スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

癒しと鎮魂――『天間荘の三姉妹 スカイハイ 4』

疲れと頭痛が酷くて何も進みません。
若干風邪気味なのかも知れません。

 ~~~

この漫画、いつか取り上げようとおもっている内に全4巻で完結して、それからさらに一月ほど経ってしまいました。
高橋ツトム氏の『天間荘の三姉妹』です。

天間荘の三姉妹 スカイハイ 4 (ヤングジャンプコミックス)天間荘の三姉妹 スカイハイ 4 (ヤングジャンプコミックス)
(2014/10/17)
高橋 ツトム

商品詳細を見る

1巻は、単独記事こそ書かなかったものの「2014年6月の読書メーター」の記事である程度まで紹介したのですが、その後放置していたので、2巻まで遡らねばなりますまい。

天間荘の三姉妹 スカイハイ 2 (ヤングジャンプコミックス)天間荘の三姉妹 スカイハイ 2 (ヤングジャンプコミックス)
(2014/07/18)
高橋 ツトム

商品詳細を見る

天間荘の三姉妹 スカイハイ 3 (ヤングジャンプコミックス)天間荘の三姉妹 スカイハイ 3 (ヤングジャンプコミックス)
(2014/09/19)
高橋 ツトム

商品詳細を見る

元々の『スカイハイ』は死者の霊が「転生して生まれ変わる」「現世を漂う」「この世の人間を一人呪い殺す」という三択を選ぶ話で、しかも最初のエピソードが「呪い殺す」だったりしたこともあり、ホラーの印象も強いのですが、それだけではなく、死者の「心残り」に焦点を当てることで怨みに限らず様々な感情を描いたドラマ、というのが適切なように思われます。
この『天間荘の三姉妹』、1巻は暖かいホームドラマの感でしたが、それだけでは終わりません。
「三姉妹」に話を絞っても、旅館を切り盛りする長女・のぞみと次女・かなえは両親を同じくしていますが、「逗留客」としてやって来た三女のたまえは腹違いの娘で天間荘のメンバーとは初対面。のぞみとかなえの母(大女将)とたまえは血の繋がりのない他人同士で、三姉妹の父親(ろくでなし)は行方不明です。
しかも姉二人と大女将は死者なのに対し、たまえは臨死状態で、まだ生きるべき未来があります。不穏なものを感じざるを得ません。

さて、2巻の「逗留客」はギャル2人

天間荘の三姉妹2巻1
 (高橋ツトム『天間荘の三姉妹 2』、集英社、2014、p. 10)

天間荘の三姉妹2巻2
 (同書、p. 15)

今時のギャルらしいノリで、女将ののぞみを悩ませる二人ですが、そもそも天間にやってくる客は現世で臨死状態になった人間のみ。2人一緒であることにはどうも裏があるようで……そう、学校での人間関係に苦しんでいた彼女、優那(ゆうな)(金髪の方)の心に関する背景が……

本来の身分は逗留客でありながら、天間荘の手伝いをしているたまえは優那と仲良くなりますが、他方で水族館でイルカ調教師をしている海咲(みさき)に憧れ、調教師の見習いも始めます。

天間荘の三姉妹2巻3

天間荘の三姉妹2巻4
 (同書、pp. 86-87)

しかし遅かれ早かれ、彼女は道を選ばねばなりません――現世に戻るか、死んであの世に行くか。
天間荘のある三ツ瀬の街でのこうした体験は、彼女の選択にいかなる影響を及ぼすのか、そしてそれは優那にどう影響するのか……

当初は行きずりの逗留客の一人かと見えた優那が、ラストまで単行本3巻に渡ってずっと関わってくるとは思いませんでした。

ですが、何より重要なのは、この2巻で三ツ瀬の街が天空と地上の狭間に存在している、その理由が明かされることです。
三ツ瀬の街に暮らしているのは全て死者です。天間荘で働いている面々は自分が死んでいることを知っているのに対し、街の人たちはそのことを知りませんが、死者であることに変わりはありません。

それは彼ら彼女らが、あの時に死んだから――

天間荘の三姉妹2巻5
 (同書、pp. 130-131)

そう、2011年3月11日の震災、その際の津波で。

「不慮の死を遂げた魂」が多すぎて、一度に「怨みの門」で選択を求めるわけにもいかず、イズコは街ごと天空に移すという処置を行ったのでした。
だから街の人たちは、追い追い自分が死んでいることを知らされ、この街から来世へと旅立つ日がやって来ます。

現実の事件をこれだけはっきりと持ち込んでくるのは意外であり、衝撃的でもありましたが、これにより、あの災害の犠牲者に対する鎮魂という物語のテーマはっきりと見えてきたのでした。
ただ、本来「鎮められるべき魂」であるはずの天間の姉妹たちが臨死状態の生者を癒す仕事をしている、そこに本作の逆説的な状況があります。

そして、自分が死んでいることを知った死者は、生者は自分と違って未来があり、帰りを待っている人がいる、と思いがちですが、そうとは限りません。

天間荘の三姉妹3巻1

天間荘の三姉妹3巻2
 (『天間荘の三姉妹 3』、2014、pp. 72-73)

たまえは両親が不在で、優那は友人関係に苦しんで、「自分は求められていない」という想いに苛まれていました。
優那の母親は健在のようなので、それを見ると「親はきっと娘の帰りを待っている」と言いたくなりますが、「自分が必要とされているかどうか」に関する想いは、そういう事実sを外から提示されて癒せるとは限らないものなのでしょう。

けれども最後には、たまえも現世に帰る日がやって来ます。
三ツ瀬の街の死者たちの想い出を現世に持ち帰るために。
死者の心残りを受け取り、現世に伝える――鎮魂としてこれ以上のものはありません。

ぶっきらぼうだけれど要所で核心を衝いたことを言う大女将がまた、いい仕事をしていました。

天間荘の三姉妹4巻1

天間荘の三姉妹4巻2

天間荘の三姉妹4巻3
 (『天間荘の三姉妹 4』、2014、pp. 69-71)

死者は現世で居場所を失っていた生者を癒し、生者は死者の想い出を記憶し伝える――あの大災害の鎮魂を描いた物語、美しい形で見事な完結を見せてくれました。

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 大学生活 - ジャンル : 学校・教育

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。