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この命の使い方――『モーテ ―死を謳う楽園の子―』

今回取り上げるライトノベルはこちら、先月発売された『モーテ』の2巻です(巻数表記がありませんが)。

モーテ ―死を謳う楽園の子― (MF文庫J)



 (前巻の記事

1巻で綺麗に完結していた作品なので、続編はどのような形を取るのかと思いましたが、主人公交代で来ました。
このような作品の場合、むしろオーソドックスなやり方かも知れません。

前巻の主人公たちも出演しますし、何よりも前巻の途中で登場しフェードアウトしたアミヤがヒロイン的な立ち位置で登場、その他にも前巻キャラのその後が回収されており嬉しい限りですが、話としてはかなり独立したものとして読めます(順番を逆にすると前巻のネタバレになるのでお勧めしませんが)。

今回の舞台はイタリア、サルデーニャ島、主人公は大学生の青年ダンテ・カッジャーノです。
彼は一冊小説を書いて出版したことがありましたが、新作が書けずに苦しんでいたところ、奇病モーテとモーテの子供たちを収容する施設「グラティア」の話を耳にします。
未だ世間の認知度は低い病モーテ。早くに自殺することが分かっている子供の面倒を見ることに親が耐えられないケースもあり、そんな子供たちを世間から隔離しているとの噂。
精神病患者を収容する精神病院を無くした国イタリアですが、同様の施設が実は存続しているのではないか……
そんな話を聞いたダンテは、小説のネタとして取材すべく、職員としてグラティアに入ることになります。

しかしそこで彼が見たのは、そこで楽しく元気に生きている子供たちの姿でした。

戸惑いながらも子供たちと交流を築くダンテ。とは言え、遠からず自殺する宿命の子供たちを抱えたグラティアという施設には、やはり闇が存在しないわけではありませんでした。
さらに、夜な夜な施設に出没する「グラティアの幽霊」の噂。
そんな中でついに、一人の少女が死にます。しかし彼女は本当にモーテ発症による自殺だったのか? 調査に乗り出すダンテですが……

そんなわけでミステリ的要素もありますが、また主人公自身が裏を抱えている人物で、それもいわば事態を混迷させる要素として絡んでくるのですが、そちらの出来はまあそこそこ。

むしろ物語の軸は、切迫した「死」を突き付けられての生き方の問題、でしょうか。
何しろモーテは、普段の心理状態には関係無く、すなわち生きたいと思いながらも自殺してしまう病であって、その意味で死に方は特異であっても、構造的には「難病による避けがたい死」というモチーフの基本に忠実です。
ただ前巻と異なり、今回は「モーテの子供たちが集められる施設」が舞台となったことで、そうした「差し迫った死に直面する者たち」が複数集まり、その様々な生き方が描かれるのがポイントです。

死や愛という誰にとっても重要な問題――しかし、だからと言って、それを前にして誰でも同じように感じ、ふるまうと思うのは間違いです。
それだけ見せられるとあまりにも出来過ぎた美談に見える話も、そうした多様な向き合い方の一つであり、異なる考え方をする者には最初は理解されないものとして描くことで、かえって説得力を持たせています。

絶望的で閉塞的な状況から美しく奇跡的な救いに繋げた前巻とは対照的に、ずっと死を前にして前向きに生きる子供たちの姿という明るいモチーフを描きながら、最後に暗転させるという裏返しの構造もお見事。
(1巻である程度まとまった話になっていて、間を開けて出た2巻では希望と絶望の関係において1巻を反転した形になっている、という点では同レーベルの『絶深海のソラリス』に通じるものがあります。作品の雰囲気は大きく異なりますが)

ただ、今巻の最後は3巻の引きになっているので、さてどうなるでしょうか。
「奇跡的な救い」はもう1巻で使ってしまったので、次はない可能性が高いでしょう。とすれば、死を受け入れるまでの話になるのか、それとも他の可能性があるのか……楽しみです。


精神病院を捨てたイタリア 捨てない日本


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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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