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焦点は京都という街か、あるいは…――『「地下鉄に乗るっ」シリーズ 京・ガールズデイズ ~太秦萌の九十九戯曲~』

先日はまた学会の研究合宿に参加してきました。
そこでの研究発表の準備もあり、論文と合わせて短期間に締め切りが重なったことで、しばらく更新を休んでしまいましたが。

さて、今回取り上げるライトノベルはこちら、講談社ラノベ文庫の新作ですが……



本作は京都市交通局のPR企画「地下鉄に乗るっ」のノベライズ作品です。
作者の(もとき)氏は『神様のお仕事』で第2回講談社ラノベ文庫新人賞「大賞」を受賞してデビューした作家で、その後『ユア・マイ・ヒーロー』『遠野誉の妖怪騒動記』といったシリーズを刊行していますが、今回初のノベライズを手がけることになりました。

主役は太秦萌(うずまさ もえ)松賀咲(まつが さき)小野ミサの女子高生3人。
それに女子大生の烏丸(からすま)ミユ(京都国際マンガミュージアムとのコラボレーションにより登場)とマスコットキャラクター2体がいて、その他に小説版オリジナルキャラクターとして萌の同級生・白河澄(しらかわ すみ)が登場します。

話としては幼馴染みの萌・咲・ミサの3人が謎のダイレクトメールに乗っかり、京都のパワースポット巡りを始めたところ、本物の神様やら精霊やら魑魅魍魎やらの関わるお祭りに参加することになりすったもんだ……という感じです。

タイトルから地下鉄についての豆知識や細かい記述が飛び交う話かと思いきや、そういう鉄道マニア向けの内容はほとんどありませんでした。
たしかに主人公の萌は地下鉄に強い愛着を見せますし、現実の京都の地理に則って登場人物がもっぱら地下鉄で移動する展開になってはいるのですが、実際に地下鉄に乗る場面はほぼ省略という感じですぐに目的地に着きますし、地下鉄についての詳細な描写もなし、ついでにイラストにも地下鉄は登場しません。

京都の名所を巡るという展開から京都観光案内的なものかとも思いましたが、当の名所について歴史的知識の説明などはある程度あるものの、その様子を描写する叙景文には乏しく、そこを期待するとやはり物足りない印象です。
文章はもっぱら登場人物の会話と、それに障壁がの虎が抜け出すなど文字通りの怪異が絡んだ事件での展開の描写に割かれており、まあそれはライトノベルらしいと言うべきでしょうか。
加えて、カラー口絵では実景に基づいたらしき背景描写があり、

京・ガールズデイズ1
 (幹『「地下鉄に乗るっ」シリーズ 京・ガールズデイズ ~太秦萌の九十九戯曲~』、講談社、2015、カラー口絵)

章間には京都の簡易地図もあるにもかかわらず、

京・ガールズデイズ2
 (同書、p. 36)

本文イラストはほとんど白背景で、こちらも京都の街の描写には欠けています。
まあイラストレーターの賀茂川氏も、あくまでこの企画のイメージキャラクターを描くべく起用されたのであって、街の風景描写は専門ではないのでしょうが、口絵にはあっただけに……

物語の展開は、一応は事件があるものの、そこまでの難関でもなく最後まで平和。
ドラマ的にも強い見所があるとは言いにくいのですが、まあ女の子たちが仲良く楽しくやる日常話(起きていることは非日常ですが)としてはまあ及第点の出来なのでしょうか。

小説作品としての出来は二の次で観光案内やPR優先、では困ったものですが、しかし本作の場合、京都のPRという部分を抜きにして物語として優れている、とまでは言えませんし。少なくとも、本作に限らず、叙景文にある程度力を入れることは小説にとってマイナスにはならないと思うのですが、どうでしょうか。

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Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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