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『電撃文庫MAGAZINE』Vol.42(2015年3月号)

今月も隔月刊『電撃文庫MAGAZINE』が発売されました。

電撃文庫MAGAZINE 2015年 03 月号 [雑誌]電撃文庫MAGAZINE 2015年 03 月号 [雑誌]
(2015/02/10)
不明

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毎回付録の多い本誌、今回は毎度お馴染みの大型ポスターに、『デュラララ!!×2』のビッグブランケット

電撃文庫MAGAZINE Vol 42 ブランケット

それにしおりのセットとなります。(その他、例によってソーシャルゲームのシリアルコードも)

電撃文庫MAGAZINE Vol 42 しおり

税込750円の雑誌の毛布まで付いてくると思えばお買い得かも知れませんが、実際にはもったいなくて使えません。


内容ですが、何と言っても今月はいよいよ第21回電撃小説大賞の受賞作が発売される月……ということで、受賞作8作品全ての作品紹介と作者インタビュー、それに書き下ろし短編もしくは本編の一部が掲載されています。

第21回受賞作一覧

しかも、今まで受賞作は揃って2月に発売され、また2月の電撃文庫新刊は同賞で受賞デビューした作家の作品のみというのが慣例だったのですが、今回はそれが変わっており、受賞作は2月と3月で分けての刊行。
2月に電撃文庫から刊行されるのは『ひとつ海のパラスアテナ』と『運命に愛されてごめんなさい』の2作のみで、今月のメディアワークス文庫も25日発売なので、多くの作品は本編公刊に先立っての掲載ということになります。
受賞作の雰囲気を摑むのは最適の一冊でしょう。
以下、雑感を述べてみます。

● ひとつ海のパラスアテナ(大賞、本誌と同時発売)
時系列的には本編の前日譚を掲載。
少女主人公の海洋冒険物で、架空の生物が数多く存在する異世界が舞台とは言え、漂流生活の描写はなかなか迫真性があります。その雰囲気は本編でもこの短編でも変わりません。

● φの方石(大賞、今月メディアワークス文庫より刊行予定)
立方体の石から瞬時に衣装へと変化する「方石」が存在する世界が舞台。
主人公は方石職人で、彼のもとを訪れる依頼人たちのドラマが描かれ、そして彼自身も追っているものがある……と、方石というファンタジー要素を除けばいかにも最近のメディアワークス文庫らしい職業人情ものになりそうに見えます。今回掲載の短編は演劇をやっている少女が依頼人の話。
ただ、今回の短編を見る限りでは、この世界観でこの話をやる意味が弱い――つまり、「方石」という設定と人間ドラマは切り離せるような印象があったのも事実です(もちろん、方石の特殊な性格が依頼人の抱える問題の原因になってはいるのですが、依頼人の問題は別の理由付けでも成り立つような)。
長編ではこの印象を覆せるでしょうか。

● 運命に愛されてごめんなさい。(金賞、本誌と同時発売)
「運命力学」に従い、毎週転校生がやってきては予言をするという高校が舞台で、生徒会長になると予言された主人公が彼を敵視する現会長と抗争する話。「空白の三日間」と題されているので、時系列的には本編の中に組み込まれる、描かれなかったエピソードという扱いでしょうか。
なかなかに卑劣な手で現会長を追い落とそうとする主人公が特徴ですが、主人公が基本的にバカなので知略戦というほどの感じでもなく。
端々にそれなりの上手さは感じますが、全体としてはどんな感じになっているのでしょうか。

● レトリカ・クロニクル(銀賞、今月メディアワークス文庫より刊行予定)

狐の獣人である師匠(女性)と二人で旅をして、「話術士」として様々な交渉事を引き受けて生きる主人公の物語。
獣耳と尻尾の主人公と二人で旅をする、特別な能力は持たない人間の主人公というのはちょっと『狼と香辛料』を連想しました。
ただ肝心の「話術」を主人公が展開する場面は、本当に話の通じない相手や頑固な相手はこんなものじゃないよな、と――つまり随分と都合のいい展開になっている印象を受けてしまったのは事実。この点でどれだけ魅せられるかがカギでしょうか。

● マンガの神様(銀賞、3月に電撃文庫より刊行予定)
二人の高校生漫画家が出会うラブコメ作品……でしょうか。
今回の短編は恐らくヒロインと思われる「天才美少女漫画家」の方が主役の、本編の少し前のエピソードです。
彼女には漫画的にベタなトラブル(曲がり角で転校生と衝突する等)を引き起こす「マンガの神様」が憑いているという、メタ色の強い設定ですが、これがどう活きてくるかはやはり主人公と出会う本編待ちでしょうね。

