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旧作から新巻まで

最初に言っておきます。今回は古いものから新巻まで、いくつかのマンガについて語らせていただきましょう。

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私の中で、アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』と言えば、'80年代に包装された第3期です。

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(2006/03/15)
戸田恵子、田の中勇 他

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もっとも、本放送は私が1~2歳の時なので、観ているはずはありません。
どうも、再放送を観る機会は複数あったのだと思います。
ただ、小学校高学年の時には塾に行かねばならず断片的にしか観ていないとか、あまりきちんと観ていない思い出が多く、そのためか同じ話を複数観た覚えもありません。

その程度しか観ていなくても、アニメ『鬼太郎』と言えばこれ、という刷り込みはあります。
まあ単に、他のアニメ『鬼太郎』はほぼ観ていない、というのもありますが、この第3期アニメのキャラキターブックやらアニメコミックやらを幼少時に読んでいた印象もあります。

それはそうと、今では東映アニメオンデマンドなどで観ることも容易になったので(有料ではありますが)、最近いくつかのエピソードを観返してみました。
まずは割と強く印象に残っていた第56~57話の前後編「タヌキ軍団日本征服!!」ですが……当時も感じてはいましたが、今観ると思った以上に「すっきりしない」話なのですね。

物語としては、人間の開発により封印が破壊されたことで、四国の洞窟に封じられていた刑部狸(ぎょうぶだぬき)率いる八百八狸(はっぴゃくやだぬき)が復活し、人間の首相に政権譲渡を迫ります。
刑部狸は妖怪獣・蛟龍(こうりゅう)と地震を起こす大ナマズを従えており、自衛隊でも歯が立ちません。蛟龍が自衛隊を蹴散らし東京の街を破壊する様はいかにも怪獣映画風で、原作ではタイトルが「妖怪獣」だったことからしても、まずは怪獣ブームを意識した作品だったのでしょう。
実際に日本は狸に征服され、人間は奴隷としてタヌキ城の建設のため働かされるようになったところで、鬼太郎が反撃する――というエピソードなのですが……

目玉のおやじ曰く、八百八狸は「天下取りを狙って天海上人に封印された前科のある奴等」、ねずみ男の曰く「同じ妖怪でも奴等は違うぜ、やたらプライドが高くて、このままじゃオレたちはこき使われることになる」と、一方では狸たちが相容れぬ敵であることを強調しており、鬼太郎のそのねずみ男の言葉に同意はします。
しかし他方で、この話は人間の開発工事の爆破で狸たちの封じられた洞窟が落盤し、一部の狸が犠牲になる場面から始まっており、まず印象付けられるのは人間の横暴です。また人間の自然破壊を腹に据えかねたという狸たちの言い分には鬼太郎も理解を示すのです。
人間の自然破壊に苦しめられたり怒ったりする妖怪というモチーフは、第3期『鬼太郎』では結構多いモチーフで、その場合鬼太郎は妖怪の暴走を止めつつもその事情に共感を示し、最終的には和解に向かうことが多いのです。
そうして和解した妖怪が後に味方として登場するのも見所で、この「タヌキ軍団日本征服!!」でも八百八狸という強大な敵を前に、過去に登場した妖怪が助っ人に登場します。
ただ、八百八狸とは結局和解できぬまま封印することになり、終わった後でも鬼太郎は「何だかかわいそうな気もして……」とやりきれない様子。

さらに、途中過程での鬼太郎のやり方にも疑問を感じます。
首相と一緒に攫われた鬼太郎は、首相を説得して政権譲渡に応じるから少し時間をくれ、と言いますが、それで脱出すると裏切って狸たちを再封印しようとします。
騙しや裏切りは普段なら、どちらかというとねずみ男の領分というイメージなのですが……
いや、これが卑怯な手を使ってでもこうすべき、という信念あってのことであればまた話は違うのですが、この話での鬼太郎は約束を破って狸を封印すると言いつつ、狸の言い分にも理解を示して迷っているのです。
そして裏切りという敵対意思があるとしか取れない行動を決行しつつ、「今の内に首相に話して共存の道を…」と言い出します。

しかし刑部狸は約束を破ると発動する呪いを鬼太郎にかけており、この作戦は失敗。
東京では蛟龍が暴れだし、首相は「あの鬼太郎とかいう子供に任せるなじゃなかった」と苦々しい顔をするのです。
最後も八百八狸の再封印に活躍したのが鬼太郎たちであるとはつゆ知らず、首相は人間の軍事力で政権を奪回したのように語るということに。

