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あまりにも近くて遠い死者の顔――『わがままちえちゃん』

プロ野球が開幕して今日で各チーム4試合目です。
昨年は僅差で優勝を逃し、オフには大型補強を行って、ソフトバンクと並び優勝候補筆頭に挙げられていたオリックスが開幕4連敗。他方で西武が開幕4連勝です。

今からこの先のペナントレースの展開を予想しては後出しの感があまりにも強く、逆にまだ143試合中の4試合ですから「ほら見ろ結果が出た」というのは早すぎるのですが、この際言ってしまいましょう。野球解説者の「順位予想」なるものが結局、前年の順位とオフの大型補強に依存していることは、気になってはいました。
去年の順位も大物選手の移籍も、ニュースを見ていれば素人でも分かることです。
結局それが一番大きいのは事実ですが、しかしこの10年間で6球団中5球団が日本一に、5球団が最下位になっている現在のパ・リーグには、そんな常識は通用しないのではありますまいか。'14年も'13年のAクラスとBクラスがそっくり入れ替わりました。

こと今年の西武に関しては、

・昨年は序盤に躓き最下位争いをしたものの、伊原監督が休養して田辺代行になってからの勝率はほぼ5割(今年から正規に田辺監督に)。
・浅村が怪我から復活、さらに去年は怪我で主として指名打者としての出場だった中村が三塁守備に付けるまで回復すれば他に指名打者が使える。
・もちろん投手はそれなり。

にもかかわらず下馬評が低いのを不思議には思っていました。
(まあもちろん、こうした分析もニュースを見ていれば分かることですし、怪我人はまた出る可能性もあります。「怪我人が出て負けた」ということは、怪我をした選手の穴を埋めるだけの選手層の厚さやベンチワークがなかったということですから、過度な期待は禁物という面はあるでしょう。しかし…)

さるニュースによると、そもそも評価が低いのでOB評論家もあまりキャンプに訪れなかったとか。
落合博満氏が『采配』で、自分は評論家時代には「12球団すべてのキャンプ地に足を運んだ」と言い、「見なくてもわかる」と言う評論家を批判していたことを思い出しました。

もっとも、たとえば「言うことは当てにならないけれど話は面白い」ような解説者に価値がないかというと、それはまた別の話かも知れませんが。

 ~~~

そんな話はさておいて、今回取り上げる漫画はこちらです。
志村貴子氏の『コミックビーム』連載作品ですが、今回は1巻完結です。

わがままちえちゃん (ビームコミックス)わがままちえちゃん (ビームコミックス)
(2015/03/25)
志村 貴子

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ただ、本作に関してはある程度ネタバレに触れずに内容を扱うのは難しいのですが、ただネタバレしてなお読み甲斐のある作品だと思うので、ご了承ください。

主人公は母親の母校である中学校にこの度入学した少女・(はなわ)さほ
彼女は幽霊の少女「ちえ」ちゃんと友達になります。
しかし何と、母によれば、「ちえ」とは生まれる前に死んださほの姉の名だというのです。

わがままちえちゃん 第1話カラー
 (『コミックビーム』2014年4月号、p.6/志村貴子『わがままちえちゃん』、KADOKAWA、2015、p. 6 クリックで画像拡大されます)

……と思いきや。

第3話にして衝撃の展開(転回)が待っていました。

ここまでは実はちえの夢で、現実には死んだのはさほの方でした。
二人は双子の姉妹で、さほは小学生の時に事故で死んでいました。

「ななえおばさん お元気ですか? さほです」という手紙からから始まっていたのが、「ななえおばさん お元気ですか? ちえです」の手紙で仕切り直すのが、非常に印象的でした。

わがまちえちゃん1
 (志村貴子『わがままちえちゃん』、p. 3)

わがまちえちゃん2

わがまちえちゃん3
 (同書、pp. 45-46)

その後、ちえを主役とした話に移ってからも、さほは見知らぬ大人から性的暴行を受けていたとか、ちえを憎んでいたとか両親を憎んでいたとかいった話が出てくるのですが、これも大部分は双子の姉妹の死を「自分のせい」と思い、責めを背負い込んでいるちえの妄想のようなのです。
淡々とした描写で行間を仄めかすのが志村氏のスタイルですが、今回は行間どころか頁の外を指し示すようなスタイル妄想と現実が交錯し、境が定かでない幻想的世界が展開されます。

「体の関係ですか? もちろんありません」とモノローグで言った直後に性的関係を示す場面が描かれたりと、一人称の語りと三人称の絵という漫画ならではのズレも、「信用できない語り」として現実をはぐらかします。

わがまちえちゃん4
 (同書、p. 76)

しかも、さらにややこしいことに、幽霊はやはり現実のものらしいのです。
ちえの妄想するさほの霊と、実際のさほの霊とのどうしようもないすれ違い。

でもこれも、客観的に実態がどうであったかなど関係なしに、死者の「責め」を感じ苦しまざるを得ない人間の心象風景――そこに思春期の多感さも加わって――だと思うと、すんなり腑に落ちるものがあります。
無表情に淡々としながら体を売る(としか言いようがない)など自傷的で、はたまたさほを思わせる相手(もちろん同性)に告白するなどエキセントリックなちえの行為も、それが多分に妄想に裏付けられた空回りであることも然り。

「行間どころか頁の外を指し示すような」と言いましたけれど、そこに指し示されているものが見えてくる時、やはり繊細な感性を描く志村氏の手腕に圧倒されます。

そして、活きているちえと幽霊のさほのすれ違いは、――たとえ死者が幽霊として残っていようと――死者は生者にとってどうしようもなく遠くに行ってしまったことを痛感させます。

生き残った者の死者との向き合いと、生者と死者の奇妙な交錯、幻視と現実の入り交じる世界――何だか一種の神秘文学を目にした気分でした。

 ―――

さて、先月発売の『娘の家出』2巻から始まり、今月の『こいいじ』と本作、来月の『淡島百景』と『どうにかなる日々』新装版2冊、5月の『起きて最初にすることは』、6月には画集と、志村氏は5つの出版社を跨いで未曾有の出版ラッシュです。
各単行本巻末には作品を横断して一連のリレー漫画を収録、この2月から6月に発売する8冊の内3冊を買って応募すると抽選で100名に直筆サイン入り複製原画プレゼント――と、出版社も合同でフェアを行っています。
『どうにかなる日々』は旧版を持っているので、新規描き下ろしの有無が気になるところですが……

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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