オタクと形而上学(旧:山中芸大日記)
愛知県立芸術大学出身のある学生によるブログ。
舞台と雰囲気は一転し
この内でセミはまだ食べたことはありません。市販といってもかなり限られた扱いのようで、そもそも調理したてでないと美味くないという話も聞きますし……
イナゴと蜂の子は、登山で信州に行く際によく買ってきます。特に蜂の子は好物です。
ただ、信州の土産物屋ではイナゴ、蜂の子、ざざ虫の3種が並んで売られていたりするのですが、一番高価なのはざざ虫です。
で、確か今年の5月には珍しくざざ虫を買ってきました。

味は……甘露煮ですから当然、その味付けが主体なのですが、やや苦味があって……何に似ているかというと煮干しのように感じました。
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それはさておき、月刊誌の発売日は曜日によって若干変動することがあります(休日に新号発売ということはありませんから)。
今月の『マガジンspecial』も気が付けば発売されていました。
『絡新婦の理』コミカライズの第3話掲載です。
(前回の記事)
予想通りに原作第一章、刑事・木場修太郎のパートに入りました。

(京極夏彦/志水アキ「絡新婦の理」第3話『マガジンspecial』2015年8/3号、p. 157)
話の流れとしては、前回までは人里離れた女子校を舞台に、呪いやら売春やらの関わる話を展開していて、本当に呪いによって人が死んでしまった?(呪われた相手が連続殺人鬼に殺された)本当に呪いはあるのか……という話になり、学院内でのさらなる惨劇に発展したところで引きでした。
今回は舞台を東京に移し、当該の(呪いをかけられた相手の殺された)殺人事件を操作する木場刑事を描きます。
原作では時系列順に木場パートが先だったわけですが、こちらの漫画版も話の繋がりとしてはスムーズです。
「女学院で起きた凄惨な『呪い』事件からやや時間を戻し、物語は、もう一人の主人公・木場の視点へと切り替わる――」という編集の煽り文句が親切です。
木場たちはシリーズ読者にとってはお馴染みのメンバーですが、ちゃんとテロップで名前を表記していますし。
もっとも、親切さはともかく、女子校から一転、今回は登場人物が男と婆さんばかりになるので、初見の読者にとっていかなる印象になるものやら分かりませんが……
事件も特殊な連続殺人事件ではありますが、オカルトの異様さとは違って即物的な方向で陰惨。何しろ女性の目を貫いて殺す「目潰し魔」です。

(同誌、p. 158)
「女性」という本作のテーマに関わる問題の一環として、売春も引き続き描かれますが、うらぶれた連込宿に大人の男女ですから、(そこに人妻の売春という要素が入るにせよ)女子中学生――それもお嬢様学校に通う良家の娘たち――の売春とはずいぶんと雰囲気を異にします。
意味の多層性こそが京極作品の重要なポイントであって、とりわけ『絡新婦』においては、視点を変えれば同じ事件がまるで別の相貌を呈するというのがミソなので、一方では人里離れた女子校のオカルト、他方では東京の連込宿での殺人事件という猥雑な、しかしまともな刑事事件という対照は本質的な事柄なのですが。
その点では、絵にされるとその対照はいっそう際立ちますし、オカルト的な方から入って現実的な殺人事件の捜査現場に移るのも、話の摑みとしては非常に良かったと思います。
新たな登場人物としては、連込宿を営む老婆・多田マキ。

(同誌、p. 163)
想像以上に妖怪的な風貌ですが、イメージ的に特に異議はありません。
そして、被害者の夫・前島貞輔(まえじま さだすけ)。

(同誌、p. 182)
原作だと(木場の主観で)「女々(なよなよ)した」「青瓢箪」「女形みたいな野郎」と形容されていた彼ですが、意外と恰幅がいい印象。
まあ大店の主人ですから妥当なのかも知れません。小物な感じはよく伝わっていますし。
そして全くの新キャラではありませんが、木場の旧友・川島新造。
兵隊服にサングラスで禿頭の大男という、この他に二人といない風体のこの男が被害者とともに現場に出入りした人物であり、ひいては犯人の嫌疑をかけられたことが、木場を動かす一因となります。

(同誌、p. 165)
彼は『魍魎』でも登場していたので漫画版での登場は二度目。作中時間にしてそれから半年程経っているわけですが、「戦後はほとんど会っていない」という発言は少し大袈裟な気もします。『魍魎』で会ったのがすでに何年ぶりだった、ということなのでしょうが。
さて、意外にもと言うべきなのか、今回の44ページで原作第一章の全部を一気に消化してしまいました。第二章は第1,2話で合計100ページ以上使ったのですが。
今回は刑事の捜査ですから証人たちの話を聞くわけですが、情報のダブる部分を切り縮めるなどして、証人との会話を上手く圧縮したお陰でしょう。
原作の順番通りならこの後、原作第三章の伊佐間パート、そして第四章の益田パートとなるのですが、いずれも事件の当事者として関わるというよりも情報交換が主の話なので(※)、今回と比べてそうページ数を要することはないような気がします。
※ 事件にひとたび関われば傍観者ではいられないという構造も本作の重要な主題の一つなので、この分け方もあくまで便宜に過ぎませんが。ただこういう形で読んでみると、美由紀パートがとりわけ「事件の当事者を主役にしたパート」の印象が強いのは事実。原作を読んだ時には、美由紀はあくまでも「事件の当事者の友人」であり視点人物であって、部分的には探偵役の要素も備えていたため、まただいぶ印象が違ったのですが。
原作が500~600ページの『魍魎』と『狂骨』が漫画版だと全5巻なので、800ページ超の本作と『鉄鼠』は7巻くらいになるかと思っていましたが、このペースならそこまでかからない気もします。
まあひとまず、次回(第4話)までで180ページを超えるので、そこまでで単行本化されるかと思いますが。
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