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冒険者という生き方

気が付けば『ドラゴンクエストヒーローズ』が発売されていました。
PS3版とPS4版が別々に発売されていたりややこしいことですが……

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これ、別に『ドラゴンクエスト』(略称『ドラクエ』)の新作ではなく、過去の『ドラクエ』シリーズの人気キャラクターたちが登場するアクションゲームのようですね。
まあ、その登場する顔ぶれに恣意的なものを感じたりもしますが……

とは言え、私はもう大掛かりなゲームをプレイする余力がないので、今回は別に新作ゲームの話ではありません。

元祖『ドラクエ』の主人公は竜王を倒すべく選ばれし者――「勇者」でした。
本来は単に勇敢な者を指すこの言葉が随分と特異な、神話的英雄に近い意味を背負っていることに気付きますが、まあそれはいいでしょう。

「職業」というシステムが登場したのは『ドラクエIII』でした。
そこでは「勇者」も「職業」の一つに数えられます。ただし、他の職業は何人も存在し、また「転職」もできるのに対し、勇者を辞めることはできません。
「戦士」「魔法使い」「僧侶」etc... と違って、「勇者」は職業じゃないよなあ……というのは、その後さんざん指摘されてきたことでした。
私が知る限りでその指摘を最初に見たのは、漫画『魔法陣グルグル』でした(他にもっと早い事例があるかどうか分かりませんが)。
この作品においては、「勇者」は世界を救う伝説の人のことであって、職業は別にあるとのこと。

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すでにブームのピークは過ぎましたが、近年のライトノベルには「勇者と魔王」ものが大量生産されたので、当然、そういう点に触れたネタも珍しくありませんでした。
『勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。』に至っては、タイトルからして「勇者になる」のは「就職」ではないと明言しています。

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ただ、私の思うに、こうした問いを提示するのは決してパロディ作品の専売特許ではありません。
「王道のファンタジー」は等閑に付している「勇者」についての問いをパロディは提示する、という単純な話に限らず、王道もまた問いを立て得るのです。
というわけで、改めて本家『ドラクエ』を検討してみましょう。

『ドラクエV』はそれまでのシリーズの「主人公=勇者」という図式を揺るがします。勇者は物語後半になって生まれる主人公の息子でした。
ただ、『V』には「職業」というシステムがないので、「勇者は職業なのかどうか」は問題になりません。

『VI』以降では、再び転職可能な職業システムが登場、そして「勇者」も転職により誰でもなることができる職業の一つになってしまいます(転職条件の面で主人公は優遇されている、といったことはあるものの)。
というか、いかなる「職業」についてもそれぞれのキャラのストーリー中での生き方に影響するわけではありませんし、ここでの「職業」とは職業スキルとでも言った方がいいようなものですが……
いずれにせよ、これは確かに「勇者」のステータスを大きく揺るがしますが、それによってむしろ「勇者は“職業”である」ということを強化しようとしているようです。

どうも本家『ドラクエ』は「勇者は職業なのか」という問いには向かっていないようですが、主人公のステータスを巡って気になる要素はありました。
『ドラクエVII』の主人公は漁師の息子でした。それはいいのですが……

ドラクエ7主人公

彼にはいい歳をして無職で遊び歩いているホンダラという叔父がいます。
そして、服装を見る限り、どうも主人公はこのホンダラの方の影響を受けているように見えます。
取扱説明書のキャラクター紹介を見た瞬間、多くのプレイヤーが気になった点ではないでしょうか。

ホンダラ

ちなみに主人公の父親はこう↓です。あまり似ていません。

ボルカノ

しかし物語が進むと、ホンダラは只者でないことが分かってきます。
どこからともなく(一見するとどうでもよさそうですが、実は)イベントに関わる重要アイテムを手に入れてきますし、大した用もないのに神の宮殿にまで押しかける行動力の持ち主です。
これこそ冒険者のスキルではないでしょうか。

実のところ、主人公の出身地であるエスタード島は魔物の一匹もいない平和な島なので(このゲーム、プレイし始めてから最初のスライムと戦うまでに2時間くらいかかります)、定職につかずフラフラしている「冒険者」は共同体に必要とされません。
そして客観的に見れば、主人公が島にある「謎の神殿」の探索に行くのも、要するに遊んでいるだけです。
『ドラクエVII』の主人公は富豪の娘で冒険の仲間であるマリベルに振り回されている印象が強く、またキャラクター紹介にもそう書かれていますが、これは『ドラクエ』の主人公はそもそも喋らず、その人格はあまり描かれないということも考慮すべきでしょう。
だから、以下の話はゲームの仕様上、深入りされる可能性は元よりなく想像に委ねられている事柄ですが、実際には主人公とマリベルの関係はキョンとハルヒのようなもので、主人公も振り回されつつ楽しんでいたのではありますまいか。

ただ、ひとたびエスタード島を出れば様々な形で魔物の脅威に晒されている地があり、そうして遊びで冒険に行った主人公はそうした各地の人々を救い、最終的には世界を救うことになるのですから、途中で「遊び」が「生死をかけた戦い」であり「使命」に転じたと見るべきでしょう。
そう、(これも後発作品ですが)『仮面ライダー鎧武』のように――

どこが転機になったのは、あるいは描かれなかった事柄があったのか、そこには深入りしますまい。
ハッピーエンドとは行かなかったり、後味の悪かったりするエピソードの数々が存在することを思えば十分でしょう。

ただし、この手のゲームの基本構造として、ラスボスを倒して世界に平和を取り戻せば冒険は終わりです。
そして『ドラクエVII』のエンディングでは、漁師の息子として働く主人公が、過去の世界で別れた友キーファの遺した石版を引き上げるのです。
なぜこのような締めになっているのか、そもそもキーファの途中離脱は何の意味があったのか(あまりストーリーに噛んでいないように見える)という点について、ファンの間では色々と詮索されており、「オルゴ=デミーラ(ラスボス)=キーファ」説等、なるほどこれを採用すると色々と腑に落ちる気もします。
ただ、ここで問いたいのではそこではありません。

世界を救った英雄が最後に家に帰って家業を継ぐとは、何だかスケールの小さい話です。
過去の『ドラクエ』シリーズでも、実家に帰るのは『II』の主人公たちくらいではないでしょうか。しかも、彼らは元々王族です。
庶民として生きてきたのが途中で王族だと判明する(いわゆる貴種流離譚)『V』や『VI』の主人公は、庶民としての家には帰れず、王家に戻らねばなりません。生き方が激変するのです。
それに比べると、『VII』の主人公にも大海賊の血を引いているという設定はありますが、それによってそのような生き方の激変があるわけではありません。その点であまり意味のない設定なのです。

あまりにも過酷なことのあった末に、冒険から足を洗って家業を継いだのだとすれば――
普段は役立たずであり共同体の鼻つまみ者である「冒険者」が非常時には活躍する、という価値転換があったものの、冒険者本人としては「冒険」も必ずしもいいものでないことを味わってそこから離れるという、二段階の転換がここには見られることになります。

元の平和な暮らしになど戻れない、それが「遊びでなくなる」こと――という『鎧武』のケースと比べると、また味わい深いことですが。

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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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