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イメージし難きを支配する――『人生 第9章』

パソコンが上手くログオフ再起動できず、電源を抜くことに……
WindowsXPのサービス終了により買い換えたパソコンですが、前のパソコンよりも不具合の発生率は上がっている気がしてなりません。
最近は付属のゲームをやってしまう比率が下がるくらいに疲れっぱなしなので、これを機にパソコンから離れよう……と思っても論文執筆などには不可欠なわけで。いざという時に上手く立ち上がらないのが一番困りますね。

 ~~~

さて、今回取り上げるライトノベルはこちら、アニメ化もされ、同作者の前作にしてデビュー作『邪神大沼』シリーズを超える9巻の刊行となった『人生』です。

人生 第9章 (ガガガ文庫)人生 第9章 (ガガガ文庫)
(2014/10/17)
川岸 殴魚

商品詳細を見る

 (前巻の記事

前巻から新年度に入り、主人公の赤松たちは2年生になりました。
今回は新年度の部活予算を巡り、またも生徒会長・白河香織との対決となります。
もちろん、御用新聞である第一新聞部と露骨に癒着し、第二新聞部を敵視している香織のこと、このままでは第二新聞部の予算大幅削減となるのは間違いありません。

対抗策を探し、同盟相手としてネガティブキングの矢野君のもとを訪ねたところ、「態度術」を習得するためマスター有馬なる人物に会うことを勧められます。
この「態度術」とは、態度によって場の空気や人の感情を操る技術であり、香織は相手を屈服させる「ものすごく偉そうな態度」をものにしている、とのこと。
紆余曲折の末、赤松はマスター有馬から究極の態度「海賊王(キング・オブ・パイレーツ)を伝授されることになり、しかもその最後のカギとして女の子とキスすることに……

色々と強引と言うか訳が分からないのは言わずもがな、今回も突然温泉に入ることになった挙げ句、強引にボイラーマンからボイラーの修理を託され、「赤と青のコード、どちらかを抜くんだ」という爆弾解体ネタになるなど、「なぜそうなる」という部分も含めてのギャグですから。
それでいて一応にもストーリーは繋がって生徒会長との対決で一矢報いて綺麗に締める辺り、大したものと言う他はありません。態度術による対決はある種な異能バトルのよう(ただ態度を取っているだけなのに)ですが、これも『邪神大沼』で主人公が鼻を触る技を習得して戦う話を描いた作者のことですから驚くほどではありません。

ただ今回は、とりわけ具体的なイメージを抱くことがほとんど不可能なネタが目立った気はします。
たとえば態度術の描写ですが――

 そのときだった、矢野君の態度が一変する。
 言葉では表現しづらいが、なんだかいけ好かない感じなのに、それでも口答えなどしてはいけないような、実態はよくわからないけど、なんだかすごい人っぽい態度。不思議と自分の劣等感を刺激されている気分になる。
「これが、僕が身につけた態度術“洋楽に詳しげな男(ロッキング・オン・マニア)”の態度さ」
 なるほど……たしかに僕の受けた印象は洋楽に詳しい人に一方的に洋楽の話をされたときのそれに似ている。よくわからないけど、なんだか負けてる気分だ。
 (川岸殴魚『人生 第九章』、小学館、2014、p.49)


会話などで具体的に態度が表現されたのは一箇所くらいで、他はほとんどこの調子、イメージするのは困難です。

あるいは、皆がカチューシャを作る場面がありますが――

 たしかに梨乃の作っているカチューシャはお世辞にもかわいくない。
 造花とふわふわのフリルとリボンで構成されているはずなのに、なんだか印象が硬いのだ。不思議なことにヘッドホンの一部にすら見える。
 (同書、p.73)


イラストだと「造花とふわふわのフリルとリボンで構成されて」はおらず、本当に硬い材質のヘッドホンになっていますが、今回ばかりはイラストレーターを責めるのも酷かも知れません。

人生9巻 梨乃
 (同書、カラー口絵)

もっとも、作者が定型句を異なる文脈に放り込むというテキスト依存のギャグを得意としていることを考えると、これも驚くには当たらない事態かも知れませんが。

主人公の赤松は、(2巻以来)再び女湯を覗こうとしたり、乗せられるまま女の子にキスしようとするも正面からは言えずせこいことを考えて失敗したりと、今までにもまして駄目な方向で男の子らしいところを発揮していますが、しかし彼の司会としての才能に目を付けた有馬は正しかったのでしょう。
名司会者というのは地味に見えて、場の空気を支配しているものですから。

前巻で新加入のアリーナは、相談に参加したりしなかったり。
ある種キャラは立っているもの、相談回答を初めとするネタの方向性としては、しばしばモルドバネタを挟む他はそこまで留学生らしく日本の常識から外れたところを見せるわけでもなし、彼女ならではの方向性は今ひとつ見えにくい印象です。
皆可愛いところを見せつつ、梨乃とのラブコメにも進展があって、そこも良かったですね。


以下余談になりますが、話には誤解が付き物で、意図したのと違う「教訓」が伝わってしまうこともあります。
たとえば「勉強の大切さ」を伝えるつもりが、事例を挙げ情理に訴えて説得するとかえって相手は「やっぱ勉強ばっかりしてたらダメだよな」と思ってしまったり。
本作の人生相談において、各相談員の回答が周りを思い通りに説得できず、話があらぬ方向に向かってしまうのも、そういう局面をギャグとして活かしています。

ただ、自分の価値観を信じて疑わない相談員たちの中で、文系のふみは必ずしも「文系のやり方が素晴らしい」と主張するわけではなく、相互理解を進め、相談者自身を活かせる回答をしようとしています。
しかし、そんなふみの長い喩え話があらぬ方向に向かった挙げ句、「それじゃダメじゃないか?」という本来の意図とは真逆の教訓を与えてしまうことがあるのが、面白いところ。
一つの話から汲み取れる教訓が一つとは限らないという多義性は、ある意味文系らしいのかも知れません。

そう言えば、今回はふみの長い妄想話が控え目でしたね……しかも途中で路線変更してますし。

 ~~~

ついでに、今月のガガガ文庫折り込み広告「ガ報」には色々と衝撃的なニュースがありました。

ガ報2014年10月
 (クリックで画像拡大されます)

平坂読、さがら総、三屋咲ゆうとMF文庫Jの作家が大量移籍(複数のレーベルで同時刊行というのはごく一般的なことなので、「移籍」という表現は適切ではありませんが、この事態はそう表現しtみたくもなります)、それに『下ネタという概念が存在しない退屈な世界』のアニメ化……
あの下ネタの嵐で放送コードにどう対処するつもりなのでしょうか。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
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