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一目瞭然の才能の差を覆す――『できそこないの魔獣錬磨師』

世にも奇妙なイチゴを見かけたので買ってしまいました。

あまおう1

まるでいくつも横に連結したような幅広い形です。他のパックも皆同様でした。
一番大きいのからヘタを取ってみるとこの通り↓

あまおう2

品種はあまおうで、調べてみてもこんな形の画像は出てこなかったので、品種共通というわけではなさそうです。
味は素晴らしいものでした。

 ~~~

今回取り上げるライトノベルはこちら、第27回ファンタジア大賞金賞受賞作品です。

できそこないの魔獣錬磨師 (富士見ファンタジア文庫)できそこないの魔獣錬磨師 (富士見ファンタジア文庫)
(2015/01/20)
見波 タクミ

商品詳細を見る

「魔獣錬磨師」は「モンスタートレーナー」と読みます。
というわけで、本作の舞台ははある種のRPG(ポケモン等)のように人間がモンスターと契約し、育成することができる世界で、魔獣錬磨師育成学園です。
そして、本作の主人公、レイン・エルハルト最弱のモンスター、スライムをパートナーとするスライムトレーナーです。

そんな最弱のスライムトレーナーであるはずのレインが、努力の成果として培った技を駆使して、最強クラスのモンスターであるドラゴンを倒す――本作はそういう話です。

ヒロインは同級生でドラゴントレーナーのエルニア・ミレーネブルク
エリート意識と、非公式ながら過去にレインに負けたという因縁もあって、何かとレインに突っかかってきた上、「お前が負けると、私も悔しい」とか、好意があるとしか聞こえないようなことを言ってしまっては自分で動揺していたりします。
その突っかかり方はいささか鬱陶しくもありますが、まあ可愛いと言えば可愛い。
こちらは大人しく優しい性格のサブヒロイン、アリカと、レインの男友達であるガゼットもいい味を出しています。

――と、そうした基本的な特徴を挙げた上で。

確かに、最弱が努力と工夫で最強を倒す、と言う題材は熱いものです。
しかし――
(1) 実のところ、スライムはそんなに弱いのでしょうか。
スライムが最弱のモンスターとされるのは、ゲーム『ドラゴンクエスト』シリーズの影響でしょう。
ただこれは、どろどろした液状のものを差す「スライム」を、ゼリー状でもはっきりした形のある――しかも可愛らしい――姿で描いた鳥山明氏のデザインによるところが大きいと思われます。
液状であったら、通常の物理攻撃は通じないし、かなり厄介な存在です。

もちろん、本作のスライムは『ドラゴンクエスト』に近いイメージですが、しかしゼリー状の身体なので打撃に強いという設定はあります。
さらに、膨張や分裂もできます。結構強力に思えてなりません。

(2) 次に、作中で描かれている時期は短く、決してレインが弱かった昔から努力と工夫を重ねて強くなる過程が描かれているわけではありません。
スライムトレーナーというだけで格下に見られています(し、今のところその実力を衆目に晒したことはまだあまりないのです)が、現時点の彼は実際には「強い」のです。
そう考えると、本作の構造は『魔法科高校の劣等生』に代表されるような「最弱と見せかけて実は最強」から大きく外れてはいません。
主人公をよく知る人物が「あいつがどんなに凄いか知らないだろう」とその実力や実績を解説する場面も、「実は最強」作品の定番です。

にも関わらず、読者でさえ彼を「最弱」と見なしてしまうのは、いくつかの仕掛けによります。

(1)に関して言えば、まず何と言ってもスライムの可愛らしい外見です。

レイン&ペムペム
 (カラー口絵より)

これでは確かにドラゴンとの格差は歴然として見えます。
さらに、膨張や分裂といった補助的なスキルはどうあれ、――スライムに他の技が習得できるかどうかはともかく、少なくともレインのパートナーであるペムペムの場合――攻撃はシンプルな「体当たり」一本だということです。
この小さなスライムが一生懸命「体当たり」を繰り出している――これでは逆立ちしても強くは見えますまい。

もっとも、このシリーズの2巻以降が出るとしたら、その辺に発展性があるかどうかが、一つのポイントになってくるかも知れませんが。
途中の戦術はどうでも、決め技が体当たり一本では、今ひとつ戦いに幅が広がらないような……

そして(2)に関しては、レインとペムペムのコンビが「強い相手に勝つ」という意味で「強い」としても、それは限られた強さであって、どんな状況でも最強というには程遠い、ということがあります。
実際、集団戦には弱く、雑魚モンスターにやられている場面もあります。
もっとも、そうした場面の扱いが比較的小さく、ドラゴンを倒す場面よりも後に来ていることもあって、「弱い方が地である」とまで見える表現にはなっていないようにも思われますが。

しかし何よりも大きいのは、この世界では、それぞれに人がどんなモンスターと契約できるかは生まれ持った「紋章」によって決まっており、誰の目にも明らかだという設定ではないでしょうか。
この紋章の違いは絶対的な「才能」であり、主人公はその才能の差を努力でひっくり返すのだ、というわけです。

現実の場面においては、どこまでが才能でどこからが努力なのか、判然としていないことの方が普通です。
昔は並以下だった者が大きく成長していても、それは努力の成果かも知れませんが、「眠っていた才能が開花した」のかも知れません。
むしろ、結果を出した者は、自分には才能が無かったと称する権利を持たないのです。

レインだって、スライムの性能を活用して強者に勝つべく努力を重ね、独自の戦術を編み出すことができたのは、これまた一種の才能かも知れません。
ただ、紋章の種類という客観的で明瞭な「才能」の差異の前には、それは霞んでしまうのです。

思えば、極端な「最弱と見せかけて実は最強」設定だった『着ぐるみ最強魔術士の隠遁生活』でも、髪の色という外から見て明らかものが才能を反映していたことは、示唆的なことです(もちろん、目に見えるところに反映される才能が「ないように見える」だけなのか、「本当にない」のかという点で、『着ぐるみ最強魔術士』と本作とは決定的に異なりますが)。
なるべく才能の有無が一目瞭然な世界観にしておいて、それをひっくり返す――

まあ安直と言えば安直ですが、この「ひっくり返し」の見せ方を工夫するのも技術の一つであり、欠点とは言いますまい。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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