スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

歴史小説の文法

昨日はまた食事会(あるいは飲み会)でした。
私はそれほど喋るわけでも、アルコールを飲むわけでもないのに、直前に「まだ余裕があります。一人でも多く参加を」と言われるとついつい参加してしまうことが多いですね。
最近は交通費と宴会費が最大の出費になっている気がするので、そろそろ考えねばならないかも知れません。

そんな中、フランス語では subculture と言うとネガティブなイメージなので、culture populaire (ポピュラー文化)の方がいいという指摘を受けました。
しかし、日本語において大衆文学(littérature populaire)はサブカルチャーではないような気がします。

結論: Otaku-culture の代替語はない、ということで。

 ~~~

ところで今更な話ですが、読書メーターなどで他人の『村上海賊の娘』についての感想を見ていて気になったのが、「歴史資料を引用しての解説が多くて取っつきにくい」旨の感想の目立つことでした。
現代の作者の視点から歴史資料を引用しての解説は、歴史小説では割とよくある手法です。司馬遼太郎なんかもっと脱線することもありますよ。
当今、歴史小説というのは(数少ない)人気あるジャンルだと思っていましたが、その歴史小説の手法が馴染まぬ読者が多いとは……?

まあ、馴染まぬ要素があっても「それでも」歴史小説には人気がある理由も同時に存在する、ということも考えられます。
あるいは、手法そのものが馴染まないのではなく、『村上海賊の娘』はかなり詳細に資料を挙げ、原文(当然ながら古文です)そのままの引用が多いのが、エンターテインメントとして軽く楽しめる人物や物語の割に読者の労力を要求するのが問題だったのかも知れません。

『村上海賊の娘』において何が問題だったのかはさておいて、少なくとも、「作者が出てきて作中人物の知らないことを解説する」のは、作品によっては徹底して避けられる手法です。
(だからと言って、本田透氏のようにそれを「タブー」だと思っているのも極端な認識だとは思いますが……)
ただ歴史小説は、基本的に現代語で書かれてはいるものの、時には現代では馴染みのない用語も出てきますし、そもそも後世の視点でなければ知りようもないこともあり得ます。そこを現代の視点から解説するのは、有用であり必要なこともあるでしょう。
それがないと、またそれはそれで面倒なことになるのです。

たとえば歴史小説ではないものの、ライトノベル『マグダラで眠れ』には亜鉛の精錬を行う場面が出てきます。
しかし、亜鉛の精錬法は古代には存在したらしく、その合金である真鍮も作られていましたが、中世には存在しませんでした。
そこで、あとがきにこんな記述があるのです。

 ただ、困ったのは現代の知識をあまり使えないこと。作中で蒸留されている例の金属も、本当は酸化物なのですが、文章上では純粋なもののように記述しています。彼らの知識では知りようもないはずだからです。(……)
 (支倉凍砂『マグダラで眠れ』、アスキー・メディワークス、2012、pp.320-321)


徹底して作中人物の視点にないことは書かず、さりとて読者に不正確な知識を伝えてそのままにしておくのも何なのであとがきで但し書きをした、という印象です。
これはこれで、かなり特殊な形のように思うのですが。

ファンタジーを描くなら、現代人の視点から描ける異世界召還の類が流行るのも、こういう表現の文法的な問題がもしかしたら一因にあるのかも知れません。

ちなみに、『マグダラで眠れ』は、科学史についてはかなり現実のことを精緻に押さえているものの、政治史に関しては少なからず現実と相違がある模様(獣耳というファンタジー要素はまた別にしても、です)。
ただ、その相違がストーリーに影響しているかと言うとそうでもないという独特のバランスで、これもよくあることではないように思いますが、それはまた別の話としておきましょう。


マグダラで眠れ (電撃文庫)マグダラで眠れ (電撃文庫)
(2012/07/10)
支倉 凍砂

商品詳細を見る

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 大学生活 - ジャンル : 学校・教育

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。