● いでおろーぐ!(銀賞、3月に電撃文庫より刊行予定)
バレンタインのような恋愛イベントを批判する「反恋愛主義青年同盟部」のレジスタンス活動を描く学園ラブコメ、でしょうか(ヒロインがこの活動の中心人物)。
ヘルメットを被ってタオルを顔に巻き、メガホンで演説という往年の学生運動風のスタイルで、恋愛至上主義を批判する無茶苦茶な理屈をまくし立てる、という発想は悪くないものがあります。
ただ、話としては(反恋愛至上主義という)捻りの要素まで含めてもはや既視感ばかりのラブコメになっている気がするのも事実。
ここからさらに魅せることができるでしょうか。
ちなみに今回の短編は、時系列的には本編の中に入る(節分なので、主人公とヒロインがクリスマス・イヴに出会ってからバレンタインデーで山場を迎えるまでの間)エピソードのようです。

● ちょっと今から仕事やめてくる(メディアワークス文庫賞、今月メディアワークス文庫より刊行予定)
仕事のハードさにうんざりして死のうかと思っていた新人社員が、小学校時代の級友のヤマモトと名乗る男と出会い、それによって救われるものの、ヤマモトの正体には謎が……という話である模様。
今回掲載されているのは、本編の主人公とは別のとある女子社員を主役にした2ページの書き下ろし短編と、本編の一部抜粋。取引先からのクレームで無理な注文が付くなど、仕事のハードな場面をなかなか入念に描いているようですが……はてさて、どうなるでしょうか。

● バリアクラッカー(電撃文庫MAGAZINE賞)
昨年の「電撃文庫MAGAZINE賞」作品「給食争奪戦」は短編だったので全編掲載されていましたが、本作は長編らしく、今号から連載という形になっています(同賞受賞作は本誌に掲載するという方針は変わらない模様)。
全ての人間に神の祝福として「アイギス」という力が与えられ、怪我をすることも病気になることもなくなった街アーモロートを舞台に、教会の異端審問官を務める少女ベルヘルミナ・バスカヴィルを主人公にした物語。
この世界で「異端」と見なされるのは「レプトロイド」と呼ばれるトカゲ人間たちですが、彼らはアイギスの力を持たず、神に呪われていると言います。しかしレプトロイドは人間に変身することができ、アイギスの有無意外に正体を見分ける方法はないらしく、過去にはなぜかアイギスを失って異端認定を受けた人間もいるのですが、そうなる理由は分かっていません。

人になりすまして人間(じんかん)に潜む怪物が、その牙を剝けば脅威となるから駆逐する……なら話は分かりますが、本作の設定では一般人でさえ、何をされても傷一つ負わない、逆に人間はレプトロイドを傷付けられるのですから、絶対的強者たる人間が弱者のレプトロイドを迫害しているようにしか見えません。
まあ主人公のベルヘルミナからして兄を異端認定された過去を持ち、現状を何とかしたいという思いを抱いているのですから、このような状況の正当性を覆すような展開(どんでん返し?)が出てくることは想像に難くないのですが……期待して続きを待ちましょう。


入間人間は新作『いもーとらいふ』を開始。
前号まで4回連載した『おともだちロボ チョコ』は4月に単行本発売予定なので、残りは書き下ろしに委ねられそうです。

いもーとらいふ

今作は兄妹の話で、兄の一人称で妹が生まれた時のエピソードから始まります(二人とも名前は不明)。
大体、入間氏の作品は子供の一人称でも理知的で内省的ですが、そもそも今作は「〔その時は〕考えていなかった」とか「そのときに感じた後ろめたいものの正体を、俺は大学生になって知ることになる」とか、はっきりと後年の主人公が回想して語るという形になっています。
そのためか、物語の着地点はかなりはっきりしていることを最初から匂わせていますし、サブタイトルも「0歳~15歳」とあるくらいなので、連載数回、単行本1冊分もあれば一生を描ききれそうです(もちろん、1話で1年も消化しないこともあるかも知れませんが)。

それにしても、自分の下の子供が生まれた時の子供の感情、小さいと思っていた妹が成長したことを見せ付けられた戸惑い、そうした機微の迫真性は相変わらず見事です。
兄が高校生、妹が中学生になっても一緒の部屋で布団を並べて寝ていたりと、非常に仲が良いのはよく分かりますが、これまたべったりの兄妹というのがいればこんな感じだろうな、と感じさせてくれる生々しさがあります。
気が付けば兄の生活においても、「妹の相手」が占める分があまりにも大きくなっていて、共依存気味と言いますか……