どうも鬼太郎、狸、人間の三者の間で交渉の失敗があったように感じられるのです。

ただ、妖怪との融和路線を行くシリーズの中で、そうした和平の困難と失敗、それを善悪の割り切れない感じを描いているのが、このエピソードの味という気もします。

ちなみに、こんなことを改めて気にしているのは、最近京極夏彦氏の『豆腐小僧双六道中おやすみ』(豆腐小僧シリーズ2冊目)で四国の八百八狸伝説について説明されているのを読んだ影響もあります。
それによると、隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)(『鬼太郎』では単に「刑部狸」となっていますが)率いる八百八狸は松山藩を乗っ取ろうとしたとも、いや元々松山藩の守護者だったとも伝えられており、善玉か悪玉かはっきりしないとか、そもそも狸は山に暮らし、たまに人里に降りてきて人を化かすくらいで、人間の政争にまで関わるのは異例のことだとか、さらには四国は犬神の本場であって、本来狸は犬を苦手とするはずなのに「隠神」を名乗るのはそれを関わっているとか、色々と興味深い話がありました。

そういう話を踏まえると、このストーリーも善悪割り切れない感覚も、割と大本のネタに忠実な気もします。

文庫版  豆腐小僧双六道中ふりだし (角川文庫)文庫版 豆腐小僧双六道中ふりだし (角川文庫)
(2010/10/23)
京極 夏彦

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文庫版  豆腐小僧双六道中おやすみ (角川文庫)文庫版 豆腐小僧双六道中おやすみ (角川文庫)
(2013/07/25)
京極 夏彦

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原作『ゲゲゲの鬼太郎』も読んでみたのですが、「妖怪獣」(ちくま文庫版4巻収録)はなかなかの長編で、大筋はほぼ同じです。
ただ、人間の自然破壊に対する妖怪の怒りというのはアニメ独自の要素で、その分原作の方が八百八狸の悪役としての位置付けは分かりやすくなっています。もっとも、首相が「かれらははじめは四国の工事現場から出てきたようなふりをしているがあれは見せかけなのだ。計画的に地上を乗っ取ろうとしておる」と言っているのに対し、目玉のおやじたちはやはり人間が(無知ゆえに)開発工事で封印の札を剥がしてしまったのだと言っており、どうもはっきりしないところはあるのですが……ここはやはり、無知な人間よりおやじたちを信じるべきでしょうか。
それから、原作だと鬼太郎が狸を騙して再封印しようとするのに対して、ねずみ男と目玉のおやじが止めるのですね。ただ、二人が止めるのは鬼太郎を心配してという感じで、鬼太郎は約束を破ったことによる呪いが発動しても「ぼくのことはいいから」と言うのですが、もちろんおやじたちがそのままにしておけるはずはなく……

そして、「人間もこれに懲りてもうあの山には手を出さんじゃろう」「いずれ共存できる日も来る」と、現状での和平は失敗しても希望を語る締めだったアニメに対し、原作は(首相たちが鬼太郎の活躍を知らないのはアニメと同じで)「功績のある鬼太郎に対して世間はつめたかった」を強調する、別の意味で皮肉でやりきれない終わり方。
こちらはこちらで、大したものです。

ゲゲゲの鬼太郎 (4) (ちくま文庫)ゲゲゲの鬼太郎 (4) (ちくま文庫)
(1994/07)
水木 しげる

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今月は『事件記者トトコ!』の3巻が発売されました。

事件記者トトコ! 3巻 (ビームコミックス)事件記者トトコ! 3巻 (ビームコミックス)
(2015/03/14)
丸山 薫

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 (既刊についての記事

一つ訂正させていただきますと、既刊についての記事では「大正~昭和初期頃の帝都・東京」などと言ってしまいましたが、よく確認すると「帝都」ではなく「首都」と言っていますし、新聞の横書き見出しも左から右ですし、むしろ戦後と見てもいいのかも知れません。
何より、最大の根拠は物価です。お茶一杯が5円とか言っていますから。

それはそうと今巻のエピソードですが、まずは上野公園に蘇る死体が出る、という噂の取材に来るトトコたち。ここでライバル誌・中央タイムスの記者・葛城(くずき)と出会います。
他社の特ダネをかっ攫うことに長けた葛城記者ですが、どういうわけかトトコを評価してしまうことになり……まあ、トトコは間抜けながら、何だかんだで特ダネを摑んだり悪の組織を退治したりと活躍していますからね。

事件記者トトコ! 3巻 1
 (丸山薫『事件記者トトコ! 3』、KADOKAWA、2015、p. 10)

続いて、少年社長含め男性社員皆の憧れの的である美人の桃園(ももその)デスクの私的な交流関係を追う回。
彼女に恋人はいるのか?

