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戦いの背後にある根源の嘘――『魔法少女育成計画ACES』

差し迫った締め切りこそ過ぎたものの(来月にはまたありますが)、まだまだやることはあって更新が遅れ気味ですが、今回取り上げるライトノベルはこちら、シリーズ7巻目となる『魔法少女育成計画』の新巻です。


 (シリーズ前巻の記事

帯で告知されていますが、アニメ化も決定したようです。
ただ、どこまでやるつもりなんでしょうか。内容的には無印のみで一区切りが一番なのは言うまでもありませんが、アニメ1クール=単行本2~3巻分という一般的なペースに従えば、無印から『restart』ということになります。まあその辺も含めて楽しみにしておきましょう。

前巻が『JOKERS』で今巻が『ACES』ということでタイトルからして明らかにセットとなっています、というか後述しますが、この2冊で区切りでもありません。
では巻頭の魔法少女紹介を見ると分かるのは、例によって16人ですが、これまでのシリーズでもメンバー入りしていた魔法少女の再登場が過去最多の6人(その内一人? は同一人物ではなくいわば同型機なので、厳密には5人かも知れませんが)。
明らかに、これまでのシリーズで撒いてきた種の回収に入っているのが分かります。

さてストーリーとしては、無印からの主役であるスノーホワイトが「魔法の国」の最高権力者・三賢人の一人であるアヴ・バラチ・プク・バルタの現身プク・プックに呼び出されます。
何でも、「魔法の国」を救うために儀式を行う予定なのだが、その儀式に必要な魔法少女が逃げ出してしまったので捜索してほしいとのこと。
かくして、プク・プックの部下たちとチームを組んで魔法少女「プレミアム幸子」の捜索に向かうスノーホワイト。

しかし、別三賢人オスク(その現身であるグリムハートとは先の『JOKERS』で対決しました)の派閥はその儀式の妨害を狙って刺客を送り込みます。
さらに、プフレ(『restart』のメンバーの一人でその後数々の暗躍をしてきた人物です)もシャドウゲールを拉致され人質に取られて、やはりプレミアム幸子の捜索に協力を迫られます。しかもプフレを脅迫してきた連中の中には、『JOKERS』での人造魔法少女の生き残り、プリンセス・デリュージもいて……

というわけで、今回は標的となる一人の人物を巡り三つの勢力が入り乱れる争奪戦です。
序盤からバトルの連発。登場する魔法少女たちの多くがプロフェッショナルということもあって、一見戦闘向きではなさそうな魔法の応用も慣れたもので、読み応えがあります。

ただ、今回は今までと違い、登場メンバーの大部分が命を落とすまで戦い尽くす展開にはなりません。
黒幕の動向もあって、いわば戦いは中途で切り上げられたような格好に。結果、意外と離脱者は少なめ。
これまでのように限られた舞台から逃げられない状況というわけでもないので、撤退を決断する判断力にも彼女たちのプロフェッショナルならではのものが見られる、という面もありますが。
一つのミッションに区切りが付いたとは言えるものの、ストーリー的には思い切り続きます。

そんな中で印象深いのは、前巻(『JOKERS』)の生き残りであるプリンセス・デリュージでしょうか。
悲劇を経験した上、当初期待し、知らされていたのとはまるで異なる魔法少女の実態を知った彼女がどうなるのかついては、前巻から注目しておきました。

結果は……死別の傷や復讐心からか、随分と危ない方向に向かっていたようで。現状の彼女が利用されていることは明らかですし。
あれから戦い続けているスノーホワイトにも危うさはありますが、それと比べてもデリュージは危うい。
敵もみんな討ち果たした、あるいは手の届かぬところで死んでしまったスノーホワイトやリップルと異なり、「仇」の存在がある程度まで見えているということもあるのでしょうか。
そのスノーホワイトとリップルの再開も今回ありますが、今までの話で彼女たちが置かれていた状況からして波乱のないはずはなく……

こうした展開は、改めて「生存者」の背負うものという問題を突き付けてきます。
死別の苦しみ、喪われた人を奪ったものに対する恨みや怒り、あるいは自分が生き残ったことに対する負い目……それらを引き受け、死者という決してもう届かない存在に、それでも応答していくために、生存者は何ができるのか、どうすべきなのか――

