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少年の地味な歩みと世界の激動、合流の時――『銀煌の騎士勲章 3』

今回取り上げるライトノベルはこちら、といっても復刊作品ですが。

銀煌の騎士勲章3 (一迅社文庫)銀煌の騎士勲章3 (一迅社文庫)
(2014/11/20)
川口 士

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 (1~2巻の記事

本作は「聖獣」を駆る騎士たちが魔物の侵略と戦っている「帝国」を舞台に、騎士を目指す田舎出身の少年カイン=パルスを主人公とした物語……なのですが、カインは結局、色々あって最初の騎士登用試験では騎士になれなかったものの、特別に皇女ファリアの従衛(スッラ)に取り立てられます。
通常、従衛は騎士の中から取り立てられるので、大出世には違いありません。ただ、聖獣を召喚する「騎士勲章(ライタークロイス)」は(あくまで騎士にのみ与えられるものなので)与えられず、戦力としてはあくまで槍一本が武器の兵卒です。

さて、前巻で皇女ファリアが隣国インフェリア王国に使節として赴き、カインたちも同行することになりました。
道中で魔物と同化した男と遭遇して戦ったりしていましたが、今巻ではついにインフェリアの王都ヴェルギルに到着します。

前半は(お忍びのファリアについて)街を観光したりと、のんびりしたムードで話は展開します。
ところが、思いがけずインフェリアの十二将(マレブランケ)の一人・アリキーノと再会。彼こそ、「騎士勲章」の調査と入手のために帝国に潜入して、騎士登用試験でカインを含む受験者に不正をもちかけていた男でした。だからこそ、知った顔であるカインたちを見て、王宮でも姿を現さなかったのですが……

他方で魔物に関しても、カインとは直接接点のないところでではありますが、前巻の最後で魔物との戦いにおける戦死者700名という未曾有の事態が発生したと語られたばかり。その理由――新種の魔物の出現――については今巻で詳しく語られます。
案の定というべきか、インフェリア王都を新種の魔物3体が襲撃、かくてついに主人公の(比較的地味な)動きと、歴史を動かしかねない魔物の動きが合流する形になりました。
ずっと東の海から現れる魔物を帝国が迎え撃っており、他の諸国は帝国の西にあるので、他国を魔物が襲撃するなど、かつてなかったことです。
インフェリア王都にいる「騎士勲章」を持つ帝国騎士は、ファリアの従衛クローディア(カインたちの上司)のみ。
槍の技一つを武器に、周囲のアシストもある中でカインがどこまで活躍できるか、乞うご期待――

今回はカインにとって、思いがけず功を挙げる機会となったと同時に、1巻で戦い勝てなかった相手であるアリキーノから託されたものを受け取って、改めて自分の目指す騎士像を考え、固める機会でもありました。
ただ考えてみると、カインの「成長」という要素は、3巻やってきてここでようやく少し出てきたくらい、というのも事実なのです。
精神面ではカインは真面目な少年で、その分あからさまに未熟なところを克服するといった要素はあまり前面に出てきません。他方で田舎の少年が王侯貴族の視点を理解したり、大局を見たりできるようになるには、まだまだかかりそうです。
力の面でも、騎士になれなかったので、今のところ新たな力を得たりはしていません。

むしろ印象的なのは、一足先に騎士になったアヴァルだったりします。
彼は昔からカインを一方的にライバル視してつっかかってきていた小物として描かれていますが、騎士となって以降はカインと直接の接点はないものの、騎士の活動を描くためにちょくちょく登場しています。
彼と小隊を組む仲間はオネエ口調の男オルドリッチに、長身だけど控え目なネルとさばさばしたラウニーという二人の女性騎士と、明らかにこっちの方が漫画的にキャラの立っているメンバー
しかも、身の程を理解せず功を焦ったりしていたアヴァルが少しは自覚を持つようになるという成長の要素も描かれます。

主人公周りは「運と実力と仲間とに恵まれてのステップアップ、敵わなかったライバルから託されたものと極めて王道ながら地味」、他方で主人公となかなか接点のない人物に頁数を割いて世界観を描いていく、というある種悠長な作りが、本作の長所でもあり短所でもあるのかも知れません。

作者の川口士氏は食事や風土の描写に力を入れる作家で、それは本作でも変わりません。今回は主人公が新たに足を踏み入れるインフェリアの様子が丁寧に描かれます。
また、『変人皇帝列伝』といった作中の書物を通して固有の歴史を持った世界を読者に伝える手腕も見事なものです。
ただ、帝国の帝都に上京するのでさえ初めての主人公ですから、彼の目に映るものを描くのに集中するだけでも相当に鮮やかな世界の拡がりが描かれたのではないでしょうか。騎士の活動とか、主人公の目に見えないことは機を改めて描くという手もあったように思われます。
そこで他の視点をも積極的に使って広く世界を描いていくという姿勢は、確かに世界観への力の注ぎ方という点では買いですが、主人公周りの地味さが際立ってしまうという懸念もなきにしもあらず。

実際、作者の近作は、少なくとも序盤はもっと主人公周りに集中して、それでもきっちり風土や社会構造のレベルできちんと世界観を伝えているように思えるのです。

とは言え、楽しみな内容には違いありません。
魔物に関しては未だ多くが不明ですが、聖獣と魔物の関係が示唆された感もありました。
同作者が一迅社文庫で刊行中の『千の魔剣と盾の乙女』がまもなく完結という中、次も早めに出ることを期待します。

 ~~~

『魔弾の王と戦姫』のアニメは、割と速めの展開で原作1巻が2話ちょっとに収まるかと思いきや、結局原作1巻に丸3話使いました。
が、4話~6話前半が原作2巻、6話後半~8話冒頭が原作3巻……と徐々に圧縮されていく感じに。やはり第1部完で区切りとなる原作5巻までやるつもりなのでしょう。
合戦については、チェスの駒のようなCGを使って大まかな動きだけを表現しており、アニメーションで兵士たちが戦うシーンは少ない上に画面内に描かれている人物数が限られている(たまに多数の兵が描かれている場面は3DCGなので一見して分かります)辺りが低予算を感じさせる……のはまあ仕方ないとしても、時に結構重要な会話まで省略されているのが悲しい。

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(2014/12/24)
石川界人、戸松遥 他

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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