事件記者トトコ! 3巻 2
 (同書、p. 40)

彼女がレズビアンとしてトトコを可愛がってるのは分かってはいましたが……

その次は全3話の中編エピソードで、猛獣カフェーの獣人たちが主役のエピソード。
1巻で登場、マッドサイエンティストの諸緒牛輔(もろお ぎゅうすけ)博士に作られた彼ら(言うまでもなく『モロー博士の島』のパロディ)は、創造主から独立した後、東京でカフェを開いて普通に生活していましたが、この度黒豹の顔をした怪人による強盗事件が発生したということで、リーダー格のアダムが警察に呼ばれ、その冤罪を晴らすべくエバが奮闘します。

事件記者トトコ! 3巻 3
 ↑こちらがアダム(同書、p. 63)

事件記者トトコ! 3巻 4
 ↑こらちがエバ(同書、p. 64)

エバは獣らしく衝動的な性格で、トトコに劣らずお騒がせな人物ですが、こういう女の子の動きっぷりを可愛く描けるのが強みですね。耳、目、牙、手足、尻尾、それに挙動と全体に猫科の獣っぽさがよく出ているのも獣人系少女好きには堪らないとところでしょう。
トトコに仕えるメイドロボ・桔梗も、今回の出番は少なかったものの、入野先輩を意識する可愛い反応を見せてくれました。

事件記者トトコ! 3巻 5
 (同書、p. 135)

そんな一方で、今回、大暗黒仮面のライバルとなる新たな怪盗が生まれてしまった……のか?

そして最後はトトコ歯医者に行くの巻。

しょうもない悪の組織とかマッドサイエンティストとか、はたまた謎の巨大生物とかが当然のように現れる、そんないい加減で楽しい世界観を活かした内容、ますます絶好調です。

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それから、しりあがり寿氏が『コミックビーム』誌上で「同時多発連載」として足かけ5年にわたり連載し、昨年完結したシリーズも、いよいよ単行本化されました。
まるでバラバラの話を不定期に織り交ぜて連載していたのですが、それらがヴァーチャルとリアルが交差する形で合流していく様は圧巻でした。
まず、今月11日発売の『黒き川』は、父を追って黒き川を越え、七つの大罪の地獄を渡り歩いて旅をする少年――アレキサンダーの息子の物語と、ブリーフ一丁でハミチンの男の話を収録。
二つの物語のパートで紙質を変えているという凝りようです。

黒き川 (ビームコミックス)黒き川 (ビームコミックス)
(2015/03/11)
しりあがり寿

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この巻収録のエピソードについて、連載時に取り上げていた記事はこちら →  

少年の父親――アレキサンダーの狂気の遠征を描く『アレキサンダー遠征』と、一人の人間の博士の指揮下、(半ば人間のような姿の)動物たちを乗せて地球を離れ宇宙を彷徨う宇宙船を描いた『ノアの阿呆舟』は今月25日発売予定です。

アレキサンダー遠征 (ビームコミックス)アレキサンダー遠征 (ビームコミックス)
(2015/03/25)
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ノアの阿呆舟 (ビームコミックス)ノアの阿呆舟 (ビームコミックス)
(2015/03/25)
しりあがり寿

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テーマはやはり「生きること」でしょうか。
生きることそのものに意味はなくとも、それどころか根源的な大罪に結び付いていようとも、悟ったような顔で真実を受け入れるだけよりは、嘘のファンタジーで意味を捻り出してでも生きる――その行き着く果ては……
連載時に読んでいた記憶の限り、あの件はどうなったのか? という部分もないではなく、バラバラな物語の結び付きが全て計画的であったとは言えないようですが、しりあがり氏の天才が、何に取り組んだのかを、しっかりと見せてくれるはずです。

そもそも、『黒き川』連載開始は2010年、つまり震災よりも前なのですが、この単行本化に当たっては冒頭に書き下ろしで3.11の震災を描いています

黒き川
 (しりあがり寿『黒き川』、KADOKAWA、2015、pp. 2-3)

その後の連載でこの要素が反映されることになった、というのもあるのですが、震災によって全てが根底から揺らぐような経験を経て、過酷な状況下でそれでも生きること――という意味で、結果的には大変マッチしているように思われます。

さらに言えば、ビームコミックス発売日(毎月25日)からも、姉妹誌のハルタコミックスの発売日(毎月15日)からも外れて、3月11日に『黒き川』の単行本を『あの日からの憂鬱』と同時刊行したこと自体、3.11――あれから4年――に合わせてのことなのでしょう。

あの日からの憂鬱 (ビームコミックス)あの日からの憂鬱 (ビームコミックス)
(2015/03/11)
しりあがり寿

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プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
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