一つの答えを見出してはいたけれど、それを揺るがすようなものを突き付けられるかも知れないスノーホワイト、まだ答えのないまま突っ走っている感もあるデリュージ、彼女たちの今後にますます期待です。


さて、無印と『restart』のゲームマスターによって強いられたバトルロワイヤルから、『limited』以降は複数勢力の交錯する活劇へと方向性はシフトしてきたものの、本シリーズにおいては一貫して多かれ少なかれ、魔法少女たちを死地に駆り立てる黒幕的な人物の存在があります。
そして、最近は命を懸けることを仕事にしている荒事専門のプロ魔法少女も多いものの、多くの場合そうやって人を死地に向かわせるに当たっては、嘘や騙しがありました。

読心能力を持つスノーホワイトならば相手の嘘も暴ける……はずなのですが、それでもまだ何か彼女も気付いていない裏があるんじゃないか、こいつに本当に裏がないとは思えない……といった部分もまた、今回の見所の一つでした。
さらに今回は「嘘をつくのがとても上手い」という魔法を使う魔法少女が登場したり、他方で敵に対してあえて本当のことを言ってくるキャラがいたり(化かし合いの駆け引きは苦手、とも言えますが)で、改めて「嘘」というテーマが際立った感もあります。

本シリーズは結構真相の開示がさらっとしていることが多く、ぼんやりしていると説明を見落としそうになることもあります(解答編まで単行本1冊で一気に提示するのではなく連載形式で、しかも端折りもあるコミカライズとその反応を見て改めて実感しました)。

たとえば、無印での「魔法少女が増えすぎて土地の魔力が枯渇しそうなので魔法少女を減らす必要がある」というのは、殺し合いを行わせるための口実に過ぎず、まったくの虚偽でした。
これに対し、彼女たちが「魔法の国」から選ばれ、素質を見出されて魔法少女になった、というのは本当でした。
結構終盤までその辺も少なからず疑いながら読んでいましたが、魔法の国も外部の血を入れる必要があるからこの世界の人間たちをスカウトしているのだ、とさらっと語られました。
そして何より、魔法の国のお役所体質こそいわば諸悪の根源でした。

以来、それを前提として話は進んできました。魔法少女とは異なる伝統的な「魔法使い」たちも登場しました。
それぞれに戦い方は異なれど、今までに登場した魔法少女たちの何人かは、魔法の国のあり方と魔法少女の境遇の改革を目指して戦ってきました。
ただ考えてみると、これまで登場した魔法の国の施設なるものは全て地球上のどこかに存在したもの。どうも「魔法の国」というのが(よくアニメ等で描かれるように)物理的な領土を持った「国」なのかどうかは、なお慎重に考える余地がありそうです。

今回になって、魔法の国の始まりには「最初の魔法使い」がいたがそれは姿を消しており、その三人の弟子こそが現在の最高権力者たる「三賢人」なのだという(公式に伝えられる)魔法の国の歴史も語られ、魔法の国の実態に踏み込もうという今後の方向性が窺えました。

さらに三賢人の「現身」とは何なのでしょうか。
彼女らは魔法少女といっても人間から変身した存在ではなく、三賢人の意を代理するアバターのような存在のようです。
ただ今回は同時に、そもそも三賢人というのが肉体のある存在なのかどうか疑わしい旨の言葉もあり、だとすればその点においては人間とゲーム上のアバターとは逆なのかも知れません。それゆえに人と会うために現身が必要なのでしょうか。

そして今巻の最後には、三賢人の現身自身の視点の文章で、魔法の国の実態について決定的な懐疑を呼ぶような言葉が……
「魔法の国を救うため」というのは、どうも「今後の存続のため」という次元の話ではなさそうなのです。

何度も言ってきましたが、本作は「魔法少女とは何か?」「魔法少女はなぜ戦うのか?」という問いを巡って展開されてきました。無印のストーリーは、いわば現実世界における魔法少女アニメの歴史の縮図です。
そして魔法少女というのは一般に、現代世界の日常に生きていた少女たちが魔法の力を与えられる、あるいはそうでなくても日常の内に魔法を持ち込む存在です。つまりその背景には、「この現実世界とは異なる魔法の世界(あるいは魔法の理)」がどこかに存在するのです。
「魔法少女とは何か?」という問いはついに、「その背景にある魔法の世界とは何か?」という問いに行き着こうとしているかのようです。

