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奥様の家の中での活躍、旦那様はつゆ知らず――『誰かこの状況を説明してください! ~契約から始まるウェディング~』

今回は、過去に触れた記憶のない女の子向け(と思われる)レーベルの小説を取り上げさせていただきます。

誰かこの状況を説明してください! ~契約から始まるウェディング~ (アリアンローズ)誰かこの状況を説明してください! ~契約から始まるウェディング~ (アリアンローズ)
(2013/09/12)
徒然花

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誰かこの状況を説明してください! ~契約から始まるウェディング~ 2 (アリアンローズ)誰かこの状況を説明してください! ~契約から始まるウェディング~ 2 (アリアンローズ)
(2014/04/12)
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誰かこの状況を説明してください! ~契約から始まるウェディング~ 3 (アリアンローズ)誰かこの状況を説明してください! ~契約から始まるウェディング~ 3 (アリアンローズ)
(2014/09/12)
徒然花

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表紙からして少女漫画風ですね。アリアンローズは女性向けで、しかも「小説家になろう」系の Web 作品の書籍化を主としてやっているレーベルのようです。
書籍化も Web での公開は続いているので、まずはそちらで内容を確認することもできます。

本作の舞台は近世ヨーロッパ風の世界(Web 版での作者の解説には「中近世」とありますが、読んだ感じとしては18~19世紀のテイストが強く感じられました。まああまり細かい考証を気にする類の作品ではないのでしょう)。
主人公のヴィオラ貧乏貴族・ユーフォルビア伯爵家の令嬢。飢饉に遭った領民を救済するために莫大な借金を負いながら、両親と弟・妹と5人家族で慎ましく暮らしていました。だから貴族とは言え使用人も数えるほど、社交界にもほとんど縁のない生活を送ってきました。

そんなヴィオラが、ある日突然、王国で一番の大貴族・フィサリス公爵家の若き当主・サーシスからプロポーズされます。
ただし、そこには裏があって……
サーシスには愛人がいるのですが、身分違いで結婚を反対され続けていました。そこで対面を繕うため、ヴィオラと仮面夫婦になり、実質的には愛人との関係を続けたい、というのです。
ヴィオラは家を借金から救うため、「契約」としてフィサリス公爵家への嫁入りを決めます。

とは言え、そこに悲壮感はまったくありません。ヴィオラは他に結婚の当てがあったわけでもなく、失うものもないので、完全に割り切っていますから。

 それに、どうせこれをお断りしたところで借金まみれの地味娘に他に良縁などくるわけがありませんし、私自身「独身でいいかも☆」なんて思っていたくらいですから。これで家が救われるのなら、私の一人や二人、喜んで差し出そうじゃあ~りませんか!
 (徒然花『誰かこの状況を説明してください! ~契約から始まるウェディング~』、フロンティアワークス、2013、p. 14)


さて、「奥様」として公爵家に入ったヴィオラですが、「旦那様」サーシスは離れで愛人と二人暮らしていてほとんど本邸に足を踏み入れず、「奥様」は社交界に出るという仕事もほとんど求められないという生活です。
そこで、豪奢な生活に馴染まないヴィオラは、豪勢な食事を出すのを止めさせて使用人たちと一緒に賄いを食べ、普段は使用人のお仕着せを着て家事や庭いじりに精を出し……と貴族の奥様としては横紙破りな生活を始めます。
不在の旦那様が知らぬ間に、屋敷を模様替えし、旦那様の不在により火が消えたようだった屋敷に生活の火をともしていくヴィオラ。

基本的に登場人物はいい人揃い。
今もサーシスとヴィオラが仮面夫婦であることや、ヴィオラが使用人に混じって働いていることこそ知らぬものの、サーシスが今まで愛人に入れ上げていた行状を知っている周囲はヴィオラに同情的だったりしますが、本人としては同情されるような事柄だと全く思っておらず、内心で「むしろ旦那様いらなくね?」なんて言ってしまっています。
しかし、そんな彼女の働きぶりを知ったサーシスにも心境の変化があるのですが……温度差はそう簡単にはなくなりません。
高価な贈り物をして、セレブな場所に連れて行ってもヴィオラには全く合わず裏目だったり……サーシスも今までの失点を取り戻すべく歩み寄りを図っており、3巻も続く手少しは変化が見られますが、そんな状況なのでまだまだ。だから恋愛色は基本的に薄めです。

本作はやはり、ヴィオラが家で好き勝手に働いているところが一番痛快です。
高貴で贅沢な暮らしよりも貧乏性の身に付いた彼女は逞しく、生活の知恵は高価なものの揃ったお屋敷でも役に立ちますし、模様替えのセンスなどはセレブの義父母にも高く評価されます。

普段離れで暮らしている旦那様が気まぐれを起こして本邸で食事をするなどと言い出すと、家の中は「思いがけぬ仕事が入って大変だ」というムード。ヴィオラと執事のロータス、それに彼女付きの二人の侍女ダリアミモザで至急エンジンを組んで相談していたり、その内に慣れてくると「旦那様シフト入りま~す」の一言で通じるようになったり。
そんな使用人たちの苦労を主人はつゆ知らず……というのは高貴なお方のあり方として正しいのかも知れませんが、ただ本作の場合「奥様」のヴィオラの方はそうではありません。
使用人たちのことをよく把握し、相談の上で家の中のことに関して指揮を振るう彼女は、ある意味で家を切り盛りする「女主人」らしい姿とも言えます(執事は「外」の仕事にも関わっているので、そちらは管轄外ですが)。

インタビューで作者が子持ちらしいことを見て納得しました。確かにこれぞ究極のカッコいい主婦のありようかも知れません。

文章は「☆」が多く、若者言葉の口語調とでも言うべき非常に軽い一人称ですが、外面は一応「公爵夫人」という立場であちつつ内では程遠い、というヴィオラの状況や内容の楽しさによくマッチしています。

 毎日充実の使用人ライフ……もとい、奥様ライフをエンジョイしていたら、あっという間にひと月が経っていました。
 相変わらず疎遠な夫婦ですが、使用人さんたちとはすっかり仲良しになれました! 方向違うだろとか言わないで☆
 (同書、p. 93)


はたまたサーシスの愛人であるカレンデュラが現れた時にも……

 うわ~、何この舌戦! 空気がピリピリしてます!
 なんとカレンデュラ様は私に会いに来たのですか! 大事なことなので二度言いますが、会っても話などありませんよ? てゆーか、これって愛人が本宅に押しかけたってことですよね? いわゆる修羅場ってやつですか? きゃあ! ビバ☆シュラバですよ! あ、ワクワクしているのではありませんよ? あくまでも好奇心です、こ う き し ん!
 (同書、p. 102)


あくまで平和で障害の少ないストーリーなので、ヴィオラが邸内で活躍するシーンが少ないとむしろ物足りなかったりもしますが……恋の行方には、あまり興味が湧かなかったりします。

しかし今や圧倒的な勢いの「なろう」系作品ですが、女性向けだとこうなるのか、というのを見た思いです。
なかなか楽しめました。

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プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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