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知っていれば何とかなること、ならないこと――『転生王女は今日も旗を叩き折る』

今回取り上げる小説はこちら、先月のアリアンローズの新作です。



本作はファンタジー作品で、主人公はネーベル王国の王女ローゼマリー・フォン・ヴェルファルト……なのですが、彼女は前世の記憶を持っていました。
そして自分が転生したこの世界が、前世でプレイした乙女ゲー(=女性向け恋愛シミュレーションゲーム)『裏側の世界へようこそ』の世界であることに気付きます。
しかし問題は、この『裏側の世界へようこそ』というゲームが、「攻略対象」の男性キャラたちがシスコン、ナルシスト、ドM……と揃いも揃って残念過ぎる変態たちというクソゲーであったこと。
しかも、攻略対象にならないサブキャラたちは攻略対象に劣らぬイケメンで、攻略対象と違ってまともだというのが追い討ちをかけます。

 どうしてこうなったと、開発スタッフに小一時間問いただしたい。
 攻略対象より、非攻略対象のスペックの方が格段に高いって、何だソレ。
 (ビス『転生王女は今日も旗を叩き折る』、フロンティアワークス、2015、p. 11)


ゲームにおいては王女ローゼマリーの立場は主人公のライバル。つまり「攻略対象」の男性たちと関わる機会も多いわけで、とりわけ第二王子ヨハンは彼女の弟で貴族ゲオルクは婚約者です。
彼らが残念な人格を形成することを未然に阻止し、自分が不幸な結末を迎えることを回避すると同時に、ゲームでは非攻略対象ながら一番人気キャラの近衛騎士団長レオンハルトの笑顔を見るべく、彼女は5歳にして手を打ち始めることになります。

さて、『張り合わずにおとなしく人形を作ることにしました。』の時にも言いましたが、「乙女ゲーの世界で主人公のライバルキャラ(いわゆる悪役令嬢)に転生」という話は「小説家になろう」の女性向け作品では今や定番中の定番、アリアンローズからはすでにその手の作品がいくつも書籍化されています。
その中でどう差別化していくのか、読者としてもそれにどこまで付き合ったものなのか、難しい問題になってきそうですが……

本作のポイントはやはり、各人物の(歪んだ)人格形成に関わる転機という細かいレベルでローゼマリーは「これから起こること」を知っており、それを回避するため手を尽くす、ということでしょうか。
それは貴族の母親が死なないように健康に気を遣わせる、といった地味なことから政治的陰謀にまで及びます。
中には対処不能なケースもありますが……

 コイツ、もう訳分からん。
 何でこっちから何の行動も起こしていないのに、勝手にフラグ立てるの。何で勝手に落ちてくんの。チョロいというより、本気で怖い。回避不能なイベントとか、キツ過ぎる。
 (同書、p. 75)


そして、この手の話では「転生」という設定により(中身は大人の)幼女が活躍することになりがちですが、本作のその例に漏れず、この1巻で描かれるローゼマリーは5歳から10歳までです。
しかし、事情が事情だけに周囲に相談することはできません。分かってはいても自分の無力を感じることもあり、また彼女の行動によってすでに歴史が変わり、周囲の人たちが独自に事態を進めていることもあり……
そんなローゼマリーが切なくも、可愛くても魅力的です。

後半はストーリーもかなりシリアス色が強くなっていくので、なおさらです。

まあ彼女が「叩き折って」いるのはあくまで不幸な結末のフラグであって、恋愛フラグは本人も気付かぬ内に過剰に(ゲーム中ではローゼマリーと関係のなかったキャラにまで)立てているようですが……しかし本命であるレオンハルトとの関係は、どうなのでしょう。今のところ、10歳のローゼマリーに対してレオンハルトは大人という年齢差もありますし。

ところで、本来のゲーム『裏側の世界へようこそ』は現代日本の女子高生である主人公が神子として異世界に召喚され魔王から世界を救う、というストーリーだったという設定なのですが、今のところ魔王とか神子召喚とかいった話は全く出ていません。
ただ、魔王が存在しているのは確かなので(ローゼマリーはその正体ももう知っています)、それもいずれ描かれることになるのでしょう。
この1巻の中でも、前半で描かれていた婚約者の貴族の話など後半にはほぼ出てこなくなりますし……それらが後々どう活きてくるかがポイントでしょうか。

なお、WEB版では本作、時系列をだいぶ先取りして、異世界から召喚された神子が「最愛の方」と抱き合っているのを私=ローゼマリーが目撃してしまい、「一体何処で私は選択肢を間違えたのか、誰か教えて下さい……」というプロローグから始まっています。
書籍版だとこのプロローグは消えていましたが、さてどうなることでしょうか。
不吉なフラグは折り、余計な恋愛フラグは立てても、なお本命と結ばれるのは前途多難なのかも知れません。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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