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死病が紡ぐ絶望と美しい絆と――『モーテ ―水葬の少女―』

今回取り上げるライトノベルはこちらです。
気が付けば発売から5ヶ月も経ってしまっていますが……

モーテ ―水葬の少女― (MF文庫J)モーテ ―水葬の少女― (MF文庫J)
(2014/08/22)
縹けいか

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作者は『ファタモルガーナの館』というゲームのノベライズを書いていた作家ですが、オリジナル小説作品はこれがデビュー作とのこと。

本作の世界には、「モーテ」という奇病が存在します。mort(死)に由来する名称でしょう。
この病が数万人に一人が罹り、罹った者は必ず10代の内に――いくら生きたいと思っていようと、その意志とは関係無しに――自殺します。

さて、本作の舞台はヨーロッパにある「ドケオー」という孤児施設。
ただ、この施設がかなり特殊な、およそ子供の人権を無視した養育を行う施設であることは、最初の語り手の少年が名前まで「サーシャ」と変えられていることからも分かります(なぜ「サーシャ」と女性名なのかの説明も後々されます)。
そして、この施設が「モーテ」と関係があることも仄めかされます。
物語はこのドケオーを舞台に、もっぱらマノンという少女を巡って展開されます。
彼女担当のフォスター(「ドケオー」においては教育係のようなもの)、ドゥドゥは人殺しであり、マノンに関わると殺されるという噂、そして手首を切られて血を流していたマノンの姿……

本作については、これ以上あまりネタバレをして語ることはしますまい。読んでいただくのが一番です。
ただ、中盤から視点を変えることで「あの件の真相はこうだったのか」というのが見えてくる、何より主人公が誰だったのかも追って分かってくる構成は圧巻です。
読者に与えられた材料から答えが導き出せる、という意味のフェアなミステリではありませんが、真相が分かると一気にピースが嵌り視界が開ける感覚は、実にミステリ的なカタルシスを与えてくれます。
周囲が自発的に動くよう仕向ける黒幕の計画の巧緻さも、読んだ時が時だったせいか『絡新婦の理』を思い出したり(まあ、あれほど複雑な話ではありませんが)。

そして、「遠からず必ず死ぬ病」というと、近い死別を視野に入れた関係を描く「難病もの」というジャンルがあるのですが、本作の特徴は、本人たちの苦しみ以上に、子供を失う親の側が――それも同情できる苦しみではなく、暴走する親のエゴが前面に出て、それにより歪んで閉塞的な世界を作り上げていることでしょう。
いや、恐ろしいのは大人ばかりではありません。「大人の言うことは都合良く歪められている」と信じ、大人を拒絶する子供たちの恐ろしさもまた、これでもかと描かれています。
後半の絶望的な転落劇は本当に見事です。

それでも、本作は紛れもなく、美しく純粋な恋愛物語です。
希望を与える「奇跡」は上手く出来過ぎていましたけれど、それも上手く物語に組み込んで、絶望的な状況下から綺麗なハッピーエンドへと繋げてくれます。

いずれの面でも概ね満足させてくれた作品でした。お勧めです。


ファタモルガーナの館-The house in Fata morgana- あなたの原典に至る物語I (GA文庫)ファタモルガーナの館-The house in Fata morgana- あなたの原典に至る物語I (GA文庫)
(2014/08/08)
縹 けいか

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