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仲間集め、それが本筋――『シャルパンティエの雑貨屋さん 2』

今回取り上げる小説はこちらです。

シャルパンティエの雑貨屋さん 2 (アリアンローズ)シャルパンティエの雑貨屋さん 2 (アリアンローズ)
(2015/03/12)
大橋 和代

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 (前巻の記事

1巻のあらすじを振り返っておきますと、一枚の営業許可証を頼りに独り立ちしようと家を出た雑貨屋の娘ジネットですが、その営業許可証の通用する土地シャルパンティエはこれから開拓予定のまだ誰も住んでいない土地で、領主のユリウスは土地の権利と爵位を買ったばかりの、元冒険者という強面の大男でした。
ただ、シャルパンティエにはダンジョンがあるので、そのことを公開すれば冒険者相手の収益が見込める、とのこと。
というわけで、1巻ではようやく開店にこぎつけたところで終わりでした。

今巻ではいよいよ営業開始です。
まだ人口10人かそこら、滞在中の冒険者を加えてもその倍程度の村ですが、今巻ではパン屋が新加入、大都市ヴェルニエの元ギルドマスター・アロイジウスが引退して夫婦で引っ越してくるなど、徐々に村人が増えつつあります。
そして何より……ジネットの妹で薬草師の資格も持っているアレットが姉を追ってやって来ました。何でも兄嫁が薬草師の資格を持っていたこともあり、自分を家を出ることを決意したとか。
薬は冒険者の必需品、自前で調合できるというのは心強いことです。
かくして新たな職能者を迎え、新たな仕入れルートも確保して、―――未だ客が数えるほどしかいない店とは言え――少しずつジネットの店の品揃えも充実していくのは、何とも言えないワクワクさせるものがあります。

『七人の侍』に代表されるような、「仲間を集めてミッションをこなす」物語においては往々にして仲間集め編の方が面白かったりするものですが、本作は村作りという広い意味での「仲間集め」自体を本筋にして目標に据えた作品とでも言うべきでしょうか。
魔法があり魔物がいて、ダンジョンに潜って稼ぐこともできる世界観で、今回も危険の種があるかも知れないのでユリウスがダンジョンを探索に行く……という展開もあるのですが、あくまで非戦闘員である主人公の一人称なので、戦いやダンジョン探索の場面は一切描かれません。
この2巻の終盤では、雪に閉ざされた冬の村で子供が病気になり、薬の材料がない、この自体を打開するため村人が力を合わせて――という展開も用意されていますが、これも山場としては随分あっさりした印象。メインはやはり村作りなのだと感じさせます。

他方で、ジネットはユリウスの「家臣」でもあるので、村の要職として徴税、冬の準備、今後の村の計画などに関して頻繁にギルドマスター等と話し合うことになります。
さっぱりした明るい性格と商人としてのスキルで活躍するジネット――やっぱりそこが魅力ですね。

1巻でも金貨と銅貨は統一されているけれども銀貨は国や地域によりバラバラで計算が大変(計算尺が活躍する)だとか、年末決済の掛け売りだとか、商売に関する記述の地に足の着いた丁寧さが目を引いた作品でしたが、今回も冬は雪かきをする予算がないから道が閉鎖されるとか、それで保存食の堅焼きパンを入れた樽で家が一杯になるとか、非常に現実的な生活感の描写が光っています。
まさしく、ファンタジー世界での庶民の生活を描いたらこんな風なのか、という感覚。

他方で、ちょっと物足りないのが、新たに加入する「仲間」――村人の描写が存外少ないこと。
たとえば、第六話で「今度パン屋が来ることになった」という話をした後、第七話の冒頭ではあっさりと以下のような台詞ですでにパン屋が来たことを示しています。

「ラルスホルトくんが来てからでも、アロイジウスさまご夫妻にパン屋のディータくんイーダちゃん兄妹……人が増えたねー」
 (大橋和代『シャルパンティエの雑貨屋さん 2』、フロインティアワークス、2015、p. 101)


そして、実際に当該のパン屋――ディータとイーダの姿が描写されるのはだいぶ後です。
終盤である意味物語の中心的な役割を占めることを考慮に入れても、彼ら自身に関する描写は多くありません。
キャラ描写はある程度絞るってさっぱりした形にするのも味の内ではありますが、仲間集めが主題の一つである作品だけに、やはりもう少し各キャラに関する描写が欲しいような……

今回、サブキャラで存在感を発揮していたのはやはりアレット。
よく見ると、薬草師としての活躍具合は――病人が出て薬が必要になる終盤の展開も含めて――程々なのですが、姉妹の絡みでジネットの魅力をも引き出してくれます。
彼女視点の外伝(Web版にはなかった書き下ろし)も2本収録されて、本文と併せると姉妹がお互いを羨んでいる節や、妹から見るとジネットがユリウスに甘えていることも伝わって、何とも微笑ましい感じです。

ジネットとユリウスの恋愛に関しては、ジネットの気持ちは語られたものの、あまり進展はなさそうですが。ジネットは男性客のあしらいには慣れていても付き合いとなると奥手な模様。
でもその辺を語らせてくれたのも妹の成果。
まあ、個人的には恋愛色はこのくらいの方が好みか、とも思います。
ただ、次巻予告では「ジネットに強力な恋のライバル出現!?」とありますが、どうなるでしょうか。

主人公の人物と商売や生活の描写、それに楽しそうな村の人間関係はなかなかに楽しめる作品でした。次巻も楽しみです。

 ―――

余談ですが、ダンジョンのあるファンタジーで商人と言えば思い出すのがこのゲームのシリーズ……
いや、トルネコは道具屋ではなく武器屋ですけどね。

ドラゴンクエスト・キャラクターズ トルネコの大冒険3 アドバンス ~不思議のダンジョン~ドラゴンクエスト・キャラクターズ トルネコの大冒険3 アドバンス ~不思議のダンジョン~
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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
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