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想い出と追憶の物語――『明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。 ~Sunrise & Sunset Story~』



今回取り上げるライトノベルはこちら。
昨年、全3巻で完結した『明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。』、1年ぶりに復活のエピソード集です。

明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。 ~Sunrise & Sunset Story~ (電撃文庫)明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。 ~Sunrise & Sunset Story~ (電撃文庫)
(2014/11/08)
藤まる

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 (前巻の記事

内容は全5話の短編集。
時系列的には、CUT1~3は本編中、秋月と光の二心同体生活が続いていた時期の話、CUT4はもっと昔から本編の裏を経てエピローグ後まで縦断しており、CUT5が本編以降の話――まさしく付加的なエピローグとなります。

「CUT1 雪瑚、おにいさまのトクベツを探す。」は『電撃文庫MAGAZINE』Vol.32に掲載された短編(実は、電子書籍版だと単行本3巻に収録されていますが……最近の電撃文庫は結構こういうことをしているようで、しかもその時点ではこのような短編集が出る予定はなかったので、こうなったのでしょう)。
雑誌掲載短編なので、冒頭に秋月のモノローグによる設定説明が入って、最後はまた秋月視点で締めますが、大部分は秋月の妹である雪瑚視点のエピソードです。
独特の「~なのです」口調と、ツンデレながらも兄が大好きなのはモノローグでも変わらず。
と同時に、秋月に見えないところで光が何をしていたか、普段とは違う形で見えるエピソードでもありました。

「CUT2 バレンタインデー、キミはキューピッドになる。」はタイトル通り、二心同体生活が始まって2ヶ月経つ頃のバレンタインデーのエピソード。
例によって(主として光のせいで)修羅場になりドタバタするのですが……
合間に夢前光のツイッターつぶやきが入るのもポイント。
あくまで決して光とは会えない秋月視点で描かれ、読者に対しても光は交換日記の文章でしか登場しないというのがポイントの本作ですが、伝聞と推測から分かるのに留まらない光の行動や心情を知りたいと思うのも人情。
そこを番外編ならではということで、しかも出し過ぎにならないくらいの塩梅で見えてくれます。

「CUT3 明日、セクシードリームは滅びる。ヒーローは蘇る。」は3巻途中、同じ二心同体コンビの千秋&隼人に出会い、秋月と光のどちらかが消えなければいけないリミットがはっきりして以降の時期のエピソードです。
とは言え、それにまつわる悲壮感は控え目。家出して坂本家にやって来た、秋月の従妹(小学生)の瑠奈(るな)を巡って、相変わらず光がバカ騒ぎを引き起こすエピソードです。
3巻は千秋&隼人のエピソード以降、少し駆け足に終幕に向かった感があったので、この描写が端折られた時期を埋める話としてもちょうどいいでしょう。この生活の終局を前にした時期でも相変わらずこんな日々を送っていたのだと思うと、また表面に見える楽しさや暖かさとは別種の感慨もあります。

「CUT4 明日、俺は死ぬ。君は生き返る。」は、3巻で登場したもう一組の二心同体コンビ、千秋と隼人の物語が千秋視点で綴られます。
幼少時の二人の関係から、隼人の死による二心同体生活の始まり、秋月たちとの出会いを経て、その後まで。
彼女は車椅子の生活という身体的ハンデを抱えており、しかも隼人とは長い付き合いで、秋月の場合とは違う形で思うところがあったのは想像に難くありません。そんな彼女の、身体的ハンデゆえに当たり散らしたり逃げたりもする部分も含めた等身大の屈折した感情、それに隼人や秋月への想いが丁寧に、ありありと描かれています。
こういうところを形式化しすぎずきちんと描けるところに手腕を感じます。

最後の「CUT5 クリスマス、雪瑚はサンタになる。キミは生き返る。」は、ニコニコチャンネルの電撃文庫チャンネルで期間限定配信された短編。
光がいなくなり、秋月が大学生になって最初のクリスマス。
ふたたび雪瑚が語り手となり、(彼女はそうとは知らないものの)光の遺言に従って皆を集め、クリスマスパーティを開催します。
本編が死者にいわばロスタイムを与えての「死の準備」の物語だったとすれば、その後日譚となるこれは追憶の物語
死者は、想い出の中で蘇ります。

もっとも、生者が死者を記憶して語ることは、死者をいいように歪めてしまうおそれもあるのですが、夢前光という少女の場合、その心配も無用でしょう。かくもハチャメチャで、、周りを振り回してくれた少女の強烈な存在感の前でそうそう自分の恣意を振るえるはずがないと、ここまで読んできた読者ならば自然に思えることでしょう。

かくして、光のいた楽しき日々の物語は、その後の顛末を知る読者の前に提示される時、おのずから死者を想うよう導き、それを受ける追憶の物語は、それまでに描かれた彼女のいた時のエピソードによって確かな強度を得ます。

そして、雪瑚は実に見事な狂言回しとなりました。
あとがきで再三語られているように、初期設定だと彼女は存在しなかったとのことですが、その場合どうなっていたことやら
中学生にして小説家として活躍してお金を稼いでおり(光がオタクグッズ等を衝動買いして浪費しても秋月が両親に言い訳する必要がないのはこのお陰)、やたらとストーキング能力に長けていて知りたいことを調べてくれたりと、何かと便利に使われていた彼女ですが、同時に、二心同体のことは知らないながら最も間近で光のことを見ていた人間でもあります。

 夢前光が俺の体に宿ってから、俺はずっと自分こそが一番夢前光の近くにいると想っていた。でも、俺達は背中合わせ。言葉を交わしたことも、触れ合ったこともない。だけど、そうじゃない奴がいた。
 一日置きに夢前光と顔を合わせ、一日置きにあいつの声を聞き、一日置きに触れあって。
 夢前光がいなくなるまで、ずっと側で支え続けたのは――。
「雪瑚が、実は一番夢前光の近くにいてくれたんだよな」
 (藤まる『明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。 ~Sunrise & Sunset Story~』、KADOKAWA、2014、p.230)


死者を偲ぶにも、死者の想い出を共有し、しかも自分の見えないところを見ていた生ける他者が、必要なのでしょう。

短編集で、秋月以外の視点が結構多いこともあり、主人公から見えないところで起きていることが効いてくる本編の味わいはやや控え目。
ただ、死者を巡る感傷が非常に見事に集束しており、本編の感動の後の+αに相応しいものだったと思います。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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