スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

道を行く者の条件――『武に身を捧げて百と余年。エルフでやり直す武者修行 3』

今回取り上げるライトノベルはこちらです。

武に身を捧げて百と余年。エルフでやり直す武者修行 (3) (富士見ファンタジア文庫)武に身を捧げて百と余年。エルフでやり直す武者修行 (3) (富士見ファンタジア文庫)
(2015/03/20)
赤石 赫々

商品詳細を見る

 (前巻までの記事

本作は異世界転生ならぬ、同一世界での異なる社会への転生もので、エルフに転生した武術家スラヴァの“最強”を求める旅を描きます。
前巻で山間の村ナトゥーシャに行って、思いがけず魔獣タリスベルクという強敵とも戦ったスラヴァたち、ここで空見の少女ソーニャという新たな仲間も加えて、今回は情報収集のため、旅立ち以前に過ごしていた年アルファレイアに戻ってきます。
道中では夜盗に襲われていた商人カドマス=コルドウェルを助けます。新たなヒロインとしてカドマスの娘で、やはり武術を嗜む少女レティスも登場。
そして、学校時代の学友であったセリアやシドとも再会。

演劇の道を目指していたセリアは、実際に劇団入りし、この度の公演では主役を演じるまでに至っていました。
友の夢に向けての全身を喜び、皆で公演を観に行くことにするスラヴァたち。しかし公演当日、過激派が劇場を襲撃し……
そしてここで、スラヴァは前世でのライバルであり人間の武術家であったゼツロと再会します。
百年生きてなお、武の道を半ばにして死に行くことを悔やんでいたスラヴァ。結果って気に転生して二度目の生を得たとは言え、あの時にもっと生きる方法を目の前に差し出されたら、悪魔とでも契約したか……
そんな問いと向き合い、ゼツロに「あり得たかも知れないもう一人の自分の姿」を見て対決する展開はさすがの熱さです。

ちなみに、敵側に関わる物語の軸であった「昏い結晶」と魔獣に関わる事柄も、――前半はそれに関する情報収集もないので、おや? と思いましたが――重要な新情報が出て進展を見せます。

結晶により変異した人間が魔人と同様の赤い眼と白髪になっており、そして魔人とエルフのハーフであるシェリルの内に結晶の影響を受けた者に対する特別なものがある、ということは、魔人と結晶との間に何やら繋がりがあるのを示唆するようでもありますが……この辺も楽しみなところです。


1巻ではヒロインだったセリアが1回最後でさらっとフェードアウトしたり、その巻でもボスとなる敵もあまり布石なくさらっと登場したりと、キャラの登場・退場に関する軽さがちょっと気になっていた作品ですが、今回はセリアに加えて以前の敵キャラも再登場。過去に登場したキャラたちを活用できるという、ここまでの積み重ねによる楽しみも感じられる内容でした。

本作のいいのは、主人公の中身が「年老いた達人」で、女性に対しては枯れており(そもそも前世でも武道一筋で女っけのなかった人物ですが)、ヒロインたちに対しても孫を見る目線であることです。
そんな包容力あるヒロインたちにとって人物像が魅力的なのも、他方で彼自身は自分が異性として好かれるという自覚がなく鈍感なのもよく理解できますし、またお爺ちゃん目線で語られる描写は何とも微笑ましさもあります。
そして、スラヴァの「達人」らしく尊敬されるべき人物像を印象付けている要素の一つに、彼も自らの師匠を大変に尊敬している、ということがあります。
何かと師の言葉を肝に銘じ、そしてまだまだ自分は師の域には遠く及ばない、と心中ではつねに語っています。

「師匠の言っていたこと」には割と科学的な内容のこともあったりするので、これは「師匠」がこの世界の人間ではなかったことを示唆している、と見る向きもありますが、(その可能性を否定もできないものの)必ずしもそう見る必要性はないように思われます(そもそも、この世界の学問レベルも明瞭ではありませんし)。
ここで問題なのは、師匠が客観的にどれほどの人物だったかではなく、弟子にとって師匠というものが限りない高見にある、という事実ではないでしょうか。
そして、偉大な師として尊敬される人物は、やはり自らの師を尊敬しているものです。

スラヴァは「最強」を求め、自ら戦う相手を求める血の気があり、今回は酒場で仕掛けたギャンブルに乗り気であるなど無頼なところもあり、そして内心では「余人には無理だろうが私は平気だ」と――こと客観的な分析に裏付けられる場合――相当に自信家なところも見せますが、それでもさほど嫌味がないのも、師への尊敬があるからでしょう。

――と、今まで通りの面白さだったのですが、気になる点が一つ。
今回、観劇に行くためスラヴァたちが礼装を着る箇所があるのですが……

エルフでやり直す武者修行3 口絵
 (カラー口絵より)

アクションドラマ的な魅せ場としては、この格好で劇場に着いてから敵襲があって、礼装のままアクションを披露するのが定跡――と思うのは私だけでしょうか。
そもそも今回も、仲間の活躍はかなり少なめでしたし……


先生はえらい (ちくまプリマー新書)先生はえらい (ちくまプリマー新書)
(2005/01)
内田 樹

商品詳細を見る

にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 大学生活 - ジャンル : 学校・教育

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。