そしてもしかすると、そこに全てを支える(そして、全てを危うくしかねない)根源的な「嘘」があるのかも知れません。

 ―――

さらに今回は、グッズ詰め合わせ“「マジカロイド44 の未来アイテム『対ボス戦専用マジックアイテム作成キット』で作られたアイテム詰め合わせ!」略して『魔法少女育成計画 C88 英雄志願者のためのスーパー魔法少女セットデス!』”も同時発売、とらのあなにて販売されています。

 「マジカロイド44 の未来アイテム『対ボス戦専用マジックアイテム作成キット』で作られたアイテム詰め合わせ!」略して『魔法少女育成計画 C88 英雄志願者のためのスーパー魔法少女セットデス!』

スーパー魔法少女セット

内容としてはまずトートバッグ

バッグ

ノート(左)とクリアファイル(右)、

ノート&クリアファイル

膨らみのある「ぷくぷくシール」(左)とICカードステッカー(右上)、そしてコースター(右下)、

シール&コースター

それから書き下ろし小説の小冊子2冊です。

小冊子

冊子の内容ですが、『魔法少女育成計画マジカルショッピング』の方は正味13ページの掌編。
金のため自らの魔法で生成したアイテムセットをラ・ピュセルに売りつけるマジカロイド44……という内容ですが、そのセットの中身がコースター、シール、ICカードステッカー、ノート、ファイル、トートバッグ……つまりこのセットの品です。しかもそれがシリーズの(2人は無印のキャラなので、作中の時系列的には後の)ラスボス対策アイテムになっているというメタな仕様。あまり注目されぬままでしたが、実は極めてハイスペックな可能性を秘めていたマジカロイドの魔法に笑うやら感心するやら。
と同時に最後は暖かくいい話になってもいたり。作中では悪役寄りのマジカロイドでしたが、ここでは和ませてくれました。

もう1冊、『魔王塾主催地獄サバイバル』は、魔王パムの率いる「魔王塾」主催の演習(死者こそ出ないものの、ほとんどバトルロワイヤルという過激な内容)を描いた80ページ余りの短編。その演習の影で、魔王パムの暗殺を狙う魔法少女も動いていますが……
シリーズに登場した武闘派の魔法少女たちが集結して激戦を繰り広げます。つまり、本編では見られなかった数々のドリームマッチが見られます。この手のバトル系作品においてはまさに待望のファンサービスですね。本編ではあまり活躍しなかったキャラの活躍もありますし、さらには登場しなくても本編で見た名前も。
最強キャラである魔王パムは主催者として解説。バトル漫画には付き物(と言うと言い過ぎかも知れませんが)の解説ですが、小説、とりわけ三人称の作品では地の文が解説すれば済むことなので、あまり目立ったものは見かけません。今回のパム実況に押されてあまり喋らなかったりするのですが、それがオチに絡んで一工夫あり。それにさすがの強者らしい眼力は見せてくれます。

それにしても、『restrat』において過去の映像で倒されていただけのフレイミィ・フレイミィ……イラスト化もされていませんし、今回もあまりいい活躍ではないのですが、しかし何度も名前は出てくるのと、『ACES』のあとがきに「ファンブックにフレイミィを出そうと粘った」旨があるのを見るに、作者の屈折した愛情は感じたり。

いずれにせよ、2冊ともキャラの使い方の上手さが感じられた上出来の短編でした。


その他、とらのあなではキャラクター缶バッジも販売。
お金を払った数だけ箱の中から引けるくじ引き方式です。

缶バッジ

(読書メーターにて登録↓)

魔法少女育成計画マジカルショッピング


魔法少女育成計画 魔王塾主催地獄サバイバル

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T.Y.

Author:T.Y.
愛知県立芸術大学美術学部芸術学専攻卒業。
2012年4月より京都大学大学院。

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コメントは返信しないことも多いですが、基本的にちゃんと読んでいます。

実名での仕事
7ページだけですが、拙稿が掲載されています。
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