スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

女一人、その腕で生きることを目指して――『アルテ』

今回はこちらの漫画を取り上げさせていただきます。

アルテ 1 (ゼノンコミックス)アルテ 1 (ゼノンコミックス)
(2014/04/19)
大久保圭

商品詳細を見る

アルテ 2 (ゼノンコミックス)アルテ 2 (ゼノンコミックス)
(2014/11/20)
大久保 圭

商品詳細を見る

イタリア語で「アルテ arte」と言えば英語の art 、つまり芸術あるいは技術のことですが、本作のタイトルはあくまで主人公の少女の名前です。
本作の舞台はルネサンス時代(16世紀初頭)のフィレンツェ、主人公のアルテは貴族の娘ですが、嗜みとして習った絵にのめり込み、画家を目指すようになりました。
とは言え、女性に与えられる教育も仕事も著しく限られていた時代、どこの画家工房も女を受け入れはしません(なおこの時代、画家の教育は工房での徒弟教育でした)。
そんな反応を前に、髪を切って女を捨てることを見せるするアルテ。

アルテ1巻2
 (大久保圭『アルテ 1』、ノース・スターズ・ピクチャーズ、2014、p. 19)

彼女を受け入れることになったのは、無口で無愛想、弟子もいないレオ親方

アルテ1巻3
 (同書、p. 21)

絵が好きだから、と明るく言う彼女ですが、実のところ、「女の幸せは良い男に嫁ぐこと」という母に対する、ひいてはこの社会に対する強い反発と怒りがありました。
もちろん、この「幸せ」というのは経済的・社会的な意味で、です。――ただし、自由は制限されて、ですが。
その怒りをエネルギーに、無理難題も重労働も引き受け、(斜陽ですが)貴族の家を出て職人を目指すアルテ。

アルテ1巻1
 (同書、p. 42)

死体解剖のデッサンなどにも積極的に取り組みます。

アルテ1巻4
 (同書、p. 146)

この時代、画家は基本的に注文に応じて作品を作る「職人」ですが、周知のように、独自の創意工夫を凝らした登場し名を残すようになってきた時代でもあります。
もう少し後、17世紀になればアルテミジア・ジェンティレスキのように実在の女性画家で名を残した人物も出てくるのですが、それよりいささか早い時代というのがポイントでしょう。実在の興味深い人物がいるなら、伝記の方が面白いんじゃなか、という話になりかねませんから。

さて、主人公は若い娘で、親方もそれほどの歳でない男と来れば、当然ながら恋愛要素も出てきます。

アルテ1巻5
 (同書、p. 159)

しかし、「仕事で生きていこうと思ったら、恋にうつつを抜かしている場合じゃない」――この言葉の重みは、女性に厳しいこの時代、今とは比べものになりません。
高級娼婦(コルティジャーナ)ヴェロニカも忠告します。

アルテ1巻8
 (同書、p. 187)

アルテ1巻9
 (同書、p. 189)

これがメロドラマなら、「恋にうつつを抜かしている場合じゃない」は恋愛のために克服すべき障害となるかも知れませんが、ここでは話は逆、アルテはそのために仕事が手に付かなくなることのないよう、恋を克服せねばなりません。
アルテの道は――

それにしても、アルテの友人にしてアドバイス役となるのは高級娼婦です。
いつの時代にも娼婦というのはまさに「自分の力で稼いで生きる女性」であることを考えてみれば、それも自然なのかも知れません。
もちろん、娼婦というのは褒められる仕事ではありません。それはただ体を売るということの問題だけでなく、恋の駆け引きとして人を苦しめたりする面もあるからです。
そうした場面を目にして悩むこともあるアルテですが、結局彼女は、どんな仕事であれその仕事に打ち込み、努力する人への尊敬を惜しみません。
何しろ自分自身が、真剣に腕一つで生きていくことを目指し、そのために努力を惜しまずにいるから。
そんな彼女のまっすぐな姿勢が魅力的です。

アルテ1巻7
 (同書、p. 179)


さて、作者の絵柄は背景の描き込み具合などが森薫氏とよく似てます(人物の顔かたちに関してはそうでもないのですが)。
工房や街の生活感溢れる詳細な描写は見事です。

アルテ1巻6
 (同書、p. 79)

道具類の描写も丁寧で、時代考証などもきちんとしているのですが、ただ絵の技術や工程に関しては、存外あっさりした描写です。
自分が多少関わっていたことのある分野だけに、その点をもっと細かく描いてくれてもいいかな、と思うのですが……

ともあれ、なかなか楽しめて期待したい作品です。
2巻ラストでは偏屈な依頼人との交渉という難題に直面しているアルテですが、さてどうなるでしょうか。


Artemisia GentileschiArtemisia Gentileschi
(2013/10/29)
Linda Savage

商品詳細を見る

西洋絵画の巨匠 モリゾ (西洋絵画の巨匠 6)西洋絵画の巨匠 モリゾ (西洋絵画の巨匠 6)
(2006/07/14)
坂上 桂子

商品詳細を見る

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 大学生活 - ジャンル : 学校・教育

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。