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このヒーローたちを見よ――『エクゾスカル零 8』

まだ体調が全回復していない(むしろ熱は――微熱ですが――上がっているような)ので簡潔に行きますが、今回取り上げる漫画はこちら。
『エクゾスカル零』、これにて完結の第8巻です。

エクゾスカル零 8 (チャンピオンREDコミックス)エクゾスカル零 8 (チャンピオンREDコミックス)
(2015/02/20)
山口貴由

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 (前巻の記事

前巻の後半から「煉獄編」に入り、主人公も御菩薩木紡という新たなエクゾスカル戦士に交代しましたが、今巻ではいよいよ(割とあっさりと、と言うべきでしょうか)覚悟と紡が邂逅します。
そして二人の対決
二人の意外な関係も明らかに。
まあ考えてみれば、そもそも最初に覚悟が目覚めた時、まだ眠っている他のエクゾスカル戦士はいなかったのですから、紡の方が目覚めたのは先、つまり「煉獄編」に入った時点で時系列が遡っていたことは予想できたであろうことなのですが、その上で結び付きがあったようで……

今回は、いくぶん紡のしたことに対する誤解もあったとは言え、エクゾスカル戦士たちが互いに争い戦わねばならない理由は最初から変わりません。
全ての人間が理性を失い、人を喰らう「到達者」となることを運命付けられている世界で、人間をその運命から救うことはできない――その意味では無力な――「ヒーロー」がどう向き合い、何をするべきかについての考え方の相違です。

つまるところ、この問題にいずれが「正解か」という答えはありません。
これはヒーロー同士戦っても同じことであって、勝敗は必ずしも「正しさ」を決しはしません。
実際、到達者をこの世界の「人間」として守ろうとした九十九猛や全ての人間を安楽死させようとした動地憐に対し、――最後までお互いに方針は相容れないまま――覚悟は敬意を表しています。
今回、ある意味では紡が覚悟を「乗り越えて」その先を行くヒーローとなるような幕引きとなりましたが、それぞれに異なる道を行くエクゾスカル戦士たち、という事態は変わりません。

ただ、戦いの結末は、この作品にしては奇妙なほどに、ヒーローらしく爽やかなものでしたが。

最後は「天国編」で、この世界になおも生きる人々と、それに関わる(散(はらら)を含めて7人の)エクゾスカル戦士たちの姿が描かれます。
「天国編」と言っても、この世界の人間の絶望的な運命そのものに代わりはありません。

ただ、最終的に人間を待ち受ける、ともすれば絶望するしかないように思える運命は決して変わらず、もし救済があるとすればそれは「ヒーロー」によって天下り的に与えられるものではない、しかしそんな中でも人々は精一杯に生きており、ヒーローはそれをささやかながら助けるのだ――ということならば、いつどこの世でも変わらない現実です。
その意味では、不思議に希望があるようにも見えるラストでした。

突然「北斗の拳」風のモヒカンが支配する街が出てきたのに笑いましたが。

エクゾスカル零 モヒカン
 (山口貴由『エクゾスカル零 8』、秋田書店、2015p. 193)

ただ、私はこれを見て少し考えてしまう面もあります。
結局、その絶望も含めて人間の本質的なあり方は変わらず、ヒーローもまたそれを変えられるものではない、という「現実的」なところに帰着するのであれば、フィクションでそれを描く意義は何だろうか――と。
いや、意義がなかったとは決して言いますまい。

むしろ、どこまでも絶望的な世界でのヒーローの(不)可能性を突き詰めた末に一つの普遍的な現実に回帰するまでの、その苦闘の道のりとしてこそ、本作は価値を持つのでしょう。
描き始めた時に「過信があった」といったあとがきでの作者の言葉をそのまま受け取って作品を「読み解く」導きの糸とするようなやり方には慎重でありたいと思いますが(そのあとがきの後に「天国編」が来るという構成も、あとがきがあくまで作品の一部であるという印象を強めます)、この作品が「答えの出ない難問」と向き合い苦しんで歩んできた作者の道程そのものであることは、ある程度まで認めて良いように思われます。

無論私は、「作者が苦労したから価値がある」と言いたいわけではありません。
読者は結果としての作品だけを見ます。過程における作者の苦労はありません。
結果としての作品そのものが、まさに苦闘の道のりであり、読者にもそれを辿らせるからこそ、意義があるのです。

 ―――

さて、帯の裏表紙側を見ると山口氏の新作「衛府(えふ)の七忍」の予告がありますが……

エクゾスカル零 8巻帯予告

『エクゾスカル零』の動地憐が「衛府の剣」の主人公だったという設定なので、その名をすぐに連想してしまいますが、紹介分を見る限り内容的な繋がりはなさそうと見て良いでしょうか。


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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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