで、「なぜその事情でそこまで思い詰めるのか」と思ってしまうのです。

動機は何か、それが分かったら今度はなぜそんな動機を抱くのか……と問い始めると無限後退のようにも思えますが、しかし読者にとって経験のない状況であろうと、読者自身からはかけ離れた特異な人物であろうと、「そんなこともありそうだ」と感じさせるのが、人格性を描く作家の手腕というものでしょう。その点、本作はいかにも荒削りです。
竜眼を求めた件にしても、茉莉花を「妹」として受け入れるのを躊躇うことにしても、晴空は常にひどく思い詰めている節がありますが、なぜそうも思い詰めねばならないのか、と思ってしまうのです。
もちろん、主人公の視野の狭さを周囲が諭すという場面も定番の一つですし、本作もそうなります。
ただ、視野が狭いくらいに突っ走る主人公の勢いが物語を引っ張ってくれる、という面もあるわけです。

ここは「主人公の一目散な突っ走りを信じて引っ張って貰えばいい」のか、ちょっと距離を取って「他の可能性もあるんじゃないの?」と思って見るべきなのか――それは場面によって使い分けるべきものですが、本作の語りは全体に、(主人公の視野の狭さを他者が指摘する場面においてさえ)後者の余裕が足りません。

そしてこれは、お色気サービスシーンにも影響しているように思われます。
本作にもライトノベルの標準並みのお色気シーンはあります。たとえば、裸にシャツ一枚でふらふらになった茉莉花が「兄さまが二回もするからです……茉莉花、はじめてなのに」という誤解を招く台詞を口にするとか。
ただ、そうした場面を見ても、晴空は茉莉花の行動や言動にツッコミこそ入れていますが、男の子として意識してどぎまぎしたりする描写はほとんど見当たりません。
まあ、このこと自体は本作に限ったことではなく、文章に艶を出すよりもエロはイラスト依存、というのはライトノベルではむしろ一般的なことです。『鮎原夜波はよく濡れる』のように、戦闘シーンでさえエロス描写の方に力が集中しているというのも疑問がありますし。

それ自体はいいのですが――本作の場合、カラー口絵には茉莉花がスカート姿でパンツを見せてハイキックを繰り出している絵と、上述の裸シャツの絵がありますが、本文イラストでそういうエロスのあるものはほとんど最後だけです。
しかも本文中にハイキックにはっきり該当する場面は見当たりません。これはイラストレーターのスタンドプレーか、と言うと、必ずしもそうではなさそうです。
茉莉花がスカート姿で、しかも戦闘では肉弾戦主体で飛んだり跳ねたりしているのは文中に書かれていることですから、下着が見えること自体はおかしくないのです。ただ、シリアスな場面でイラストがパンツ丸見え等となると気勢を削がれるので、エロに偏した絵はカラー口絵に纏めたのではありますまいか。
しかし、裏を返すとそれは、戦いの合間の平和なシーンでさえ、イラストをエロの方に寄せる程の余裕がないせいではないか、という気もするのです。

妙な話に字数を費やしましたが、お色気を堪能するためにも、話運びには緩急が必要なのです。

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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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