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これは偽装表示であろうか……?

映画化もされて話題の『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(映画タイトルは『ビリギャル』)ですが……

学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話[文庫特別版] (角川文庫)



今回の話題は、本書の内容のことではありません。
こんな報道を見かけたのです↓

 ビリギャルに実は“ビリ“じゃなかった疑惑が...正体は名門私立中高一貫校のお嬢様!?

「ビリギャル」ことさやかは名古屋人なら(私も含め)誰もが知っている進学校の「お嬢様学校」の生徒であり、しかも1年半かけて高額な学習塾に通った成果だった、とのこと。
ライター氏は記事を以下のように締め括っています。

『ビリギャル』は奇跡の大逆転物語などではなく、「中学受験のあと何年か遊んでいても、高いお金を払っていい塾に行けば大学受験はなんとかなる」という、現在の教育格差を象徴する話だったのではないか。

 奇跡には、理由がある──。そして最大の理由はお金、というのが日本社会の現状なのだろう。


さてポイントは、この記事はあくまでも『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』の内容に基づいて書かれていることです。
つまり、さやかが中学受験を経由した進学校の生徒であることも、「1年」ではなく1年半かけていることも、学習塾に高い費用をかけていることも、作中に描写されていることです。

もし『学年ビリのギャルが~』がフィクションであれば、「中学受験を通過しているのに小学4年生の学力」は「設定矛盾」、「タイトルで1年と言いつつ1年半かけている」のは「タイトル詐欺」と言われる類の事柄だったでしょう。
その場合、読者は基本設定をあからさまに矛盾させる作者の杜撰さを笑いの種にすることもできますし、「この作品は教育格差を覆す奇跡の物語に見せて、よく読むとむしろ教育格差を象徴する面が見えてくる」と物語の意味の重層性を味わうこともできたでしょう(私の好みは後者です)。

しかし、本書はあくまで「ノンフィクション」「実話」という触れ込みであるがゆえに、上の記事の言うことが正しければ、著者のやっていることはむしろ「偽装表示」と見なされてしまいます。

実のところ、『学年ビリのギャルが~』の著者の坪田信貴氏が実態に反したメッセージを伝えるべく話を曲げようという意図をどの程度持っていたのかは分かりません。また、出来事が事実であっても、そこに多層的な意味を見て取ることは当然、可能です。
ただ、この場合は事実レベルでの歪曲がある疑惑も残りますし、何より、ノンフィクションに関しては、人はおそらく文学的な意味の多層性などを求めているわけではないのです。
「ノンフィクション」という触れ込みのお陰で結構いい加減なことを書いても信用してもらえるケースもありますが、事実の「偽装」は――ひとたび発覚すれば――フィクションの設定の粗とは別種の眼差しで見られることになります。
だからどうせよ、と説教する気はありませんけれど、この件でふと思ったので、書き留めるまでです。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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