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ゴリラの名はゴリラ・ゴリラ

月刊『たくさんのふしぎ』と言えば、小学校時代に教室の本棚に置いてあったことを思い出します。
以来、ハードカバーの「たくさんのふしぎ傑作集」はともかく、月刊誌としての『たくさんのふしぎ』を手にした覚えはなかったのですが……最近、大学生協の特設コーナーに『木のぼりゴリラ』(たくさんのふしぎ2014年10月号)も置かれており(著者の山極氏が京大の総長になったからでしょう)、内容もなかなか面白そうだったので、読んでみました。

木のぼりゴリラ (たくさんのふしぎ2014年10月号)木のぼりゴリラ (たくさんのふしぎ2014年10月号)
(2014/09/03)
山極 寿一

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傑作集入りしても収録されない雑誌的要素である巻末の「ふしぎ新聞」等も20年前からまるで変わっていなくて、少し感動します。

ふしぎ新聞

さて、内容は野生のゴリラの研究。
冒頭からいきなり重要な話が出てくるのですが、世界中の動物園にいるのはほとんどがアフリカ大陸西部に住むニシゴリラであるのに、野生での暮らしが観察されているのはこれまでほとんど大陸東部のヒガシゴリラだった、というのです。
そして最近のDNA解析の結果によれば、ニシゴリラとヒガシゴリラは175万年前に分かれた別種だとか。
175万年前というと、人類の祖先は原人の時代です。2種のゴリラは現生人類とネアンデルタール人以上に隔たっていることになります。
動物園で見るゴリラと、TVの野生動物ドキュメンタリー番組などで目にするゴリラは別物だということです。

かつて、ゴリラの分け方と言えばマウンテンゴリラとローランドゴリラという分け方が一般的でした。
しかし、本誌巻末のより詳しい説明によると、ヒガシゴリラの内にマウンテンゴリラとヒガシローランドゴリラがおり、ニシゴリラはクロスリバーゴリラとニシローランドゴリラに分けられる、つまり「ローランドゴリラ」として括られていたものは単一ではなかったということです。

本誌で扱われているのはニシローランドゴリラです。
様々な点でヒガシゴリラとは違うことが判明するその生態。
最大の特徴はタイトルにもある「木登る」ことかと思われます。大人のゴリラは身体が大きいのであまり木に登らない、という常識はニシゴリラには当てはまりませんでした。

中でも、大人のオスゴリラが木の枝の上で立ち上がりドラミング(手で胸を叩いて音を出す行為)をする場面は最高のインパクトがありました。

小さいけれども引っ掛かったこととして、「ゴリラのオスの胸には大きな袋が発達していて、息を吸ってふくらませ、手のひらでたたくと高く澄んだ音がします」(p.17)という箇所があります。
しかし、ゴリラの胸の気嚢は息を吐く際に空気が吹き込まれる構造になっていたと記憶しているのですが。4ページ後のゴリラのドラミング直前の動作も「口をすぼめてフーフーといった」とあります。
まあ、こういうことも的確に説明するのは存外難しいことなのかも知れませんが。

 ―――

雑誌の内容からは少し離れますが、今回の記事のタイトルは分かる人には分かるでしょう、ゴリラの学名が「ゴリラ・ゴリラ(Gorilla gorilla)」であることを指しています。
しかし、ゴリラが2種類いたとなると、ここにも変化が生じるはずです。
学名は「属名・種名」の順で表記するので、

 属名  種名
 Gorilla gorilla

一属なのは変わらないとして、一方に関しては、種名である2つ目の「ゴリラ」を変えねばなりません。
当然、子供向けの『たくさんのふしぎ』ではそこまでは言及されていないので調べてみると、この二種説を採った場合、ニシゴリラに関して Gorilla gorilla が温存され、ヒガシゴリラは Gorilla beringei になるとのこと。ニシゴリラの方が先に発見されたので優先されるのだと思われます。だから動物園にいるゴリラの名は変わりません。

ちなみに、最近の研究ではオランウータンも二種類いるとのこと。

類人猿分類
 (金森朝子『野生のオランウータンを追いかけて』、東海大学出版会、2013、p.19)

ただ、この『野生のオランウータンを追いかけて』の本文の方を読むと、「オランウータン属、チンパンジー属、ゴリラ属を含む三属六種の大型類人猿」(p.18)とあって、系統図の方では「大型類人猿」はヒト属を含む四属あるのと食い違っており、よく分からないのですが。
あくまでヒト属を除いて「三属六種」だというのなら、こちらでもゴリラ二種説が採用されているのだと推察できますが(オランウータン二種、ゴリラ二種、チンパンジー属もチンパンジーとボノボの二種)。

なお、この系統分類図は進化の系統が分かれた順に分岐しています。
もっともこれを徹底すると、『自然を名づける―なぜ生物分類では直感と科学が衝突するのか』に述べられているような常識外れの帰結も生じるのですが。

 ―――

山極寿一氏はゴリラについて色々と研究書・図鑑などを出している学者です。
より詳しく知りたければこれらの研究書を読むべきなのでしょう。

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↓アナロジーで人間を論じるのは、私はあまり好きではありませんが。
サル学者はことさらにサルと人間の近さを信じる傾向がありますが、いくら外見も系統も近くても、決定的に違う点はあり得るのです。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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