スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

矢面に立つ子供たちを見守り導いて――『横浜ダンジョン 大魔術師の記憶』

今回取り上げるライトノベルはこちら、瀬尾つかさ氏、角川スニーカー文庫からの新作です。



本作の舞台は現代日本、それもタイトル通りに横浜なのですが、20年前に世界各地にダンジョンが出現した世界です。
それと同時に、「ルーン」と呼ばれるいわゆる魔法の力を操る子供たち――「星繰り人(ルーンハンドラー)と呼ばれる――が一定確率で生まれるようになりました。
ダンジョンに住まう魔物には物理的な兵器は通じず、ルーンでしか対抗できないので、「星繰り人」の子供たち(最高で20歳、つまりほとんどがまだ未成年です)が「探索者」として、ダンジョン探索やダンジョンから外に出てきた魔物(「魔物の大暴走(スタンピード)」と呼ばれる現象)との戦いを委ねられることになっています。

そんな世界にあって、黒鉄響(くろがね ひびき)は14歳の時に、異世界の「白き賢者」アルランだった前世の記憶を取り戻します。
直後に両親を亡くし、妹の琉衣と二人暮らしになって3年、高校生になった彼ですが……たmたまクラスメイトで探索者の少女・真藤春菜(まとう はるな)を助けたのをきっかけに、彼女とその相棒である坂霧彩(さぎり さい)に魔法技術を伝えて指導することになります。
同時に、前世の想い人である天の神子ナイルナーシャが封じられた状態で生きていることを知り、彼女を助けるために自らもダンジョンに潜るようになるのですが、そこに眠る真実とは――

それにしても横浜スタジアムがダンジョンになっているとは、あまりにもベイスターズが負けるから業を煮やしたか……

さて、ローグ系ゲームを念頭に置いたダンジョン、およびそれが近年世界中に出現したという設定、さらにはそれが世界の危機となるラスボスに関連していることまで、本作の設定は『放課後ランダムダンジョン』(後に『深き迷宮と蒼の勇者 -銀閃の戦乙女と封門の姫外伝』と改題復刊)と共通しています。リメイクかと思うくらいに。
ついでに、「勇者」のアンチマジック能力(元ネタは『ドラゴンクエスト』の「凍てつく波動」)設定およびヒロインがその持ち主であることも継承されていますね。本作では今のところ、この能力はまだ使われていませんけれど。
キャラ像が似たようなものになるのは、そういう要素を抜きにしても同じ作者だから、ということでいいとしましても。

ただ大きな差は、『放課後ランダムダンジョン』においては20年余り前に世界各地で異世界への門が開き、5年前にその門が閉じてそこに代わりにダンジョンが出現したのであって、また異世界人と地球人のハーフは純血の異世界人よりも強い魔法力を持つという設定だったのに対し、本作においてはいきなりダンジョンが出現したのであって地球と異世界との交流はない、ということがあります。
それゆえ、地球人が知っているルーンの使い方も、全てここ20年ほどの内に見出されたものに過ぎません。
そんな中、主人公はただ一人、異世界での高度な魔法知識を備えた人物であり、しかも「白き賢者」と呼ばれた英雄的人物です。その力は近代兵器と中世の武装くらいに差があります。
ラスボス級が出てきてもなお余裕があるほどの戦闘での実力だけでなく、錬金術で魔法装備を作り出す技術も持っています。

そもそも、作者の瀬尾つかさ氏は元来、世界観レベルで「子供たちが戦う理由」を設定するのが得意な作家です。
本作も同様で、ほとんどリメイクかと思われるくらいに過去作に近い設定を採用しつつ、そんな「戦わねばならない子供たち」(=ヒロイン)を言うなれば「上の世代の達人」として見守る主人公を設定することで、新しいアプローチを図っているものと思われます。
(前世のアルランもおそらくまだ若い人物だったと思われますし、決して響は「精神年齢が上」というわけではありませんが、にもかかわらずその立場は大人の子供たちに対する立場に近いのです)

その分本作は、子供たちに多くを背負わせる世界の異常性を強調するような部分はむしろ少なめです。

――まあ、こうした作品の基本路線については作者があとがきで語っている通りなので、今更そこまで言葉を費やすほどのことでもなく、そしてこの点を押さえておけば、実は加えてコメントすることはそう多くないのですが。

それから、『放課後ランダムダンジョン』およびその世界観を引き継いだ『銀閃の戦乙女と封門の姫』(後に前者が後者の外伝にされたので、まとめて『銀閃』シリーズとしておきましょうか)においては、主役となる子供たちは地球人と異世界人のハーフであったので、二つの故郷の間で引き裂かれる立場や、故郷の喪失といった問題もまた、子供たちが「背負わされるもの」として重くのしかかっていましたが、本作の設定だとその要素もありません。
「祖国」というテーマも『銀閃』で一通り描いたので、本作では目先を変えるということでしょうか。

まあ本作の今後のポイントはやはり、想い人を救出するという主人公の目的と、ヒロインの春菜たちを導き育てること、そして春菜たち自身の戦いがどう絡んで、おそらく世界の命運に関わるところに発展していくか、というところでしょうか。
主人公が「教師」の立場でヒロインを教え導くという設定の作品も今ではよくありますが、本作の場合、主人公には必ずしもそれとイコールではない明確な目標が存在する、というところがカギです。
これらを結び付け得る要素はすでに十二分に提示されているので、後は展開の仕方次第です。


にほんブログ村 哲学・思想ブログ 哲学へ
にほんブログ村 人気ブログランキングへ

テーマ : 大学生活 - ジャンル : 学校・教育

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー) URL

プロフィール

T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

当ブログはリンクフリーです。

引用もフリーです(出典明記していただけるとより有難いですが)。

コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

FC2カウンター
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
カテゴリ
参考文献
私が展開している思考の拠り所など(一部)。
スポンサー広告
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。