他方で本作を読んでいて気付くのは、妹の「キャラ」はさほど強くない、ということです。
もちろん、それなりに喋って動いているシーンはありますし、相当に兄に懐いていること、友達はいなさそうだということ等は描かれていますが、印象的な言動は行動は案外少なく、外見描写ですら赤ん坊の時が一番あったりします。
扉頁には「放っておけない妹の面倒を兄が一生見続けるおはなし」とありますが、小学校低学年時代に夏休みの宿題を兄に頼って以降、何かと頼りっぱなし――というわけでもないのです。幼少時の「根性のないやつだ」という評価が「それから先もずっと変わらない」のも、客観的に見て頼りないと言うより、兄がそう思い続けているということが第一でしょう。

本作の文章中で大きなウェイトを占めるのは、「兄にとっての」妹の存在の大きさであり、自分は兄としてどうなのかという兄の自意識です。

 俺が本当に意識していたのは妹ではなく、兄としての自分がどうあるか、ということだ。
 妹の望むような理想の兄を目指すのか、それとも俺自身が望む自分であるべきか。
 俺にとって、妹とはなんなのか。人生の枷か、単なる家族か、或いは生き様の指針か。
 本当は妹と向き合って答えを見つけるべきだったかもしれない。
 だけど俺は一人でそれを探そうと、家を出た。
 別の道を探すことが逃げることに繋がっているのかも、まだ分からない。
 (入間人間「いもーとらいふ」『電撃文庫MAGAZINE』Vol.42、KADOKAWA、p. 532)


兄が妹を距離を取っても、妹が拗ねるとかいったラブコメ的なイベントは(少なくとも今のところ)ありません。全て、これでいいのか兄が自問しているだけです。徹頭徹尾、自意識しかありません。

だからここにおいては、妹が客観的に見て可愛いのかどうかが問題になる余地もないでしょう。妹の存在が大きいのも、愛しいのも、全て兄にとってのことです。その意味で、(伊藤剛氏、斎藤環氏などの論に従い)文脈から独立してその同一性の存在感を発揮するのが「キャラ」であるとするなら、妹のキャラは「弱い」のです。
しかし、そもそも当然のことながら、「妹」とは兄もしくは姉にとってのみ「妹」であるとするならば、これこそ「妹」の適切な描写なのかも知れません(むしろ、上述のような意味で「キャラ」を捉えるなら、「妹キャラ」とは一体何でしょうか)。

この生々しく考えてみれば軽くはない描写は、兄妹というものを描いた文学の歴史に名を残すに値する傑作になりそうなものを感じさせます。
ただ、上述の全ての特徴が、このタイトルとイラスト、それに何より「妹もののライトノベル」という触れ込みから期待されるものには真っ向反しているのだろう、とも思いますが。
それが新鮮さとして評価される可能性もありますが、なにぶん今回は、そもそも「百合ライトノベル」という分野が確立するというほどに至ってなかった『安達としまむら』の場合とは異なり、「妹」はライトノベルにおける形式が成立している領域だけに、分の悪い賭けだと予想させていただきます。


その他には、『戦闘機少女クロニクル』が連載第2回目。
他方で城を擬人化した『城姫クエスト』というのもあり(複数のイラストレーターが参加するマルチメディア企画であることも同じで、『艦隊これくしょん』の路線であることは容易に見て取れます)、他方で戦闘機の少女というネタは夏海公司氏の『ガーリー・エアフォース』と重なる部分もあるのですが、勝算があってやっているのでしょうか……

城姫クエスト 僕が城主になったわけ (電撃文庫)城姫クエスト 僕が城主になったわけ (電撃文庫)
(2014/11/08)
五十嵐 雄策

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川上稔氏の『激突のヘクセンナハト』も連載第2回です(前号に掲載されたのは第零話だったので、連載2回目で第一話です)。
これは「川上稔原作のコミック作品」の小説版という触れ込みでしたが、小説版第零話を掲載した本誌Vol.41(2014年12月10日発売)の方が漫画の連載開始した『月刊コミック電撃大王』2015年2月号(2014年12月25日発売)より先だったわけで、今更ながら原作とメディアミックスの関係とは何ぞや、と思ってしまいます。


後は、イラストに作家がストーリーを付ける「illust×story」企画、普段ストーリーは1ページなのですが、今回の物草純平氏は3ページ書いていたのが印象的でした。
今回はイラストレーターのユウナラ氏も、物草氏のストーリーが付くという前提の下、『ミス・ファーブルの蟲ノ荒園』と同じスチームパンクな絵を描いたようなので、水が合ったかも知れませんが。

大正エルフ

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プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
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